こんにちは! 『ITトレンドスタイル』ライターのあやかです。ただいま、東京・虎ノ門ヒルズ森タワーに潜入中! 2018年9月6日から2日間にわたって開催されている「Future of Work Japan 2018」を取材しているのです。

「これからの経営と働き方について考えるための視点、そして出会いを提供し、現状をブレークスルーするために必要なイノベーション・変革の種を見つける機会を創出します」というビズリーチさん主催のイベント。セッションは40もあるのですが、対談形式のものが多いので、さまざまな視点を一気に吸収できます。おっ! 次は「働きがい」についてのセッションです。

「私の仕事は部長です」という大企業病

「働きがいの伝え方 ~ビジネスマトリクスとモチベーションから考える大企業エンゲージメント~」というセッションに登壇したのは、NTTコムウェア株式会社 相談役の海野忍さんと、株式会社PR Table 代表取締役社長の大堀航さん。

NTTコムウェア株式会社 相談役 海野 忍さん
(所属・役職は取材当時)

NTTコムウェアさんは、企業のビジネス全般を支えるITインフラサービスを提供しています。資本金200億円、売上高1,727億円(2018年3月期)、社員数6,315名(2018年3月末)という、押しも押されもしない大企業です。

一方、大堀さんが代表をつとめるPR Tableさんは「『わが社』を伝える新しいPRソリューション」をキャッチコピーに、企業がストーリー性の高いコンテンツを製作できるプラットフォームを武器として、企業のPR活動をサポートしている会社です。

株式会社PR Table 代表取締役社長 大堀 航さん
(所属・役職は取材当時)

海野さんのご経験をもとに、大企業ならではの課題と、その解決法を紐解いていくというセッション。対談はいきなり、海野さんの「私は毎年大勢入ってくる当社の新入社員に『君たち、不幸だね』と言うんです」という衝撃的な告白からスタート。そ、そんな…。

海野さん(以下、敬称略):なぜならこの大勢いる中で社長になるのは難しいから。ただし、大きな企業でしかできないこともある。社会に役立つ仕事をするためには一人ひとりの力が必要なんだよ、と話すのです。

なるほど、そういう意味なんですね。みなさんが力を合わせて、大企業だからこそできる、大規模なプロジェクトを推進しているんですね! と、思ったら、またしても衝撃的な発言が!

海野:しかしね、これが管理職になってくると『君の仕事は何?』『上司の命令に従うことです』、『君は何ができるの?』『部長ならできます』なんていうことを真面目に言ってくるんです。すなわち自分の仕事が何なのか、わからない。これが大企業病なんです

おぉ…。のっけからすごく刺激的なお話! 確かに、大企業は社員が多い分、つい自分の仕事を見失っちゃう…そんなこともありそうですよね。

働きがいをつくる①『責任と権限の明確化』

では、その解決策とは…?

海野:ひとつは責任と権限を明確にすること。つまり会社全体で誰がどんな業務をしているのか、見える化をするのです。そしてもうひとつはコミュニケーションを充実させること。相手への理解を深めることですね。

大堀さん(以下、敬称略):「業務全体の見える化」と「お互いの立場の理解」との両輪を回していくのが大切ですよね。

確かに、このどちらが欠けても業務ってうまく流れていかない気がします。でも、具体的にはどうやって業務の見える化、そしてコミュニケーションの充実をはかっていけばいいんだろう…?

まず「業務の見える化」から。これは、ルールを明確化することで実現可能なんだそうです。つまり、組織のハード面ともいうべき領域に解決策があります。海野さんも、「大切なのは、責任と権限を細かく明確化すること。そうすることで自分の立ち位置がわかり、自分がやるべきことが把握できるからです」とおっしゃっていました!

そのための方法として、海野さんが提唱するのが「ビジネスマトリクス」。横軸を「注力顧客責任者」(WHO)、縦軸を「得意技責任者」(WHAT)とし、商品・サービスごとに誰がどこにポジショニングしているかを見ます。確かにこれを使えば、誰がどの業務に携わっているか、また、どこが足りていないのかわかりますよね! 縦軸と横軸の交わる、どこのセル(BCL=Business Cell)にいるかで「自分の立ち位置、すなわち自分のやるべき仕事」が見えてきます。

働きがいをつくる②『コミュニケーションの充実』

すばらしい! これで大企業病も完治するのかな…?

海野:いいえ、自分の立ち位置を把握してもそれだけでは足りないんです。むしろ大企業病のひとつ、「タコつぼ化」が進行してしまう。つまり、自分の組織のことしか知らん、他の組織のことは知らん、という。これは大変危険なことです。その「タコつぼ化」を解決する方策こそ、コミュニケーションの充実。つまり、組織のソフト面の領域に属する解決策です。ビジネスマトリクスの縦軸、横軸を越えて、まずはコミュニケーションすることが大事なんです。

とはいえ、なかなか難しいですよね?

