給与計算における厚生年金保険料の計算方法
厚生年金保険料は社会保険の1種で、以下の計算式で算出します。
厚生年金保険料=標準報酬月額あるいは標準賞与額×保険料率
では、標準報酬月額と標準賞与額を算出する方法をそれぞれ見ていきましょう。
給与:標準報酬月額より算出する
報酬とは、会社員が毎月受け取るお金のことです。具体的には、基本給に各種手当(残業手当、通勤手当など)を含めたものを指します。逆に祝い金や見舞金など、臨時発生する収入は報酬に該当しません。そして標準報酬月額とは、その人が受け取る報酬月額の標準額のことです。
毎年4~6月の3カ月間の平均給与額を基に定めます。この平均額が一定の幅で区分された等級に当てはめられ、その等級で定められた額が標準報酬月額となります。等級の区分は日本年金機構が発表しているため、それを見ながら算出しましょう。
賞与:標準賞与額より算出する
賞与とは、3ヶ月以上間を空けて支給されるお金です。また、標準賞与額とは受け取った賞与額から1,000円未満を切り捨てた数値のことです。
たとえば、312,500円の賞与を受け取った場合、標準賞与額は312,000円となります。標準報酬月額のように、等級表を見て算出する必要はありません。
また、標準賞与額の上限は1か月あたり150万円です。それ以上の金額が支給されても、標準賞与額は150万円として扱われます。
そもそも厚生年金保険とは
厚生年金保険の概要を見ていきましょう。
国民年金に上乗せして受け取るための公的年金制度
一般的に、年金は国民年金と厚生年金保険、企業年金の3種類に大別されます。そのうち、多くの人が加入しているのが、国民年金と厚生年金保険です。
国民年金は、20歳以上60歳未満の国民全員が加入しなければなりません。一部免除などもありますが、未加入者はいないことになります。
一方、厚生年金保険は会社員などを対象とした年金制度で、雇用主に加入を義務付けていますが、個人事業主などは加入する必要がありません。国民年金に上乗せする形で納付し、受け取ることになります。保険料は雇用主と加入者が折半して納付します。個人事業主でも、一部の条件を満たせば加入できます。
厚生年金基金は企業独自の年金
厚生年金保険と似た言葉に、厚生年金基金というものがあります。名前は似ていますが、両者は全く異なるものです。具体的な違いは、以下のとおりです。
- 生年金保険は国、厚生年金基金は法人が運営
- 厚生年金保険は会社員に加入義務があるが、厚生年金基金にはない
平成26年4月を境に、厚生年金基金は新設できなくなりました。バブル崩壊以降、運用に必要な利回りが得られなくなったためです。平成31年以降も現存している厚生年金基金も解散を求められています。
厚生年金保険料計算時の注意点
厚生年金保険料を計算する際、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
給与が変動すると、保険料も変動する
厚生年金保険の計算における給与は、4~6月の平均給与から求めた標準報酬月額を利用します。つまり、1年のうちこの期間だけ特に収入が多い、あるいは少ない場合は、適切な保険料を算出できません。
そのため、4~6月以外でも2等級以上の差が生じるほど給与が変動すれば、随時改定を行います。等級が変動するため、それに伴って保険料も変動します。昇給や手当体系の変化、また繁忙期・閑散期による給与の変化時には注意しましょう。
パート・アルバイトにも適用される
パートやアルバイトでも、以下の2つのいずれかを満たした場合は厚生年金保険の加入対象となります。
- 1.労働日数・労働時間が常時雇用者の4分の3以上
- 2.下記の5点を満たしている
- ・1週間の所定労働時間が20時間以上である
- ・月額賃金が88,000円以上である
- ・1年以上の勤務が見込まれる
- ・被保険者数が501人以上いる企業の従業員である
- ・学生ではない
給与計算における保険料の計算方法は、通常の会社員の場合と同じです。
これらの条件を満たすパート・アルバイトを厚生年金保険に加入させることは義務です。未加入が発覚した場合、さかのぼって保険料を支払うことになるため気をつけましょう。
産休中の厚生年金保険料
厚生年金に加入している会社員や公務員は、産休や育休中は厚生年金の支払いが免除されます。
ここでいう産休とは産前産後休業期間を指し、産前42日、産後56日のうち妊娠または出産のために労務に従事しなかった期間のことを指します。また、育休とは育児休業等期間のことを指し、満3歳未満の子供を養育するための育児休業等の期間を指します。
厚生年金保険料の免除を受けるには、事業主を通じて年金事務所に「産前産後休業取得者申出書」もしくは「育児休業取得者申出書」を提出する必要があります。
職場復帰後は、再び厚生年金保険料を支払うことになります。復帰後に時短勤務などによって標準報酬月額が下がっても、子供が3歳までの間であれば、受給額が休業前に比べて下がらない措置もあります。
給与計算に困ったら専門家にアウトソースを!
給与計算アウトソーシングのサービス比較は下記のサイトから参照ください。
※法人向けサービス比較、資料請求サイト「Bizトレンド」へ移動します。
https://biz-trend.jp/kyuyo/outsourcing/