RPAを導入する際の注意点
正しく導入すれば効果の高いRPAですが、なんの知識もなくなし崩しに導入を進めていては、失敗のリスクは高まります。RPAは、導入しさえすれば生産性が上がる魔法のツールではないのです。ここでは、RPAを導入する場合に、必ず押さえておいたほうが良い注意点について解説します。
RPAの種類を正しく理解する
RPAと一口にいっても、製品によって機能は異なり様々な特徴があります。どの製品が自社に適切なのか、正しく見極めなければなりません。まずは、RPAは2種類に大別されることを覚えておきましょう
- デスクトップ型
- 自動化処理をしたいパソコンに直接インストールする、スタンドアロン型のRPAです。安価であることが多く、導入も簡単ですが、複数のロボットを統合管理することはできません。規模が小さな中小企業の場合、デスクトップ型RPAの導入から進めてもよいでしょう。
- サーバー型
- サーバーから、複数のロボットを一元管理できるRPAです。RPAを互いに連携させながら業務の自動化を実現できるため、複雑な業務の自動化も実現できます。統合管理できるためセキュリティレベルも高く、大企業が導入する場合はサーバー型を検討するほうがよいといえます。なお、サーバー型のRPAツールの場合、クラウドを活用することも可能となります。
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費用対効果が高い業務にRPAを適用する
RPAは、単純作業で定型的な業務に導入すると効果が上がるといわれていますが、費用対効果を出すことは簡単なことではありません。RPAの導入により、人件費を削減しないと意味がないのです。このため、残業が抑制されたり、本当に従業員を解雇したりしないと、費用対効果が上がったとはいえません。RPAの導入により、その作業をおこなっていた従業員の処遇をあらかじめ決めておく必要があるといえるでしょう。
野良ロボットの発生を抑制する
野良ロボットとは、管理が行き届いていないRPAツールのことです。野良ロボットを放置し続けると、誤った処理を継続してしまったり、正常に動作せずに業務が止まってしまったり、さまざまな問題を引き起こします。特にデスクトップ型のRPAの場合、なし崩し的に導入していては、野良ロボットの発生を許しかねません。責任者を決めて、RPAの運用ルールを厳格化し、会社の側が管理することが重要です。
RPAを導入する手順
RPAの導入を成功させるためには、正しい手順を踏むことも重要です。いきなりRPAツールを導入するのではなく、焦らずに時間をかけることもときには重要になります。ここでは、中小企業がRPAの効果を最大化するための手順について解説します。
生産性が低い業務を洗い出す
まずは、自社の業務の中で、生産性が低い業務を見つけ出さなければなりません。しかし、多くの業務は、そこに無駄があったとしても当たり前のように続けられており、生産性が悪いことに気づくことができないかもしれません。たとえ無駄だと気づいていたとしても、その業務をおこなう従業員が、自分の仕事を守るために隠すこともあるかもしれません。このように、生産性が低い業務を捕捉することは簡単なことではないのです。
したがって、従業員と正しくコミュニケーションをとり、現場の協力を得ながら、生産性の低い業務を見つけ出すことが求められます。決して簡単ではないこの作業が、中小企業がRPA導入を成功させるための最初の一歩となるのです。
業務フローを正しく理解する
生産性が低い業務を見つけ出した後は、その業務の流れを詳細にまで把握する必要があります。その業務をおこなっている従業員の協力は欠かせません。業務フロー図を使って可視化することも重要になります。
また、いくら業務の流れを正確に把握できたとしても、RPAツールで自動化できるとは限りません。早い段階で評価版などを入手し、検証を繰り返すことも重要になります。
費用負担を軽減できるかどうか検討する
近年、国は中小企業の生産性向上に力を入れています。その中核をなすのが、補助金事業。IT導入補助金を筆頭に、ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金など、RPA導入に使える補助金は少なくありません。RPAを導入する前に、使える補助金があるかどうか必ず確認するようにしてください。補助金の種類によっては、1/3の負担でRPAツールを導入できることもあります。
RPAベンダーの協力を得る
情報システム部門がないことも多い中小企業の場合、自社のリソースだけでRPAの導入を進めることは困難であるといわざるを得ません。RPAベンダーの協力が欠かせないのです。ただ単に、ソフトウェアの提供を受けるだけではなく、インストールや設定に加え、設計や保守サポートなど、最大限のサポートが得られるようにしてください。講習会などを通じて、長期にわたりRPAツールが導入できるようにノウハウを吸収することも意識するとよいでしょう。
効果が高いRPAを導入するために
RPAの導入は決して簡単なことではありません。中小企業の場合は、その難易度はさらに高まると考えてよいでしょう。しかし、RPAを正しく導入すれば、中小企業でも生産性を高め、企業の競争力を強化し持続的な成長を果たすきっかけになります。ここでは、RPAの効果を高めるために、特に意識しておくべきことについて解説します。
RPAベンダーに丸投げしない
中小企業の場合、出入りの多い事務機器ベンダーなどの言いなりになり、ITツールの導入を進めてしまうことが少なくありません。ときには、RPAツールの導入が目的になり、本来の目的である生産性の向上がおざなりになることすらあります。
RPAの導入は手段であり、ベンダーはRPAツールを導入するための協力者です。主導権は、中小企業の側が持ち、RPAベンダーに丸投げしないようにして下さい。
RPAありきで業務効率化を進めない
いくらRPAが注目されているからといって、RPAツールありきで業務効率化を進めてはいけません。正しく現状業務を把握し、課題を明らかにできれば、RPAツール以外にも最適なITツールがあるかもしれません。RPAツールありきで業務効率化を進めてしまえば、業務効率化どころか現場が混乱し、生産性が低下することすらあり得ます。RPAツールは、数多くあるITツールの一部にすぎません。RPAの効力を過信しすぎることなく、業務の効率化向上に貢献できるかどうか、冷静に判断するようにして下さい。
従業員の理解を得る
RPAツールの導入は、ときに従業員の配置転換などが求められます。残業代の抑制は、従業員の給与の減少を招くかもしれません。このため、現場の従業員の痛みを伴うことを忘れてはいけません。RPAツールの導入は、従業員の協力なくして進めることはできないのです。
まずは、RPAツールの導入が会社にとってはなくてはならないことを理解してもらう必要があります。そのうえで、従業員の今後のキャリアについての不安を払しょくする必要があるでしょう。
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RPAツールは中小企業にこそ必要
大企業と比較し生産性が低い中小企業ですが、長らくその状態は放置されてきました。たとえ非効率でも、匠の技を駆使して丁寧で高品質を実現できれば、大企業に対する競争優位を築くことができたからです。しかし、深刻な人手不足に直面する中小企業も、生産性向上と無関係ではいられなくなりました。
RPAは、中小企業にとって救世主になる可能性を秘めているのです。だからといって、何の考えもなしにRPAの導入を進めていては、無駄な出費で終わりかねません。必要最低限の知識を持ち、正しい手順を踏んで、RPAの導入を進めるようにして下さい。
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