福利厚生とは
福利厚生とは、どのような制度なのでしょうか。概要と種類をそれぞれ見ていきましょう。
企業が従業員やその家族に払う給与・賞与以外の報酬
福利厚生とは、従業員やその家族のワークライフバランスの向上を目的に、企業が取り組む制度のことです。英語では「employee benefits」と訳されます。
住宅手当や慶弔見舞金、健康診断、メンタルヘルスケアなどが福利厚生として多くの企業に導入されています。近年ではリフレッシュ休暇や失恋休暇、カフェの設置、資格取得支援といった独自の福利厚生を導入する企業も増えています。
福利厚生の適用対象は正規労働者だけではありません。有期雇用労働者やパート・アルバイトを含むすべての労働者が対象です。
福利厚生の種類は2つ
福利厚生の種類は「法定福利」「法定外福利」の2つです。それぞれの概要と特徴を見ていきましょう。
1.法定福利
法定福利とは、従業員への実施が法律により義務付られた福利厚生のことです。企業が実施すべき法定福利は以下のとおりです。
- 【企業1/2、従業員1/2負担】
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- ■健康保険
- ■厚生年金保険
- ■介護保険(40歳以上の従業員が対象)
- 【企業2/3、従業員1/3負担】
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- 【企業全額負担】
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2.法定外福利
法定外福利とは、法律により実施が義務付けられていない福利厚生のことです。従業員の経済負担の軽減や労働意欲のアップを目的に、企業が任意でさまざまな制度を導入します。一般的な法定外福利は以下のとおりです。
- 住宅手当
- 住宅にかかる費用の1部を補助
- 家族手当
- 扶養家族がいる場合に支給
- 交通費補助
- 通勤にかかる費用の1部を負担
- 医療、健康
- 健康診断、人間ドックの費用を企業が負担。50名以上の企業はストレスチェックの実施
- 慶弔見舞金
- お祝いや弔いとして支給
- 自己啓発
- セミナー参加、資格取得費用を負担
なお、法定外福利を導入する際は以下の法律に抵触しないように注意しなければいけません。
- 男女雇用機会均等法
- 性別により待遇格差が生じてはいけません。
- 労働基準法
- 雇用形態の違いで待遇格差が生じないようにしましょう。また、企業は不当搾取を目的として、従業員に社内預金を強制してはいけません。
福利厚生を導入するメリット
福利厚生の導入でどのような効果を期待できるのでしょうか。考えられるメリットを2つ紹介します。
従業員の満足度が向上し、人材の定着率が上がる
福利厚生が充実していると従業員のモチベーションがアップします。経済的にも安定し、働きやすい環境であれば、ワークライフバランスを最適な状態に保てます。これにより、従業員は万全な状態で仕事に臨め、さらなる業務効率化が可能です。さらに、「会社に大切にされている」といった愛社精神が芽生え、従業員は離職しにくくなるでしょう。
福利厚生の導入・拡充は従業員のエンゲージメントを高め、ひいては企業の収益アップを牽引する大切な要素です。
企業のイメージが向上し、人材が集まりやすくなる
福利厚生は優秀な人材を獲得するための重要な手段です。
他社とは違うユニークな福利厚生は、競合他社との差別化を図れます。企業の特徴を掴みやすいため、求職者の目にも留まりやすいでしょう。加えて、求職者が集まるほど自社と共通項の多い人材に出会える可能性が高くなります。
また、福利厚生により従業員に対する姿勢・方針の見える化が可能です。どのような企業であるのか、導入している福利厚生で判断してもらえます。
福利厚生を導入するデメリット
福利厚生の導入にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。考えられる2つのデメリットを紹介します。
コストや管理工数の負担が大きい
企業の収益が向上すると従業員の給与も高くなり、企業負担分の福利厚生費もアップします。
また、従業員のエンゲージメントを高めるためにさまざまな福利厚生を導入すると、管理負担が増大します。具体的には、申請書類の作成・受付、その後の処理などが必要です。そして、福利厚生は導入=ゴールではありません。導入後は福利厚生の適宜見直し・改善を行う手間もかかります。
このように、福利厚生を充実させると、担当者の業務過多につながってしまいます。従業員のワークライフバランスを保つことも企業の大切な役割です。そのため、企業の財務状況と担当部署の業務負荷を考慮しながら、必要な福利厚生を導入しなければいけません。
従業員全員が満足できる環境づくりが難しい
福利厚生ですべての従業員を満足させることは難しいです。実際に、家族手当や交通費補助などは従業員によっては不要な福利厚生です。さまざまな施設の利用費用を補助する取り組みもありますが、それもすべての従業員が利用するわけではありません。中には、そういった福利厚生に不満をもつ従業員もいるでしょう。
そこで、選択を従業員に委ねられるカフェテリアプランを導入するのも1つの方法です。
福利厚生の導入方法
福利厚生はどのように導入すれば良いのでしょうか。導入方法は大きく分けて2種類あるため、それぞれの方法を見ていきましょう。
自社で策定し提供する
自社で福利厚生を決め、導入する手順は以下のとおりです。
- 1.導入目的の明確化
- 2.導入する福利厚生の比較・検討
- 3.導入・運用コストの算出
- 4.費用対効果を考慮した導入・運用可否の判断
- 5.社内予算の確保
- 6.利用対象者や方法・経費処理手順などのフロー設計
- 7.従業員に通知する規定(利用条件や金額など)の作成
- 8.担当部署向け運用マニュアルの作成
- 9.制度導入の背景や目的などをまとめて従業員へ交付する資料を作成
- 10.従業員への説明後、運用スタート
特に重要なのは、導入目的の明確化です。これが徹底されていないと、本来の趣旨からかけ離れた制度になりかねません。その結果従業員に利用されず、導入に失敗してしまいます。
代行サービスを利用する
福利厚生業務を代行サービスに委託する方法もあります。福利厚生の業務・管理を業者に委託するため、業務効率化やコスト削減が実現可能です。代行サービスは一般的に以下のプランを提供しています。
- パッケージプラン
- 代行業者が用意したサービスをパッケージで利用するプランです。従業員ごとの定額料金を支払えば、パッケージ内のサービスをすべて利用できます。福利厚生はパッケージ化されているため、企業の独自性は出せません。しかし、業務のすべてを代行でき、さまざまな福利厚生を従業員に利用してもらえます。
- カフェテリアプラン
- 代行業者と企業が提供する福利厚生を利用するプランです。企業が従業員に一定のポイントを付与し、それを使って利用したい福利厚生を選びます。パッケージよりも企業の独自性が高く、福利厚生の種類が豊富です。そのため、従業員のニーズに合った福利厚生を提供でき、満足度の向上が実現します。
福利厚生をしっかり理解して自社に導入しよう!
福利厚生とは、従業員・家族に対して支給される、給与・賞与以外の報酬です。種類は法定福利・法定外福利の2つで、メリット・デメリットは以下のとおりです。
- メリット
-
- ■従業員満足度
- ■定着率の向上
- ■企業イメージの向上
- ■採用活動に有効
- デメリット
-
- ■コスト
- ■業務負荷の発生
- ■全従業員が満足できるわけではない
福利厚生の導入方法は、自社運用と代行サービス利用の2つです。自社に最適な方法を選び、福利厚生を導入しましょう。