エンタープライズサーチ(企業内検索エンジン)とは
エンタープライズサーチとは、企業内のあらゆる情報を横断検索できるシステムのことです。企業内検索エンジンや社内検索システム、エンタープライズ検索などとも呼ばれます。保管場所を問わず社内のデータから必要な情報を探し出せるため、企業内での情報共有がスムーズとなり、業務効率化やデータの有効活用につながるでしょう。
エンタープライズサーチの具体的な仕組み
エンタープライズサーチは、システム内のクローラーと呼ばれるプログラムが各ストレージを巡回し、データを収集します。集められたデータは検索しやすいよう整理され、インデックスが生成されます。
データ量に応じて変動はありますが、1台のサーバにクローラー、インデクサー、サーチャーといったプログラムを搭載したのが一般的な構成です。また、データの増加や障害に備えて負荷分散させたものも多く存在します。なお、基本的に専用の検索サーバを用意しても、既存のサーバ上での稼働でも問題ありません。
GoogleなどのWeb検索サイトと仕組みはほぼ同じですが、ユーザーの権限にあわせてサーチャーによって検索結果が変わる点は大きな違いといえます。
エンタープライズサーチの機能
エンタープライズサーチには、スピーディーな検索・表示を可能にするさまざまな便利機能が搭載されています。以下で基本的な搭載機能を解説します。
検索機能
構造化データと非構造化データを問わず、フォルダ名やファイル名・文書内のテキスト(全文検索)・画像・動画も対象として検索でき、わずか数秒で結果を表示します。文書管理システムとは異なり、複数のシステムやサーバをまたいでの横断検索も可能です。主な検索機能は以下のとおりです。
- ●日時やファイルなどの詳細条件を指定して検索する詳細検索機能
- ●類似データにも対応する類似検索機能
- ●表記ゆれを補正するあいまい検索機能
- ●検索対象範囲を指定できる絞り込み検索機能
- ●自然文検索機能
なお、全文検索については以下の記事で詳しく解説しているため、あわせて参考にしてください。
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サジェスト機能
検索補助機能ともいい、検索窓に入力したキーワードをもとに候補ワードを表示します。過去に検索されたキーワードや検索数の多いワードデータなどをもとに表示するため、効率的に検索できます。正確な名称を忘れた、絞り込むキーワードが思いつかないといった場合にも効果的な補助機能だといえるでしょう。
サムネイル機能
検索結果の画面で、キーワードを強調して表示する機能です。検索キーワードとその前後のテキストを表示するため、ファイルを一つひとつ開いて確認する手間が省けます。
アクセス権限管理機能
ユーザーや部署単位で検索権限を設定できる機能です。一部の従業員のみに閲覧が許可されたデータなどにアクセス制限を設定すれば、権限のないユーザーは閲覧ができません。情報漏えいのリスクも抑えられ、セキュリティ面で安心です。認証機能を搭載した製品もあります。
情報収集機能 (RSS機能)
RSSとは「Rich Site Summary」の略で、必要な更新情報や新着情報を配信できる技術のことです。製品によっては、このRSS機能が搭載されているものもあります。例えば、企業内でよく検索されるサイトを登録しておけば、更新内容をすばやくキャッチアップできます。
エンタープライズサーチを導入するメリット
先述した搭載機能をもとに、エンタープライズサーチの導入で実現するメリットを解説します。
大容量のデータに耐えられる
製品によって差はありますが、大規模・大容量のデータに対応したエンタープライズサーチなら、高セキュリティ環境下での高速検索を実現します。将来的にデータが膨大になっても、分散検索で拡張可能なため安心です。
なかにはAIを搭載したシステムもあり、画像OCR検索やチャットボットなどの機能を備え、より迅速かつスムーズな検索を支援する機能が搭載されたものもあります。
企業内で情報共有できる
部署を問わず企業内のさまざまな情報を共有でき、従業員同士の確認や連絡といった手間が省けます。昨今のフレキシブルな働き方にも適したシステムといえるでしょう。横断的に情報を取得できるため、新しいビジネスチャンスにもつなげられるかもしれません。
管理機能をもつ製品であれば、検索ログなどから利用状況も把握できるでしょう。どの組織でどのような動き・ニーズがあるのかを分析でき、企業内の環境改善に活かせます。
データ収集時間を削減できる
例えばファイル管理アプリでファイル検索を行う場合、結果の表示までにはやや時間を要します。容量や情報量が多いほど時間がかかるのは必然といえるでしょう。しかしエンタープライズサーチは瞬時に検索結果を表示するため、データ検索にかかる時間を大幅に短縮できます。作業の効率化のみならず、コア業務への注力も可能になるでしょう。
セキュリティ対策が可能になる
