2019年採用トレンドの振り返り
2020年の採用トレンドについて考える前に、2019年の採用トレンドを少し振り返ってみましょう。
2019年の有効求人倍率
2019年の平均有効求人倍率は1.60倍で、2018年と比べ0.01ポイント減でした。前年度より微減したものの、月単位では1.63倍になる月もあり高い有効求人倍率で推移しました。
リクルートの調査によれば、新卒の求人倍率は前年比0.1ポイント増の1.88倍であり戦後最大と言われる景気拡大を背景に、企業業績が堅調に推移したことがうかがえます。
参考: 一般職業紹介状況(令和元年12月分及び令和元年分)について|厚生労働省
参考:大卒求人倍率調査 2019卒|リクルート
2019年の採用ルール
2019年4月に経団連は新卒採用の通年採用を強化する方針を打ち出しました。また、2021卒から採用活動開始の期間を定める就活ルールを廃止することも決定しています。一方で、政府が経団連に変わって採用ルールを定めることになりました。
これまでは企業団体である経団連がルールを定めてきましたが、経団連に加盟していない外資系企業などはルールに従うことなく自由な採用活動を行っています。そのため、これまで企業間で採用活動に不公平感がありました。
そこで今回、経団連がルールを廃止することに伴い、政府が2022卒以降も就活ルールを定めることになったのです。また、大学側と経団連が「新卒一括採用」の廃止に合意したことで、今後通年採用が拡大することが見込まれています。
2019年の採用手法
2019年は高い有効求人倍率を背景に、優秀な学生を各企業が取り合う激しい採用活動が繰り広げられました。ダイレクトリクルーティングを中心に、学生をスカウトするサービスや、学生と企業との接点をつくる学内就活カフェなどの取り組みが行われました。
従来の採用手法である合同説明会や大手メディアによる求人広告では、大手企業も苦戦を強いられています。そのため、多くの企業が学生にダイレクトにアプローチするために、オウンドメディアやSNSなどの自社メディアの活用も積極的に行いました。
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2020年採用を取り巻く環境
2020年は新型コロナウイルスの影響による外出自粛と、世界的な景気の冷え込みにより採用活動を取り巻く環境が一気に変化しています。
新型コロナウイルスによる社会情勢の大変化
2020年に入ってから世界情勢は大きく変化しました。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、海外との往来をはじめとする移動が禁止。また、多くの人が集まる施設では営業停止が相次ぎました。
日本経済をけん引する自動車産業や大手メーカーでも工場の稼働が停止。それに伴い、多くの部品メーカーや関連産業が大きな打撃を受けています。2008年に起きたリーマンショックを超える景況悪化が今後待ち受けている、と言われている状況です。
有効求人倍率の低下
こうした経済状況の悪化を受け、今年3月の有効求人倍率は3年半ぶりに1.4倍を下回る1.39倍に落ち込んでいます。製造業だけでなく、観光産業や飲食業など人の動きを伴う産業で求人が減少しているようです。さらに有効求人倍率が低下することが懸念されており、今後の動向が注目されています。
リモートワークの普及
新型コロナウイルス感染拡大の防止のため、大手企業では在宅勤務の導入が急速に進みました。経団連の調査によれば90%以上の加盟企業でリモートワークを導入したという結果になっています。東京都内では、3割以上の企業がリモートワークを導入しているそうです。
こうしたリモートワークは、国や東京都も推奨しており、リモート環境を整えることに助成金も支給しています。今後もさらにリモートワークが普及することが予想されます。
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2020年採用トレンド3つのキーワード
こうした社会環境が激変する中、2020年の採用活動はいったいどうなるのでしょうか。トレンドを表す3つのキーワードを解説します。
採用中止
一つ目は採用中止です。多くの企業で新卒採用中止の検討が始まっています。航空産業や観光産業など景況悪化の影響の大きい業界では、既に2021卒の採用を大幅に縮小または中止を決定した企業もあるでしょう。
一方で新卒採用中止は、中長期的には企業イメージの悪化や企業の年齢構成のアンバランス化にもつながります。そのため企業の人事担当者は採用を中止にした場合の影響について、短期的・中期的の両方の視点で検討するべきです。
こうした観点から、2020年は採用を中止する企業と、縮小しつつも大幅に少ない数で採用する企業との2極化が進むでしょう。
リモート採用
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、Web会議・ビデオ会議ツールなどを活用したリモート採用が普及しています。リモート採用を導入した企業は取り急ぎ、説明会と面接をWeb化した企業が多いでしょう。
まずは応募から内定までのプロセスがリモート化されましたが、今後は募集プロセスのWeb化が活性化すると考えられます。募集プロセスでは、SNSやYoutubeなどWebメディアを活用した母集団形成の取り組みが中心になると考えられます。そのため、企業の採用担当者はWebマーケティングやSEOの知識が求められるでしょう。
厳選採用
採用を大幅に縮小する中であっても、アフターコロナを見据えて優秀な人材を確保しておきたいのが企業の心理です。
特に今後急速に進むであろうデジタル化に向け、AIやIoT、プログラミングに精通した人材を厳選して採用する企業も少なくでしょう。大手企業では採用人数を数名~数十名以下に絞り込み、即戦力として活用可能な人材だけを確保する動きも出てきています。こうした厳選採用が今年の大きなトレンドになりそうです。
2020年の採用活動を乗り切るには?
では2020年の採用活動を乗り切るには、どんな取り組みをすべきでしょうか。具体的な方法について解説します。
成果報酬型スカウトサービスの活用
募集費が大幅に縮小する2020年は、限られた予算の中で厳選した人材を採用することが求められます。また、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、合同説明会や学校訪問といった従来の対面型の採用手法が大幅に制限されるでしょう。直接、優秀な学生を採用するダイレクトリクルーティングが採用手法の中心になると考えられます。
ダイレクトリクルーティングの中でも、特に成果報酬型のサービスがおすすめです。企業からアプローチするスカウトサービスは、限られた予算の中では費用対効果の面で効果的とは言えません。確実に特定の人材を採用できる成果報酬型のサービスが費用対効果面で有効だと言えるでしょう。
採用工数の面からも、数名程度の採用であれば採用担当者が動くよりも成果報酬型スカウトサービスを利用するほうが、工数を大幅に削減できます。ターゲットを確実に採用できるスカウトサービスを積極的に利用しましょう。
採用の完全IT化
対面での採用活動が大きく制限される中で、多くの企業でリモート採用を導入しました。ここでもう一歩進んで、この機会に採用活動を完全にIT化してはどうでしょうか。
HRテック業界では、2020年現在で採用活動のほとんどを自動化できるレベルまで技術が進化しています。SNSでの候補者探しから、ダイレクトメール送信、適性検査による候補者のスクリーニング、面接結果のデジタル化、内定通知に至るまで、ほぼすべての工程をITにより簡素化できます。
これまで採用活動に大幅な工数を割いてきた企業であれば、こうしたHRテックを活用した採用へとシフトするのもおすすめです。最近では月額制の安価なクラウド型サービスも増えてきています。2020年を採用の完全IT化のトライアル年度として、数か月だけでもこのようなクラウド型サービスを試してみてはいかがでしょうか。
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