「日本一働きたい会社」って、どんな会社だろう? ワクワクしながら訪れたのは、不動産ポータルサイト『LIFULL HOME'S』で有名なLIFULLさん。Great Place to Work®の「働きがいのある会社ランキング」で7年連続ベストカンパニー選出。リンクアンドモチベーションの「ベストモチベーションカンパニーアワード2017」でも1位。「社員が意欲をもって働いている企業」という名声を博しています。今回は、同社代表の井上さんに、社員のモチベーションを高く維持する秘訣を聞いてみました!

LIFULL 代表取締役社長 井上 高志さん
(所属・役職は取材当時)

いちばんパワフルなエンジンは「内発的動機付け」

──LIFULLさんは「日本一働きたい会社」を目指していますよね! どうやってその理想を実現しようとしているのですか。

一人ひとりの社員の心の中から湧いてくる「内発的動機付け」を尊重することで、「日本一働きたい会社」に近づくと考えています。内発的動機付けとは、「こんなことをやりたい」「こんなふうになりたい」といった、自発的な意思や情熱のことです。どんなことに取り組むにせよ、いちばんパワフルなエンジンになります。これが起動すれば、誰に指示されることなく、社員たちが自主的に勉強して、自主的に挑戦して、自主的に自己成長していくのです。

──そうなのでしょうか…。上司から指示されないと働かない社員のほうが多い気がします。

いえいえ、それは間違い。たとえば「君の考えなんか聞いていない。私の言うことだけをやればいいんだ。そうすれば成果が出るから」「私の期待に応えてくれたら、君を早々に年収1500万円の部長にしてあげるよ」といってハッパをかけるやり方は、「外発的」な動機付けです。どうですか、やる気が出そうですか。

──確かに、「やらされている」感じがしますね。

そうでしょう。外発的動機付けでは、モチベーションを維持しづらい。このような状態だと生産性も上がらず、結果として成果も出にくい。負の連鎖を迎えてしまうのです。

会社は社員の「やる気ブースター」

──なるほど。そんな負の連鎖に陥らないために、LIFULLさんではどんな取り組みをしていますか。

たくさんあります。一例を挙げれば、「キャリアデザイン」という、社員の「やりたいこと」をかなえるための仕組みがあります。まず、社員に将来のキャリアビジョンを描いてもらいます。そこから逆算して、5年後、3年後、半年後にどんなことをやっていきたいのかを考え、「キャリアデザインシート」に記入してもらい、半年ごとに提出。そのシートを踏まえて、上長との面談を実施します。

たとえば「いまは営業だけど将来的にはプロダクトを自分でつくっていきたい。だから、ものづくりにかかわれる部門に異動したい」というような希望があれば、その異動希望をかなえられるように動いていきます。「この部署での仕事が気に入っているから2~3年は異動させないでください」「会社の育成方針に任せるので、いろんな部署にローテーションしてほしい」など、さまざまな希望が出てきますが、原則として実現するように会社は支援します。

──本人の希望と、会社の組織上の要請が異なってしまうことがあるのではないでしょうか。たとえば本人は異動したいけれど、直属の上長は「いま、君に抜けられたら、うちのチームの成績はガタ落ち。絶対にダメ」と譲らないということも考えられますよね。

ありますよ。その場合でも、原則として本人の希望を優先します。上司との面談で夢や希望を伝えたのに「いやいや、なに言っているんだ、そんな考えは許さない」と言って受け止めなかったら、その社員は転職してしまいますよね。会社としては、人材が社外に転職するよりは、社内で「転職」してもらったほうがいいので、「社内での異動希望は最大限、聞き入れる」という体制にしました。

制度をスタートさせた当初は、マネジメント層に混乱もありました。それでも5年、10年と取り組む中で、文化として定着していきました。「チームから抜けられては困る」というメンバーが異動希望を出してきたとき、「ダメ」というのではなく、「わかった。希望を尊重しよう。ただ、いまの部署で完遂できていないプロジェクトがあるから、それを終わらせてからにしよう」といった具合に、本人の希望と会社の事情をすりあわせています。

──それでも、優先されるのは本人の希望なのですね。

そうです。すべての根本にあるのは「君はどうしたい?」ということです。まず、一人ひとりの社員の「こうしたい」という気持ちがある。その気持ちに火をつけて、燃え上がるように支援するのが会社の役割です。いわば、社員のやる気のブースターですね。

社員が独立したいなら本気で支援する

──なるほど! でも、反対に、「君たちががんばることで会社の成長を加速させろ」などと、社員を会社のブースターと位置づけている経営者が多いと思います。

そうですね。上に立つ人間は、良くも悪くも自分自身が経験したことを社員に伝えてしまうものですから。私の場合、新卒入社した会社で、内発的動機付けを尊重してもらえる環境に身を置かせてもらった。だから、その経験を踏まえて、社員に向き合う姿勢を確立させたのです。

