テレワーク導入のシステム構築から導入評価まで
まず、テレワーク導入の手順は、導入検討から導入の評価検証まで、準備したり、検討するべきことがたくさんあります。今回は、テレワーク導入の準備の後半部分にあたる「システム構築~導入評価」までを以下の3つのステップでまとめます。
- ・ICT(情報技術)環境の整備
- ・セキュリティー対策の実施
- ・テレワークの導入・評価
前半部分にあたる導入の検討や社内ルール作りについて詳しく知りたい方は、こちらも御覧ください。
テレワーク導入までのプロセス【導入検討~社内ルール作り編】
テレワーク導入までのプロセス後半編
システム構築から導入評価までの3つのステップを紹介します。
(1)ICT(情報通信技術)環境の整備
テレワークを導入し、その効果を最大限に発揮させるためには情報通信システム環境の確認・整備をすることが重要になります。整備のポイントになるのは主に以下の3点です。
- ・現在利用するICT環境を生かしたシステムの構築
- ・労務管理
- ・コミュニケーション環境
それぞれについて解説していきます。
1.現在利用するICT環境を生かしてシステムを構築
まず、テレワーク用のICT環境は、会社全体の情報システムの移行がない限りは、利用しているIT資産を生かして構築を考えます。
次に対象者の範囲や業務内容、テレワークの形態などを考慮して、テレワークで作業するためのICT環境のシステム方式を選びます。テレワーク環境を実現するシステム方式は、主に以下の4つがあります。
- ■テレワーク環境を実現するシステム方式
- リモートデスクトップ:遠隔でデスクトップを操作する方式
- 仮想デスクトップ:テレワークで働く社員の個々に割り当てた仮想デスクトップを操作する方式
- クラウド型アプリケーションの利用:インターネットを使ったクラウドで提供されるアプリケーションに、社内外からアクセスして作業する方式
- 会社PCの持ち帰り:会社で使っているPCなどを持ち帰り利用する方式
2.遠隔で労務管理を行うシステム構築
勤怠などの労務管理は重要です。テレワークでは、社員がオフィスでの勤務と異なる環境で就業することになるため、明確に行う必要があります。
労務管理には、始業・終業時刻の記録・報告をする勤怠管理、業務時間中の在席管理、業務遂行状況を把握する業務管理があります。テレワークでの、こうした管理は、ITツールを使うことで手間や負担が少なく把握ができます。
例えば、勤怠管理は、インターネットを使ってシステムにアクセスすれば始業・終業などが記録できるクラウド型の勤怠管理システムを使えば、リアルタイムで就業状況の確認ができます。これはメールなどでの報告よりも利便性が高いといえるでしょう。
また、在席管理はプレゼンス管理システム、業務管理はスケジュール管理ツール、ワークフローなどを使えば、確認や日々の管理が容易にできるようになります。
3.コミュニケーション環境
最後に大切なのは、会社とのコミュニケーション環境の構築です。
テレワークでは自宅や外出先などオフィス以外の場所で上司や同僚と顔をあわせずに仕事をする時間が増えます。その結果、コミュニケーションの不足が起きて、テレワーク利用者の業務効率の低下や会社からの疎外感、評価への不安などを招く可能性があります。
この問題の解決にもITツールの活用は有効です。具体的には、電話、電子メール、インスタントメッセンジャー、チャットなどの利用が考えられます。
さらに、表情などの文章や音声だけでは伝わりづらいコミュニケーション面をカバーできる「テレビ電話会議システム」や、端末の画面やファイルなどを共有し、リアルタイムの共同作業ができる「Web会議システム」といったITツールを使えば、より密度の高い意思疎通が図れるでしょう。
このほか、企業ごとで業務に必要なシステムやアプリケーションなどを選定し導入します。テレワークのICT環境の構築は会社の既存システムの活用が基本ですが、実施する対象者や形態などによっては新規投資が必要になることも想定しておきましょう。
(2)セキュリティー対策の実施
社外でIT機器などを利用するテレワークでは、不正アクセスやコンピューターウイルスなどの脅威への対策は避けては通れないプロセスになります。
セキュリティー対策ではルール作りや物理的な対策などがありますが、ここでは技術的な面に絞って、テレワーク環境で有効な検討すべきセキュリティー対策を紹介します。テレワークで想定されるセキュリティー脅威に対しては、それぞれ目的で、主に以下のような方法が有効と考えられます。
- ●不正アクセス対策
- 対策方法(1):ファイアーウォールの導入
- 見込める効果:社内ネットワークと外部との境界を設定し不正アクセスを防ぐ
- 対策方法(2):IPS(侵入防止システム)、IDS(侵入検知システム)の導入
- 見込める効果:不正アクセスの進入検知や排除
- ●不正アクセス対策、データ盗聴、改ざん防止
- 対策方法:VPN(仮想私設網)などの安全性の高い通信インフラの導入
- 見込める効果:許可者が外部から社内ネットワークにアクセスした際の認証確認、通信経路上でのデータ暗号化で安全性を確保
- ●端末管理、情報漏えい対策
- 対策方法(1):ウイルス対策ソフトウェアの導入
- 見込める効果:ウイルスウイルスの感染防止・駆除、被害拡大の防止
- 対策方法(2):シンクライアント端末や端末操作制御ソフトウェアの導入
- 見込める効果:端末やUSBメモリなどの外部記憶媒体へのデータ保存制限で漏えい防止
(3)テレワークの導入・評価
テレワークを始める場合、導入企業は推進体制の構築や新しいルールの策定、ICT、セキュリティー環境の整備などで人的・金銭的な資源を投資することになります。そのため、導入による効果を把握することは不可欠な作業になります。
評価方法は、「量的評価」「質的評価」が一例として考えられます。
量的評価の内容としては「顧客対応(顧客対応回数・時間、顧客訪問回数・時間、新規契約獲得数など)」「情報処理(伝票などの処理件数、企画書・報告書の作成件数・時間など)」「オフィスコスト(オフィス面積、オフィス賃貸料、電気代など)」があります。
一方、質的評価の内容では「業務改善(知識・情報の共有、ムダな業務の削減など)」「成果・業績(業務評価の向上など)」「全体評価(会社への満足度、仕事への満足度、ワーク・ライフ・バランスの実現など)」があります。こうした評価を基に期待した効果と実際の内容で、どのような違いがあったのかを確認していきます。
テレワークの導入では、ICT環境の構築で一気にテレワークを実施するのではなく、試行導入から始めて効果の測定後に本格的な導入に踏み切るという形も企業によっては考えられます。
その場合には、テレワークによる成果判定の基準を設け、一定期間で運用します。そして、試行期間中や終了後に関係者に対してアンケートやインタビューを実施。実態報告と評価をしてもらい、問題点を把握します。その後、解決策の検討などを行うことでスムーズな本格導入につなげるという形になります。
まとめ
以上、テレワークの導入についてシステム構築~導入評価までをまとめました。テレワーク導入には、ICT環境の整備とセキュリティ対策が不可欠です。自社のICTをうまく活用しながら、必要なサービスの導入も検討することおすすめします。
導入検討の方法や社内のルール作りについて知りたい方はこちらも御覧ください。
★テレワーク導入までのプロセス【導入検討~社内ルール作り編】
テレワーク導入までの概要が知りたい方はこちらも御覧ください。
★テレワーク導入までの7つのプロセス【概要編】