インターネット上の検索エンジンとは異なり、ユーザーごとに細かくアクセス制限を設定できるため、セキュリティ対策に効果的です。機密情報や個人情報などに検索・閲覧制限をかけることで、情報漏えいや訴訟などのリスクを防ぎます。
容易にシステムを導入できる
導入時は専用サーバを用意し、システムをインストールして設定すればよいので、初めてでも容易に導入できます。簡単な操作性を強みとする製品も多く、導入から運用までのサポート体制を敷いているベンダーもあります。自社の要件にあわせたスムーズな導入が叶うでしょう。
エンタープライズサーチ導入時のデメリットや注意点
エンタープライズサーチはメリットの多いツールですが、自社の要件にあう製品を選ばなければメリットを享受できず、導入効果を感じられないでしょう。搭載機能や検索精度、サポートの有無などを事前に確認する必要があります。
また、エンタープライズサーチの料金プランには「買い切り型」「月額課金型」などがあります。データ量やアカウント数などでも料金は変動するため、よく考慮しましょう。
人気のエンタープライズサーチは、以下のボタンから確認できます。資料請求(無料)もできるため、気になる製品はぜひベンダーに問い合わせてみてください。
エンタープライズサーチの導入がおすすめの企業
エンタープライズサーチは社内に眠る情報資産の管理と活用を実現するため、扱うデータ量が多いほど導入ニーズが高まります。したがって、主に大企業を中心に導入されているシステムであるといえます。
特定の業種に多く導入されているというデータはありませんが、製造業や建設業、情報通信業を中心にデータの取扱いが多い業種での導入が比較的多いようです。また、検索レスポンスの速さからコールセンターでも活用されています。
一例として、以下の課題を感じている企業は導入を検討してみるとよいでしょう。
- ●マニュアルなどが作成されておらず、担当者しか知らない情報が溢れている
- ●資料の保存場所やファイルが統一されておらず、必要なデータが見つけられない
- ●紙文書をデジタル化したので情報資産として活用したい
- ●顧客や社員からの問い合わせにスムーズに対応したい
- ●ナレッジマネジメントを実現し、新入社員の自己解決力を高めたい
また、既存の社内検索ツールによるレスポンスが遅いと感じている企業担当者は、高速検索に特化した製品への移行を検討してみるのもおすすめです。
エンタープライズサーチの活用方法
エンタープライズサーチには、企業内のデータを検索する以外にもさまざまな活用方法があります。例えば以下などがあげられるでしょう。
- ●ナレッジマネジメントとして活用
- ●ECサイト・ヘルプデスク業務の改善に活用
企業内のビッグデータを一瞬で検索できるため、業務の改善や新たなビジネスの発見などにもつながるでしょう。
エンタープライズサーチの活用例
ここではITトレンドのおすすめ製品の一部から、利用者から投稿された口コミを紹介します。
「ファイルめがね」の活用例(口コミ紹介)
今まではファイル名のみでしか検索がかからなかったため、ドキュメント作成者が適当な名前を付けていると必要なドキュメントを見つけられなかった。例えば「見積書」という名前だけではどのお客様への見積書か判別ができなかった。 「ファイルめがね」を導入したことでドキュメントの中身まで検索がかかるので、すぐに必要な書類にたどりつけます。
参考:必要なファイルがすぐに見つかる!!|ファイルめがね|ITトレンド
これまではファイルサーバで社内すべてのドキュメントを管理しており、エクスプローラーの検索から必要なドキュメントを探していたとのこと。エンタープライズサーチの導入により、必要なファイルをすぐに見つけられるようになったそうです。
「FileBlog(ファイルブログ)」の活用例(口コミ紹介)
職場のデータを持ち帰って作業の続きを行いたい。その方法が簡便であるほうがよいというリクエストを受け導入しました。操作が簡単で端末を選ばないため、あまりコンピュータが得意でない職員も利用してくれており、管理者の負担軽減になっている。
参考:職場のファイルサーバにらくらくアクセスできて生産性向上|FileBlog (ファイルブログ)|ITトレンド
導入した製品「FileBlog(ファイルブログ)」は、Active Directory連携により、Windowsサーバのファイルにブラウザからアクセスできます。そのため、場所を問わず気軽にファイルを見られる点が魅力だそうです。Office形式のファイルやPDF、画像ファイルなどをダウンロードすることなくプレビュー表示できるため、扱いやすいという声が聞かれました。
エンタープライズサーチの選び方・比較ポイント
エンタープライズサーチを導入する際に留意すべき比較ポイントは以下のとおりです。
- ●収集データの範囲は自社にあっているか
- ●データ検索はしやすいか
- ●自社の用途にあった機能をもつか
- ●料金プランが自社の条件にあっているか
- ●サポートは受けられるか
収集データの範囲は自社にあっているか