海野:上手なコミュニケーションのコツは2つ。まず人の話を聞くこと。これが一番大切です。相手のことを知ってから、話すほうがスムーズにいくんですよね。よく『話し上手は聞き上手』と言いますが、大切なことだと思います。

シンプルかつ基本的なことだけど、やっぱり大切なんだなぁ。

海野:そして、もうひとつ大切なのは、「行動しやすい言葉」で伝えることです。よくある上司の例で「この商品を売ってこい」みたいなレベル1の話か、「この商品の◯◯の特徴を、◯◯の属性をもつ顧客が◯◯の状況にあるときに、◯◯という言葉をつかって説明して売ってこい」みたいなレベル10の話をするんですよ(笑)。言いすぎても言わなさすぎてもダメだ、ということです。

確かに言われなさすぎでは伝わってこないし、言われすぎてもムッとしちゃうかも(汗)。海野さんが『Actionability(可行動性)』でレベル分けして説明していたのがわかりやすい!

    【Actionability(可行動性)】
    =それを読んで実際に行動に結び付けられるかどうかの度合い

  • レベル8:懇親会にワインは欠かすな、地下鉄はこのルートが早い
  • レベル7:セミナーは懇親会をつけろ、顧客訪問にタクシーを使うな
  • レベル6:この商品の紹介セミナーを開催せよ、週に3回はこの顧客に行け
  • レベル5:この商品を売れ、この顧客に売れ
  • レベル4:売上を上げろ、売上高営業利益率を上げろ
  • レベル3:営業力を上げろ、提案力を上げろ
  • レベル2:足腰を鍛えろ、時代を先取りせよ
  • レベル1:よい会社になろう、儲かるビジネスをやれ

海野さんによれば、「Actionabilityレベルは高すぎても低すぎてもよくない。さらに付け加えるなら、相手の言葉を否定せずに、まず肯定して、ほめることも有効。そして、『ここぞ!』というときに、『えいや!』っと向かわせることも重要」なんだそうです。ふむふむ。

必要なのは「一休さんタイプの上司」

コミュニケーションのやり方を、いちばん習得しなければいけないのは、部下をマネジメントする上司です。その上司の役割について、海野さんは「部下がやりたくなるメカニズムをつくり出すこと」と定義しています。つまり、部下が持ってるスキルで、仕事を完了させられる環境をつくり出すことなんです。

海野さんいわく、マネジメントには2種類あるのだそう。

  • 水戸黄門タイプ=権力で言うことを聞かせる
  • 一休さんタイプ=とんちのような機知をはたらかせ、納得させる

「どちらが良いか?」といえば、それはやはり後者。「ただ、とても難しい!」と海野さん自身が実感しているといいます。「でも、ぜひチャレンジしてほしいなと思います。なぜならば、水戸黄門タイプでは、その権力者がいなくなった瞬間にまたその組織はマネジメントのない状態に戻ってしまうからなんです」という海野さんの言葉には熱がこもっていました!

海野:残念ながら、サラリーマンはやらされ仕事が多くなってしまう。そうすると楽しくない。部下が楽しんで、なおかつ自分から仕事をするにはどうすればいいか? それは「仕事の意義」を教えることなんです。「これをしたら社会のためになる」という明確な意義を伝えて、考えさせることがコツだと思っています。最悪なのは、「つべこべ言わずにこれをやれ」と言うことですね。

「この仕事が何につながるのか」を伝えよう

最後に、海野さんからは「日本の未来について悲観する傾向もありますが、私は日本の産業はこの先も伸びると信じています。より良い組織づくりをして、仕事を頑張ってほしいと思っています!」というエールもいただき、なんだか元気が出てきちゃいました…!

私はよく「原稿書きます!」「取材に行って来ます!」と編集長に報告したとき、「で、それは何になるんだ?」と聞かれます。どんな読者に、何を伝えるための取材・原稿執筆なのか。書き上げた記事を読んだ人に、どんな影響を与えたいのか。その影響を通じて、世の中にどんな変化をもたらしたいのか。

そんな「この仕事が何につながるのか?」というのがわかるだけでも、仕事のモチベーションって変わりそうですよね! 「で、それは何になるんだ?」っていうのは、編集長の単なる口グセだと思っていたんですが、大事なことを私にわからせよう、気づかせようとして言ってくれていたんだなぁ。感謝の気持ちでいっぱいになりつつ、次のセッションを待つライターあやかでした!

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