給与計算とは?
給与計算とは、従業員の出退勤情報をもとに適切な支払うべき毎月の給与額を計算することです。その業務内容は給与や交通費の計算、経費の精算だけではありません。また、所得税の税額や社会保険料額を計算するなど、さまざまな作業をする必要があります。労務に関わる法律の改正にも対応していく必要もあり、神経を使う業務です。
もし、給与計算業務でミスが生じるとどうなるでしょうか。例えば、支払うべき残業代を計算ミスによって支払っていなかった場合、それは賃金の未払いです。最悪の場合、従業員からの信頼を失い訴訟を起こされる可能性もあるのです。そうなると、会社に対する世間からの信用も失いかねません。
また、給与から差し引かれる所得税の計算においてミスがあった場合には、正しく税金を納めていないということで税務上のリスクを生じることになります。
給与計算業務は、従業員や世間からの会社に対する信用という意味で、労働契約の土台となる重要な業務です。ミスのない正確な作業が要求されます。
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給与計算の方法
給与計算業務はどのようなプロセスで行われるのでしょうか。7つのステップに分けて解説します。
1.労働時間を集計する
最初に行うことは、従業員の労働時間の集計です。日々の勤務時間を記録している勤務表やタイムカードを用いて、従業員の1ヶ月分の労働時間を計算します。
2.総支給額の計算
次に、基本給のデータや勤怠データを入力し、基本給や時間外手当等の支給額を計算します。また、会社の規定に基づいて通勤交通費などの金額を計算します。
基本給のデータは、従業員の役職や勤続年数などでそれぞれ異なります。年度ごとだけでなく、昇給や異動があった際には、随時確認をします。
また、時間外手当の計算には労働基準法による割増賃金の規定が関わってきます。法律の改正があると、社内での対応事項も出てきますので、忘れないようにしましょう。
3.控除額の計算
基本給から控除される金額を計算します。計算すべき項目は、雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料、そして住民税です。また、従業員が40歳以上の場合には、介護保険料についても計算が必要です。
雇用保険料は会社が6割、従業員が4割負担です。健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料は会社と従業員が折半して負担します。
4.源泉所得税を計算する
従業員の給料から所得税を天引きして、その額を会社が代わりに国に納める義務のことを、源泉徴収と言います。この源泉所得税の金額は、支給額から保険料などの控除額を控除した後の金額を、国税庁の源泉徴収税額表に当てはめて計算します。
ちなみに、毎月計算している所得税と住民税は仮の金額です。1年間経たないと正確な税額が決まらないため、毎年12月と翌年の1月に年末調整を行って課税額を調整します。ここで計算ミスがあると、従業員と税務署双方に迷惑をかけてしまいます。
5.手取り額の計算
計算した基本給に交通費や各種手当を足した支給額から、社会保険料や税金などの金額を差し引いて、最終的な手取りの金額を確定します。
6.給与支給
計算した手取り額を、給与の支給日に従業員に支給します。口座振り込みの会社がほとんどですが、その際、従業員の口座情報や振込額については勿論、支給日が休日に重なった時には前後どちらにずれるのかについてなど、諸々の事項について確認をしっかりと行うことが大切です。
振り込み日のミスは多くの従業員に多大な迷惑をかけてしまいます。また、ある従業員に振り込むべき金額を間違って違う従業員に振り込んでしまうと、個人情報漏えいの問題となります。
7.税金や社会保険の納付
計算した住民税や、源泉所得税額を税務署に納付します。原則として、給与を支払った日の翌月10日までに納めることが必要です。
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給与計算業務を行う方法
給与の計算業務を行う方法には主に3つがあります。以下では、それぞれの方法についてメリットや気をつけるポイントをまとめます。
エクセルで行う方法
従業員の数がそれほど多くなく数人規模という場合には、エクセルで管理することも可能です。エクセルは大抵のパソコンに入っているソフトですので、手軽で、仮に担当者やパソコンが代わった場合にも対応がしやすいというメリットがあります。
しかしエクセルの場合、内容を消してしまったり、入力ミスをしてしまうというような、ヒューマンエラーが生じやすい傾向にあります。また、基本給計算の基礎となる従業員ごとのデータや、控除額の計算に必要な保険料率などの変更を、しっかりとファイルに反映しなければなりません。日々の業務に追われていると、この変更をし忘れていたり、そもそも料率の変更自体を知らなかったなどで、古い情報のまま計算を行ってしまうリスクがあります。
料率の改正時期は、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料などでそれぞれ異なりますので、注意しましょう。
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代行業者にアウトソーシングして行う方法
アウトソーシングとは給与計算業務や年末調整などに関する作業を、外部の会社に委託することです。それによって、従業員の手間を省くことができるというメリットがあります。また、手の空いた従業員はより重要な業務に専念できるようになるため、さらなる業務効率化が期待できます。
アウトソーサーはその道のプロです。複雑な社会保険料の計算や法改正への対応など、神経を使う部分をプロに任せることができるのは、安心感にもつながるでしょう。
しかし一方で、就業規則の改定などの際には追加費用が発生することもあります。料金体系についてはあらかじめ充分な確認が必須です。
給与計算システムで行う方法
給与計算システムは勤怠データと連動しながら、給与業務に関わるさまざまな計算を自動で行ってくれるシステムです。正社員やパート、契約社員など各種雇用形態への対応ができます。さらに、毎月の給与計算だけではなく、年末調整やその他不定期なものの処理も可能です。
税金や保険料の計算についても、システムのアップデートを行えば常に最新の料率や税率に更新されるため、計算ミスを防ぐことにもなります。計算ソフトは現在さまざまな製品があります。自社に合った製品を見極めることが必要です。
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給与計算システムとアウトソーシングを比較
自社で運用し続けるべきか、アウトソーシングすべきかの判断に迷う会社も多いようです。決める際のポイントを解説します。
アウトソーシングしたほうがいい場合
従業員が多数所属している会社で、給与計算に関わる業務が非常に複雑で膨大な作業量になっている場合には、アウトソーシングした方がメリットが大きくなると考えられます。また、給与計算業務は専門知識が必要ですので、決まった従業員が全てを担当することになりがちです。
もし、給与計算だけを担当している従業員が複数いて、その人件費が高額になっている時には、アウトソーシングすることで人件費の削減もできるでしょう。
給与計算システムがオススメの場合
給与計算のできる従業員を育てて、同時に給与計算に関するノウハウを社内で蓄積していきたいという場合には、給与計算システムの方が良いでしょう。給与計算という専門的な業務に精通した従業員が1人でもいれば、何かあった時にも社内で柔軟に対応ができます。
社内制度がまだ整っておらず、業務が標準化されていない時にも、給与計算システムの方が良いと言えます。なぜならば、その状態でアウトソーシングをしようとすると、逆にアウトソーサーの指定する業務フローやファイル形式に、自社が合わせなければならないという事態が生じ得るためです。そうなるとアウトソーシングはメリットどころか、余計なコストを発生させかねません。
さらに、給与計算業務は複雑な作業ですので、全てをアウトソーシングすると多額の費用がかかりがちです。加えて、何か運用に変更が生じると、追加費用が発生します。給与計算ソフトにも色々ありますので一概にシステムの方が安いとは言えませんが、クラウドの給与計算システムであれば安価なものが多くあります。費用を抑えるものとしても、給与計算システムに一考の価値はあるでしょう。
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