せっかくシステムを導入しても、自社で使用している保管場所へ検索が及ばなければ意味がありません。導入を検討している製品のクローラーが対象とする検索範囲について、必ず確認しておきましょう。特に、Microsoft 365やGoogleドライブをはじめとした、クラウドサービスへの横断が可能かは調べておくことをおすすめします。
また、自社で扱うデータ形式に対応しているかも重要です。独自システムがある場合は拡張連携の可否についても調べておきましょう。
データ検索はしやすいか
新入社員をはじめ、専門的な知識を要するなどの理由で検索キーワードが思いつかず、必要な情報にたどりつけない場合もあります。利用するユーザーと扱う情報が増えるほど、データ検索のしやすさが重要となるでしょう。
例えばあいまい検索やサジェスト機能、AIによる絞り込みキーワードの自動抽出機能などが搭載された製品を選ぶのがおすすめです。可能であれば無料トライアルや体験デモを通じて実際に操作してみるとよいでしょう。
自社の用途にあった機能をもつか
検索機能・分析機能・ダッシュボード機能など、製品によって搭載する機能は大きく異なります。自社で解決したい課題や利用目的・シーンに応じて、製品比較前にあらかじめ必要な機能を絞り込んでおきましょう。例えばカスタマーサポートをはじめ、迅速かつ的確に必要な情報を探し出すことが求められるシーンでは、検索機能の充実した製品が適しています。グローバル展開している企業であれば、多言語対応の有無なども確認すべきでしょう。
企業の重要な情報を扱うため、セキュリティ機能も重要です。アクセス制限や認証機能についてもどこまで細かく設定できるか、事前に確認してみてください。
料金プランが自社の条件にあっているか
機能やデータ量によってエンタープライズサーチのコストは異なります。システム導入に必要な費用は、サーバ設置費用・システム費用・保守費用・月額利用料などがあげられます。
パッケージ・オンプレミスなどの買い切り型なら導入コストは数十万円~数百万円ほどです。クラウド製品などのサブスクリプション制であれば、月額数千円~数万円程度です。可能な限り見積もりをとって、社内予算や導入時期などの条件にあった製品を選びましょう。また無駄なコストが発生しないよう、必要な機能などの条件をあらかじめ絞り込んだうえで製品を比較するのがおすすめです。
サポートは受けられるか
エンタープライズサーチを導入する際には、情報システム部門の担当者の協力が必要となるでしょう。しかしリソースの確保などの課題があるため、可能なら導入サポート体制の整ったシステムを選ぶのがおすすめです。開発にかかるサポートが受けられれば、効率的なプロジェクトの進行が望めるでしょう。
ベンダーのサポートサービスには、導入時のほか、保守サポートも多く存在します。バージョンアップへの対応やメンテナンスを依頼できるため管理工数の低減が見込めます。そのほか、操作方法に関する問い合わせや、運用時のトラブル対応などの窓口やフォロー体制の有無についても事前に確認しておきましょう。
エンタープライズサーチの歴史と将来性
エンタープライズサーチが登場したのは、2000年代初頭のこと。しかし、当時はまだビジネスのデジタル化が進んでおらず、使用範囲は限定的でした。その後、企業向けPCシステムの普及にあわせて、エンタープライズサーチが社会に浸透しはじめました。情報検索はシステムごとに行う必要があり、手間がかかったためです。
企業のデジタル化が一気に進んだ2010年代では、企業におけるデジタルデータも膨大になりました。よりいっそうの検索性が求められる時代になったといえるでしょう。エンタープライズサーチ製品の性能もさらに向上し、近年ではAI技術の搭載も珍しくなくなりました。自然言語処理や機械学習など、従来ではありえなかった技術により、エンタープライズサーチはますます便利な検索ツールとして、あらゆる業界で活用されています。
エンタープライズサーチのおすすめ製品
エンタープライズサーチはさまざまな特徴をもつ製品があるため、どのシステムを導入すればよいか悩む担当者も多いようです。
以下の記事では、エンタープライズサーチのおすすめ製品を特徴や価格、クチコミ評価などで比較しています。気になる製品は無料で資料請求もできるため、ぜひ製品選びの参考にしてください。
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エンタープライズサーチの活用で業務を効率化しよう
エンタープライズサーチは、企業が蓄積したビッグデータを検索するのに有効なツールです。豊富な機能で検索しやすく、結果も瞬時に表示します。アクセス権限設定も可能で、情報漏えいをはじめとするリスクの低減に効果的です。また、検索効率の向上のみならず、ナレッジマネジメントや新商品開発、ECサイト・ヘルプデスク業務の改善などにも活かせるでしょう。
導入前には搭載機能やサポートの有無、料金体系などを検討してください。貴重な情報資源を活かし、よりよい企業活動につなげましょう。