企業向け無線LANの基本構成
無線LANとは企業内・家庭内などの限られた範囲で、ケーブルを使用することなく情報通信ができるように構築したネットワークのことです。
ネットワークは無線クライアント(各種デバイス)、アクセスポイント(AP)、ルーターなどで構成されています。無線クライアントには無線モジュールが内蔵され、例えばオフィスではノートパソコンやタブレットPC、プリンタなどが該当するでしょう。内蔵モデル以外では、LANカードやUSBタイプの無線子機を装着するものもあります。
この無線クライアントから情報を受け取り、有線のネットワークに接続するのがアクセスポイント(AP)です。アクセスポイントの性能により通信速度や安全性は異なるので、よく考慮しましょう。
アクセスポイントは機器ごとに、暗号化やローミングなどの各種設定が可能な自律型と、コントローラーが別に用意された集中管理型の2タイプに分けられます。家庭や小規模な事業所では自律型の採用が多く見られます。企業の場合は多くのアクセスポイントを管理する必要があるため、運用管理ツールを使用した集中管理型が一般的だといえるでしょう。運用管理ツールで高度な処理を担えばアクセスポイントでの処理速度も上がり、安定したネットワーク体制の構築が叶います。
アクセスポイントは同時接続台数が多いことから、天井などにまとめて設置するケースもあるでしょう。こうした電源の供給が難しい場合に備え、イーサネットケーブル経由で電源供給を行うPoE無線LANルーター(スイッチ)も提供されています。
企業向け無線LANルーターと家庭用無線LANルーターの違い
中小企業で無線LANの導入を検討する場合、「小さなオフィスだから家庭用で十分」と考える方もいるかもしれません。しかし家庭向けと企業向けでは性能に大きな違いがあります。
第一に、ルーター機能の有無です。家庭用製品では基本的にルーター機能とアクセスポイントが一体化しており、企業向けではアクセスポイント単体のものが多いので覚えておきましょう。これは社内にルーターが導入されていることを前提としているためです。
第二に、接続可能なデバイスの数です。家庭用製品の場合、パソコンやスマートフォンなどの同時利用は3台程度を想定しているため、ビジネスでの対応は困難でしょう。企業向けでは数十台以上、また100台以上でも利用可能な製品があるので、ビジネスでもサクサクとスムーズに利用できるスペックといえます。
企業向け無線LANルーターの選び方
続いて、企業向け無線LANルーターの選び方を解説します。
通信速度はどの程度か
無線LANの規格は、アクセスポイント選択時の重要項目といっても過言ではないでしょう。最新の規格ほど高価で、速度も優れている傾向にあります。上位3規格を紹介するので参考にしてください。
IEEE802.11ax(Wi-Fi6)
最大通信速度は9.6Gbps、周波数帯は2.4GHz帯/5GHz帯で、2021年に標準化されました。同時接続・通信に強い、電波干渉があっても通信速度が落ちにくいなど、ユーザーがどこでも快適に利用できる環境を提供します。
IEEE802.11ac(Wi-Fi5)
最大通信速度は6.9Gbps、周波数帯は5GHz帯で、2014年に標準化。無線LAN専用の周波数帯(5GHz帯)で他の家電などによる電波干渉を受けにくく、安定した通信が可能です。その安定性から映像配信サービスにも向いています。
IEEE802.11n(Wi-Fi4)
最大通信速度は300Mbps、周波数帯は2.4GHz帯/5GHz帯で、2009年に策定。少し前の世代ではあるものの十分な通信速度をもち、手ごろな価格で利用できます。2.4GHz帯は通信距離が長く、天井や壁などの障害物にも強いのが特長です。屋内や屋外を問わず利用できるでしょう。
接続台数はどの程度か
家庭用の無線LANならば、同時接続可能なデバイス数はわずか数個でも事足りるでしょう。企業で利用する場合、そうはいきません。利用ユーザー数とデバイスが膨大になるためです。企業用無線LANを選ぶ際は、まず同時接続が可能な台数を確認しましょう。
多くの製品では、10~20程度の台数を同時接続できます。それ以上の規模になる場合は、50台などの大規模利用に対応した製品を選びましょう。
また、ロードバランサ機能にも着目しましょう。これは負荷を分散する機能で、一つの無線LANで通信が混雑した際、自動で別の無線LANに通信を振り分けます。優れたロードバランサ機能が搭載されていれば、多くのデバイスで無線LANを使用する状況でも通信が安定するでしょう。
便利な機能が搭載されているか
企業向けの無線LANは、さまざまな便利機能を備えています。自社で利用したい機能を明確にし、製品を選びましょう。
PoE
「Power over Ethernet」の略で、LANケーブルを使用して電力供給する機能のこと。この機能があれば、電源アダプタを接続しなくとも無線LANが稼働できます。特に壁や天井に設置するタイプなど、電源アダプタの接続が難しい無線LANの利用に適しています。
設定のコピー
企業では多くの無線LANを使用しますが、一つひとつ設定するのでは膨大な手間がかかるでしょう。企業向け無線LAN製品の多くには、設定のコピー機能が搭載されています。この機能を利用すれば1台の無線LANで行った設定をほかの無線LANにコピーできるため、作業が効率化できます。