──どんな環境だったのでしょう。

優秀な成績をおさめている社員でも、独立するのを止めない企業文化がありました。私はリクルートコスモス(現:コスモスイニシア)に4年間勤め、5年目には「そろそろ時期なので、独立します」と伝えたところ、あっさり認めてもらえました。高い成績をおさめて、会社から私がもらったもの以上のリターンを会社に提供したという自覚がありましたね。「社員と会社は50:50(フィフティフィフティ)」という意識が、私にも会社側にもあったのだと思います。

だからLIFULLでも、同じような環境を社員に提供したい。「将来独立したいんです」という人材に対して、本当にその実力がありそうで、パッションが強ければ「うん、わかった。がんばれ」と本気で応援して、送り出しているんですよ。

「君はなにをしたいの?」「なにを実現したいの?」

──すごい。そもそも採用面接で「将来、独立したい」なんて言ったら、「ウチの会社は腰かけなのか!」と怒られて、不採用になるケースがほとんどだと思っていました。

当社は違いますね。私たちの人材の採用基準を紹介しましょう。

  1. 組織ビジョンに共感しているか(ビジョンフィット)
  2. 企業文化にフィットしているか(カルチャーフィット)
  3. 将来成長しそうなポテンシャルやパッションを秘めているのか(ポテンシャル)
  4. スキルがフィットしているのか(スキルフィット)

以上の4項目を、この順番で重要視しています。これは、新卒でも中途でも同じです。

たとえば、「独立したい」という人の中には「社会貢献したいから、社会問題を解決する会社を自分で立ち上げたい」という人も少なからずいます。こういう人は当社の「利他主義」という社是にフィットします。そして独立という目標のために努力を惜しまないでしょうから、成長ポテンシャルは高い。そんな人材であれば、高い確率で採用されるわけです。

──4つの採用基準のうち「スキル」が重要度で最後に来るとは驚きです。

そうです。ここでも大事なことは「君は本心ではなにをしたいの?」「仕事を通じてなにを実現したいの?」という本人の気持ちです。それを、採用面接などを通じて徹底的にヒアリングします。

お金、地位、名誉、権限などが欲しい人は、私たちの組織ビジョンにも企業文化にもフィットしません。手っ取り早く促成栽培的に結果を出そうとして、お客さまの利益にならない、社会のためにならないことをしてしまう。そんな、当社が掲げる「利他主義」に反する人は、どんなにスキルがあったとしても、私たちの会社では浮いてしまい、長続きしないんですよ。そんな人に入ってもらうのは、どちらにとっても不幸かもしれません。

「利他主義」は自己犠牲ではない

──確かに。では、「働き方改革」の観点で質問させてください。「利他主義」という社是はすばらしいと思いますが、これを追求していくと、お客さまの都合にあわせて働くことになってしまい、長時間労働を助長しませんか。「少しでもいい提案をするために、徹夜で企画書をつくる」とか…。

それは違います。まず、「利他主義」とは「自己犠牲のもと、世のため人のためにつくしなさい」という意味ではありません。「自利利他」という四字熟語がもとになっている語句で、「利他=自分の利益」という考え方です。「世のため人のためにものごとに取り組んだ瞬間に、自分の利になっている」ということです。

たとえば、電車で妊婦さんに席をゆずったとしましょう。お金がもらえるわけじゃないけれど、勇気を出して行動して、お礼に相手からニコッと会釈してもらった。自分のハートがフワッと温かくなっている。それが「自利」、自分の利益です。まさにそれが、私たちが唱える利他主義のイメージに近い感覚です。

──なるほど。「自己犠牲をしている」と思っている時点で、利他主義ではないわけですね。

はい。「お客さまのためにこんな長く働かなきゃいけないなんて、つらいよな」と思っている時点で、利他主義ではないですよね。お客さまのためになることを考える。その行為自体が、楽しくて仕方がない。その楽しさが自利であり、その状態が利他主義の実践なのです。

もっとも、仕事の中で、「お客さまのために」と頑張る行為が長時間労働になることはありえます。それが社員にとって苦痛でなくても、健康面や法律面での基準に反することがあってはいけない。仕組み化やITの活用といった施策によって、経営が解決していく必要があります。

──なるほど! 「利他主義」という理念が根本にあり、それに共感する人材を厳選して採用しているから、みなさん仕事に高い意欲をもって働いているわけですね。LIFULLさんが「働きたい会社」である理由の一端がわかった気がします。インタビューの後編では、労働時間の短縮についての井上さんの考え方や、ITを活用した工夫について熱く語っていただきます!

↓↓インタビュー後編はコチラ↓↓
【「“会社の求心力”がない未来を見据えて」 日本一働きたい会社の働き方改革(後編)】

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