在宅勤務(テレワーク)の必要性
会社は使用者として労働者に対し「安全配慮義務」があることを念頭におき、労働者が安全に勤務できるような配慮が必要となります。そこで今、テレワークが注目をされています。さらに小中高の休校が重なり、その必要性は高まっています。ただ、労働環境整備が追いついていないケースも多く⾒られます。テレワークを機能させるための労務管理のポイントについてご紹介します。
参考:「自宅でのテレワーク」という働き方|厚生労働省
テレワークの種類
「テレワーク」とは、情報通信技術を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことをいいます。(※「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語)テレワークは働く場所によって、次の3つに分けられます。
- 1.⾃宅利⽤型テレワーク(=在宅勤務)
- 2.モバイルワーク(スマートフォンや PC を利⽤した外出先での勤務)
- 3.施設利⽤型テレワーク(サテライトオフィス勤務など)
テレワークがもたらす効果として、今回の新型コロナウィルスの感染拡大予防策としてだけでなく、育児や介護などとの両⽴や、通勤渋滞の緩和によるQOL向上、勤務可能地域の拡⼤、副業の推進などが⾒込まれています
テレワークをする上での労務管理のポイント
テレワークを導入する際に、企業が気をつけることを4つのポイントに分けて紹介します。
ポイント1:情報共有が何よりも大切
ITの発達により各種のグループウェアやクラウドサービスが充実しています。チャットや、クラウド型の基幹システムなどのグループウェア導入により、遠隔地でもタイムリーな情報共有が可能になります。
ただし、一緒の場所にいないことで人間関係の希薄化が起こり、意志の疎通がはかりにくく、また「社風」「帰属意識」「仲間意識」の共有がしにくいという面もあります。
経営者、マネージャーの想いや連絡事項を、WEB会議で行ったり、SNSグループを運営したりといった人間関係づくりの補完的な工夫は必要となってくるでしょう。
ポイント2:業務内容の不公平さをなくすことが大切
出社する社員が⽇常的に⾏っている電話応対や掃除、郵便物対応などの業務について、テレワーク勤務者は物理的に⾏うことが難しくなります。また、自宅でテレワークを行う場合、従業員宅のネット環境を使用することになるため、その費用負担に関しても取り決めが必要となります。
業務の不公平感が出ないようにするためのポイントは以下のとおりです。
- 1.電話応対を減らす→チャットツールやメールでの応対に切り替える
- 2.郵送業務を減らす→ペーパーレス化を進め、やり取りは極⼒メールなどを利⽤する
- 3.掃除などは外注する
ポイント3:セキュリティー の整備が大切
社員が⾃宅でテレワークをする際に当然考えなければならない課題としてセキュリティー対策があります。PCなどに対してセキュリティーソフトのインストールをすることは当然として、人為的なミスによる情報漏洩事故を防ぐために次の内容についてのルールを決めましょう。
- 1.デバイスの貸与ルール(契約書・申請書を作成し、署名捺印をする)
- 2.セキュリティーソフトのアップデートに関するル ール
- 3.自宅からの電話やメールのルール
ポイント4:勤怠管理が大切
従業員がテレワークをしている場合も、労働時間の記録は必要となります。しかし、オフィスで働く場合と異なり、従業員の労働状況を目で確認することができません。また、テレワークで働いている場合、従業員が仕事が終わらず深夜や休日まで仕事をしていても、上司は気付きづらい点もあります。
従業員の長時間労働を避けるためには、労働時間の把握を正確に行うための勤怠管理システムの導入が必須となります。
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テレワークの助成金とは
会社の自主的な判断で従業員を休業させる場合「使用者の責めに帰すべき事由」として休業手当(平均賃金の6割)の支払いが必要となります。しかし、使用者も従業員もいつまでも自宅待機をしているわけにはいきません。テレワークができる環境づくりの整備が急がれます。
なお、今回の新型コロナウィルス感染拡大防止策として、労働者に対し一時的に休業、出向などを行う場合、厚生労働省の雇用調整助成金の特例措置が発表されています。
また、時間外労働党改善助成金(テレワークコース&職場意識改善コース)に特例的なコースを設けられました。この助成金は、テレワークを新たに導入したり、特別休暇の規定を整備した中小企業事業主を支援するものです。
参考:新型コロナウイルス感染症に係る時間外労働等改善助成金(テレワークコース、職場意識改善コース)の特例について|厚生労働省
助成金の要件などについては社会保険労務士にご相談ください。
フレックスタイム制の拡充について
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、時間差出勤を行う企業も多くなってきました。昨年の4月から働き方改革関連法の一環としてフレックスタイム制が拡充されました。それにより従来よりも柔軟にフレックスタイム制の運用が可能となりました。以下、改正されたフレックスタイム制についてご紹介します。
参考:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き|厚生労働省
フレックスタイム制とは
フレックスタイム制(労働基準法第32条の3)は労働時間に関する法律の一つです。1日の労働時間を固定せずに、「ある一定期間の総労働時間」を決めることで、労働者がその総労働時間の範囲で自分のライフスタイルに合わせて労働時間を決めて働くことを目的としています。
フレキシブルタイムとコアタイム
フレックスタイム制を行うにおいて、「フレキシブルタイム」と「コアタイム」を設定することができます。フレキシブルタイムとは「その時間の範囲の中であれば、出勤・退勤が自由にできる時間帯」のことでコアタイムは「必ず出勤し、働かなければならない時間帯」をいいます。
11時〜15時頃の日中にコアタイムを配置し、前後の時間をフレキシブルタイムとすることが典型的な時間設定です。(ただし、コアタイムは必ずしも設ける必要はありません)。小さなお子さんのいる家庭など、幼稚園や保育園の送り迎えにも無理なく対応できる働き方といえます。
改正の内容
以前の法律では労働時間の清算に関して、「清算期間=フレックスタイム制の枠」が1ヶ月と短かったため、フレックスタイム制を利用する労働者は1ヶ月を超えた労働時間の調整はできない不便さがありました。
しかし、改正された法律では労働時間の清算期間を最長3ヶ月に延長することで、よりフレキシブルに柔軟な働き方ができるようになりました。
例えば、現在のように学校が休校になった場合、子どもたちの休みに合わせ「3・4・5月の3ヶ月」の中で働く時間の調整をすることができます。子どもを預ける場所がない、テレワークも難しい環境で働いている方は家にいる時間を確保しやすくなっています。
※ただし、清算期間の各月において週平均50時間を超えて労働した場合は、超えた分の割増賃金を支払う必要があります。
フレックスタイム制の今後の課題
複数月にまたがるフレックスタイム制の導入により勤務時間の自由度は高まる反面、従業員の労働時間の管理や、ミーティングにより意志の統一などの時間の確保が難しくなります。自由な働き方に合わせたグループウェアの整備や、勤怠管理システムの導入、個別の貢献度を正しく評価する評価システムの整備も同時に進める必要があるといえます。