セキュリティ機能は万全か
無線LANを選択する際、よく確認すべきなのはセキュリティ機能です。法人向けの無線LANでは以下のような機能を備えているので、自社のポリシーにあう製品を選択しましょう。
プライバシーセパレータ機能
「ネットワーク分離機能」「無線LAN隔離機能」「SSIDセパレータ機能」ともよばれます。アクセスポイントを経由し、無線の端末同士が交信して覗き見されることを防ぐ機能です。製品によっては同一のアクセスポイントのみ分離対応可能なものや、複数のアクセスポイントを経由しても対応可能なものがあるので、よく確認しましょう。
MACアドレスフィルタリング機能
無線LANのただ乗りや、内部ネットワークの覗き見を防ぐ機能の一つ。端末固有のMACをあらかじめ無線アクセスポイントに登録しておき、登録されていない端末からのアクセスを無効にします。
認証機能
認証機能はPSKとEAPに分けられ、PSKではアクセスポイントと子機に、事前入力した共通の文字列(鍵)を使用して認証します。EAPでは認証サーバを使用し、複数の認証方法から選択できるのが特長です。どちらかといえば、企業ではEAPのほうが多く利用されているといえるでしょう。
暗号化方式
暗号化方式は、TKIPとAESに分けられます。TKIPは暗号鍵を一定の間隔で変更するため、安全性を維持できるでしょう。従来、一般的だったWEPという方式でセキュリティ上の脆弱性が見つかったため、代替手段として設計されました。しかしTKIPで脆弱性をすべて解消できたわけではありません。対してAESは次世代の暗号化方式で、まだ解読方法が見つかっておらず、高い安全性を誇ります。
オプション機能
無線LANルーター(スイッチ)を購入する際は、他にもどのような便利機能が搭載されているか確認しましょう。例えば次のような機能が挙げられます。
- ■Webフィルタリング: 有害サイトの閲覧をブロックする
- ■IPS:不正侵入を防止する
- ■アンチウイルス:ウイルスのLAN内侵入を防ぐ
- ■アンチスパム:スパムメールを排除する
- ■アプリケーションフィルタ:禁止アプリケーションを見張る
- ■帯域管理:帯域の使用状況を管理する
企業向け無線LANの人気ランキングTOP3
ここからはITトレンドの2021年間資料請求ランキングのうち、人気のあった上位3製品を紹介します。ぜひ参考にしてください。
製品・サービスのPOINT
- スマートフォンやタブレット端末で無線LANを活用したい方
- オフィスや施設などで無線LANをご検討されている方
- 専門学校、大学などキャンパスネットワークを無線LANにしたい方
ITトレンド2021年間資料請求ランキング1位
「株式会社フルノシステムズの無線LAN構築」は、オフィスや店舗向けのクラウドWi-Fiサービスです。中小から大規模までの無線LAN環境構築に対応し、環境により異なるものの同時に100台以上を接続できます。無償保証期間は5年間。万が一の故障時も先出しセンドバック保守で安心です。
参考価格 |
100,000円 |
対象従業員規模 |
すべての規模に対応 |
提供形態 |
パッケージソフト/アプライアンス |
製品・サービスのPOINT
- RADIUSサーバ機能、DHCPサーバ機能といった各種サーバ機能を内蔵
- 無線LANアクセスポイントを増設しても追加ライセンスは不要
- ゲストユーザごとにネットワークアクセスポリシの設定が可能
ITトレンド2021年間資料請求ランキング2位
「AXprimoW」は、アラクサラネットワークス株式会社が提供する無線LANコントローラ。無線LANアクセスポイントはWi-Fi5・Wi-Fi6に対応、中小から大規模企業まで幅広くカバーします。8年間の長期保証・保守にも対応しています。
参考価格 |
ー |
対象従業員規模 |
すべての規模に対応 |
提供形態 |
アプライアンス |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
以上、年間ランキング3位までの製品を紹介しました。ほかの人気製品も確認したい方は、以下のボタンから最新ランキングもあわせてご覧ください。
企業が無線LAN環境を手軽に構築する方法
どのような無線LAN環境が自社に適しているかを検討し、実際に構築するのは難しいものです。手軽に、確実に構築したい場合は無線LAN構築サービスを利用するとよいでしょう。
このサービスでは、最適な無線LAN機器の選定から環境構築まで任せられます。電波状況や障害物の有無といった専門の技術者でなければわからないことも含め、無線LAN環境構築にかかるすべてを支援します。自社で独自に構築するよりも、確実で安心できる方法といえるでしょう。
無線LANルーターの選び方を理解し、最適な環境の構築を
企業用と家庭用で、無線LAN製品の選び方は異なります。自社にあった通信速度、同時接続台数はもちろんのこと、セキュリティ機能の確認も必ず行いましょう。また自社だけで環境を構築するのが難しい場合は、無線LAN構築サービスに任せるのもおすすめです。以上を踏まえ、自社での利用に適した製品を選び、最適な環境を実現しましょう。