生産管理システム導入の背景
失敗事例も多い生産管理システムですが、今回紹介する企業は、生産管理システムの導入を機に、更なる成長を実現できました。まずは、企業の概要や、顕在化していた課題について確認しておきましょう。
企業概要
今回のモデルとなる企業は、食品製造業を営むC社です。従業員数は約50名で、製造した食品をコンビニなどに毎日出荷しています。競合優位性の高い食品を製造しており、コンビニとの関係性も良好なため、安定的な経営を維持しています。
また関東と関西に工場を2か所ずつもっており、日本全国への供給体制も万全です。倉庫については、自社倉庫やコンビニが保有している倉庫を利用し、全国に物流拠点を張り巡らせています。
生産管理システム導入に至るまでの課題
C社では、もともと特定のベンダーにてスクラッチ開発した生産管理システムを長きにわたり使ってきました。ところがC社の成長にシステムが追い付かず、全国に散らばる物流拠点の在庫数を正確に把握できなくなってきたのです。さらにドライバーへの配送指示と在庫数の紐づけもできておらず、紙によるやり取りが頻繁に発生するなど、生産性も低くなっていました。
そんななか、パソコンのOSの問題も浮上してきます。生産管理システムにはブラウザでアクセスする機能がありましたが、最新のブラウザには対応していないため、古いバージョンのブラウザを無理やり使っていました。ところが新規購入したパソコンでは、ブラウザの問題で生産管理システムにアクセスできないことがわかってきたのです。
OSの保守サポートの終了が迫る中、C社はクライアントパソコンの一新を前に、生産管理システムの刷新を検討することになりました。
そこで、C社では生産管理システムのバージョンアップを検討します。しかし、生産管理システムの開発に携わったベンダー担当者はすでに退社しており、最初からカスタマイズする必要があることもわかりました。そのため、C社はパッケージ型の生産管理システムを導入することを中心に本格検討に入りました。
ベンダー選定にあたり重視したこと
パッケージ型の生産管理システム導入の検討を開始したC社ですが、中小企業向けの製品も多数出てきており、自社に最適なシステムの選定をすることは簡単ではありません。そこでシステムベンダーの協力を得ながら、特に自社が重視する点を明確に定め、ベンダー選定を進めていきました。
カスタマイズを極力避けてパッケージで完結させる
C社ではスクラッチ開発した製品を利用していましたが、保守サポートの面から多くの問題があると感じていました。そのため、できる限りパッケージで完結できる製品を選定することにしました。パッケージであれば、多くのニーズが機能として組み込まれていることにも期待できたためです。
ただし、すべての機能をパッケージだけで完結するのは難しいと感じられました。そこでカスタマイズに対する柔軟性も重要視し、カスタマイズ部分の保守サポート体制が提供できるベンダーを選定することにしました。
きめ細かく在庫状況を把握できる
C社の主力製品である食料品は、在庫状況に基づき生産量を決め、連続生産しています。在庫量を正確に把握できなければ生産量が適切ではなくなり、不良在庫や機会損失が発生してしまいます。
しかし、全国各地に数百に及ぶすべての在庫状況を把握することは容易ではありません。配送中のトラックに積み込まれた品物も、移動中の在庫として認識しなければなりません。リアルタイムかつ正確に在庫状況を把握できる生産管理システムを選ぶことにしたのです。
従業員の負担を減らす画面インターフェース
生産管理システムを導入すれば、従業員が日々の業務において多くの時間を入力や検索のために費やすことになります。画面インターフェースが優れている製品は、そのままC社全体の生産性向上に直結します。そこで、C社は画面インターフェースに優れているかどうかを重視しました。
そのために、製品の導入前に現場の従業員にもプロジェクトに入ってもらい、検証作業を行いました。実際に操作を行う従業員に使い勝手を確認してもらうことで、現場が納得するインターフェースをもつ生産管理システムを選定できたのです。
生産管理システム導入後の効果
生産管理システムは、思っていた以上の恩恵をC社に与えました。想定以上に自社のシステムは陳腐化しており、逆にパッケージ製品は進化していたのです。
生産から納品に至る生産性の向上
生産から、出荷、配送、納品に至る製品の流れについて、従来の生産管理システムでは、すべてをデータベースに格納できず、正確なデータを把握するのに多くの時間を費やしていました。
生産管理システムのリプレイス後は、すべてのプロセスにおける製品の流れがすべてデータベースに格納されており、一気通貫したデータの把握ができるようになりました。インターフェースも劇的に改善し、データ入力のスピードも大きく向上。配送指示書などの出力の手間も軽減され、生産性向上を実現できたのです。
ペーパーレス化の実現
従来であれば、C社ではFAXなどの紙による作業も残されており、紙をみないと把握できないデータも数多くありました。非効率な紙による管理は、生産管理システムとエクセルの二重管理も生み出していました。
生産管理システムのリプレイスは、このような状況を一変させ、すべてのデータを一元化させることで、紙やエクセルによる管理は必要ではなくなります。オフィスにおけるペーパーレス化が実現し、オフィススペースの有効活用を通じて働きやすい職場づくりも実現できました。
経営革新の実現
生産管理システムの導入により、生産性を向上させ、経営を安定化させたC社は、新たな取り組みにも挑戦します。生産プロセスを改善し、工場におけるゼロエミッションを実現。廃棄物をゼロにする取り組みをはじめました。
こうした取り組みを、経営革新計画として申請して自治体の承認を獲得し、優秀企業賞として表彰されるまでになりました。C社は、更なる持続的な成長を果たすため、新商品開発や、新たな販路拡大への取り組みを強化しています。
参考:中小企業庁:経営サポート「経営革新支援」経営サポート「経営革新支援」|中小企業庁
生産管理システムは企業の競争力を左右する
製造業にとって、生産から、出荷、納品に至るプロセスを効率化することは、企業命題となっています。製造業と一口にいっても、そこには受注生産型や見込み生産型など、さまざまな形態があるため、解決しなければならない課題も千差万別です。
このような製造業を巡る実情を反映し、自社に最適な生産管理システムを選定する必要があります。重要なことは、特定の製品を前提に生産管理システムを導入するのではなく、さまざまな製品を比較することです。真に自社の生産性を向上させるシステムを導入し、企業の競争力強化に結び付けるようにしてください。
以下の記事では、IT製品取扱数・カテゴリ数業界一のITトレンド編集部がおすすめする、生産管理システムの機能や価格を比較できます。中小企業向けの製品もわかりやすくまとめられていますのでぜひ参考にしてください。
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