給与計算における社会保険料の種類
給与計算における社会保険料には、以下の5種類が存在します。
- 健康保険料:病気や事故に遭った際に適用
- 介護保険料:65歳以上の被保険者に介護が必要な場合適用
- 厚生年金保険料:高齢や障害によって年金を受け取る場合適用
- 雇用保険料:失業などに伴って適用
- 労災保険料:労災による被害に適用
このうち、労災保険料は雇用者のみ、それ以外は雇用者と被保険者の両方が負担します。
被保険者の所得税を計算する際に、労災保険料以外の保険料は控除対象になります。
給与計算における社会保険料の計算方法
給与計算における社会保険料の計算方法を種類ごとに見ていきましょう。
標準報酬月額から算出する
健康保険料と厚生年金保険料、介護保険料の3つの保険料は、以下の計算式により算出されます。
・標準報酬月額×保険料率÷2
計算式の最後に2で割るのは、雇用者と被保険者が半額を折半して支払うためです。
標準報酬月額とは給与の額を等級で区分したもので、4月~6月の給与の平均額からどの等級になるかを割り当てます。実際に標準報酬月額を求める際は、全国健康保険協会や日本年金機構のホームページで公開されている保険料額表を参照しましょう。
被保険者が労働の対価として受け取るほぼ全ての報酬が、標準報酬月額には含まれます。各種手当や年4回以上支払われる賞与も含まれるので気をつけましょう。年3回以下の賞与や、祝い金、退職手当など臨時に支払われるものは対象外です。
健康保険料
健康保険料は以下の式により算出します。
・標準報酬月額×健康保険料率÷2
この時に気をつけなければならないのが、健康保険料率は保険の運営団体や都道府県によって異なることです。
たとえば、北海道で全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している場合、平成31年3月の保険料率は10.31%です。一方、同じ条件でも東京であれば、保険料率は9.9%となっています。健康保険料の計算時には、会社が加入している健康保険や勤務地が所在する都道府県の保険料率を確認しましょう。
勤務地が東京都内で、保険料率9.9%で標準報酬月額が180,000円の場合、健康保険料は以下のように算出されます。
180,000円×9.9%÷2=8910円
雇用者と被保険者が8,910円ずつ折半して支払います。
厚生年金保険料
厚生年金保険料は以下の式により算出します。
・標準報酬月額×18.300%÷2
平成29年9月分以降は、保険料率は18.300%で固定されています。ただし、今後変更される可能性もあるため、厚生年金保険料の計算時には必ず確認しましょう。また厚生年金基金の加入者は、基金が定めた免除保険料率により保険料率が決まるので要注意です。
計算の例として、標準報酬月額が180,000円で厚生年金基金に加入していない場合、以下のように保険料が算出されます。
180,000円×18.300%÷2=16,470円
介護保険料
被保険者が40~64歳の場合は介護保険料を納めます。計算式は以下の通りです。
・標準報酬月額×介護保険料率÷2
介護保険料率は今後変更される可能性もあるので気をつけましょう。
たとえば、協会けんぽ加入で標準報酬月額が180,000円の場合、平成31年3月からは全国一律1.73%の保険料率となるため、以下のように介護保険料を算出します。
180,000円×1.73%÷2=1,557円
支給総額から算出する
雇用保険料と労災保険料は標準報酬月額ではなく、被保険者への支給総額から算出します。また労災保険料が他の保険料と異なるのは、雇用者が全額負担する点です。
では、それぞれの計算方法を見ていきましょう。
雇用保険料
雇用保険料は以下の式により算出します。
給与額あるいは賞与額×雇用保険料率
一般事業における雇用保険料率は、平成31年度は被保険者負担が0.3%、雇用者負担が0.6%となっています。ただし農林水産や建設など、一部の事業は保険料率が異なるので要注意です。雇用保険料率は厚生労働省が発表しているので確認しておきましょう。
一般事業で給与が200,000円の場合、その月の雇用保険料は以下のように算出されます。
被保険者:200,000円×0.3%=600円
雇用者:200,000円×0.6%=1,200円
労災保険料
労災保険料は以下の式により算出します。
・年間の賃金総額×労災保険料率
労災保険料率は厚生労働省が業種別に定めているので確認しましょう。たとえば、出版業では0.25%、石炭鉱業では8.8%など、業務の危険度に応じて保険料率が変わります。
また、労災保険料は雇用者の全額負担なので、被保険者ごとに支払い手続きをする必要はありません。従業員全員に支払った給与総額と保険料率から算出できます。
出版業で従業員が3人、平均給与200,000円、ボーナスが1人600,000円の場合、以下のようになります。
(200,000円×12カ月+600,000円)×3人×0.25%=22,500円
給与計算において社会保険料を計算する際の注意点
給与計算において社会保険料を計算する際、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。
賞与も社会保険の対象になる
賞与も社会保険料の算出対象になります。
この場合の賞与とは、支給回数が年に3回以下のものを指します。4回以上支給する場合は、標準報酬月額の中に含まれるため、別途計算する必要はありません。
年3回以下の賞与では、以下のように保険料を算出します。
・標準賞与額×各種保険料率
標準賞与額とは、賞与総額の1,000円未満の端数を切り捨てた額になります。
標準賞与額には上限があり健康保険では年度累計で573万円、厚生年金保険では1ヶ月あたり150万円です。
保険料率が変更されることがある
保険料率は改定されることがあります。
たとえば、全国健康保険協会における健康保険料率は、平成30年度と31年度で変更されています。また、健康保険料率がどの程度変更されたかは都道府県によってさまざまです。
そのため、社会保険料を計算する際には必ずその時点での保険料率を確認するようにしましょう。
社会保険料について理解し、正確な給与計算をしましょう
社会保険料を計算するのには、どのような社会保険料が存在するのかを知る必要があります。
社会保険料とは
社会保険料は、標準報酬月額ともいい毎年4月から6月の給与額面の平均をベースに計算します。新入社員の場合は、初任給の給与額面になり、時給や日給は入社前月に時給や日給で給与受け取った従業員の平均額を元にします。
計算した金額を報酬月額といいます。標準報酬月額は、報酬月額を決められた等級に当てはめ決定します。標準報酬月額や、標準報酬月額ごとに天引きスべき社会保険料の金額は全国健康保険協会のサイトから確認できます。
参照:都道府県毎の保険料額表 全国健康保険協会
社会保険料の種類
社会保険料には以下の5種類があります。
- 健康保険料
- 介護保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 労災保険料
上の3つは標準報酬月額、下の2つは支給総額から算出します。労災保険料は雇用者が全額負担します。
社会保険料を計算する時には以下のことに気をつけましょう。
- 賞与も社会保険料の算出対象
- 保険料率は変更されることがある
正確な給与計算のために、上記の基本をしっかり押さえて間違いのない手続きをしてください。
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