こんにちは! 『ITトレンドスタイル』ライターのあやかです。2018年9月7日。虎ノ門ヒルズ森タワーにいます。ビズリーチさん主催の「Future of Work Japan 2018」も2日目、いよいよ佳境に入った感があります!

「未来の経営と働き方を一緒に考え、創っていく」とのテーマで、広い会場のあちこちで魅力のあるセッションが開催されています。著名な企業さんの取り組みの紹介であったり、革新的なサービスを提供している企業さんの講演だったり。身体が2つ欲しいくらいです…! くぅっ!

そんな中、「これはぜひとも参加しなくては!」と勇んで駆けつけたのが、 「ビジネス変革を加速させるための働き方改革NEXT」と題されたセッション。登壇するのは、日本マイクロソフト株式会社 代表取締役社長の平野拓也さんです。

日本マイクロソフト株式会社 代表取締役 社長 平野 拓也さん
(所属・役職は取材当時)

Word、Excelなど、数々のソフトウェアを世に送り出し、「現代世界の潮流をつくってきた」といっても過言ではないマイクロソフトさん。そんなIT界の世界的巨人が近年、力を入れて取り組んできたのが、働き方改革なんだとか!

グローバルで年間約12兆円の売上高! 1997年から現在までの20年以上、世界の時価総額ランキングTOP5に留まり続けています。そんなマイクロソフトの日本法人である日本マイクロソフトさんの働き方改革の内実が聞けるなんて!

“囲い込み”から“オープン化”へと大転換

今回、講演してくださった平野さんは、2005年に日本マイクロソフトへ入社。その後、2011年から3年間、マイクロソフトの中東欧地域で25ヵ国を統括するゼネラルマネージャーを務めたのだそうです。ちょうどその2011年から、日本マイクロソフトでは日本独自で働き方改革を推進することに。日本で政府が旗を振って本格的に働き方改革がスタートしたのは2016年。その5年も前に、マイクロソフトさんは改革を始めていたんですね。

平野さんは2015年から日本マイクロソフトの社長を務めています。中東欧地域のゼネラルマネージャーとして推進した改革を日本でもさらに促進。現在では、蓄積された改革のノウハウを活かし、顧客企業のデジタルトランスフォーメーション化を支援しているのだそうです。

「すべてのデスクとすべての家庭に1台のコンピューターを」という創業者ビル・ゲイツさんのミッションに沿って世界を制覇したマイクロソフト。しかしながら、「社長も初代ゲイツから3代目になり、さまざまなリフレッシュが必要だった」と平野さんは話します。

そのリフレッシュとは、“囲い込み”から“オープン化”への大変革。

平野さん(以下、敬称略):自分たちで言うのもおかしいかもしれませんが、お客さまがWindowsの世界へいったん入り込むと、そこから出られないような仕組みをつくってしまったんです。

うーん、確かに以前は「マイクロソフトのプロダクトしか使えないサービスやソフトウェア」が多かったと思います。

ところが、現在の3代目社長が「世界の潮流はどうなっているのか?」という自問をしたところ、たどり着いた答えは「オープン化」。同時に、「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるように」というミッションを掲げ、メッセージを社内外に発したそうです。それは、Windowsを使っている人だけじゃなくて、オープンソースや他のテクノロジーを使っている人や組織も対象です。

平野:マイクロソフトにとっては一大事なわけです。これまでWindows製品を販売していたのに、競合と呼ばれる会社とも協業して、新しく掲げたミッションを遂行するのですから。

いまでは、マイクロソフトが社内で使っているクラウドコンピューティングの4割以上は、マイクロソフト以外のプラットフォームを使っているのだそう。でも、そうなるまでには、大変な苦労がありました!

社長のTシャツに書かれたメッセージの意味

平野:あらゆる面において大胆な決断をして変革を行いました。そのひとつがオープンソースの活用です。現在の社長は、『I LOVE OPEN SOURCE』と書かれたTシャツを着て、キャンバスを歩いています。前の社長たちでは考えられなかったことです。

お客さまの“囲い込み”をはかる事業戦略は、いつしか社内文化にも影響をおよぼしていました。同じマイクロソフト社員なのに情報を共有しようとしなかったり、ほかの部署が保有する情報のデータベースにログインする際に10回も15回もログインを繰り返さなくてはいけなかったり…。社内でも“囲い込み”が横行していたんだそうです。

平野:ビル・ゲイツは社内のことは細かいことまですべて把握していました。それをマネて、自分の部門の情報をすべて把握しようとするミニ・ゲイツが生まれていたんです。

この文化を徹底的に変えるため、開発陣の評価制度も変更したんだとか。「サービスをお客さまに使っていただく」ことを評価の軸にしたことで、エンジニアが頻繁にお客さまのニーズをヒアリングするようになったんだそうです。

平野:組織文化が大きく変わったので、同調する社員もいれば、離れた社員もいました。しかし、かまわずに改革を推進したんです。

「徹底的に変えよう!」というトップの意識を強く感じますね…!

「ホウ・レン・ソウ」はしなくてもいい!?

リーダーシップの定義も変えました。管理職の役割は次の5つ。

    ▼管理職の5つの役割

  • 物事を明瞭にする(「成功の定義は何か?」など)
  • 職場にエネルギーをつくる
  • 成功に導く(結果を出す)
  • 安心できる環境を醸成する(失敗しても、とがめない)
  • なぜ仕事をするのか、目的を明確にする

このようなリーダーシップのもとで、部下からの「ホウ・レン・ソウ」は撤廃しているのだとか。これは上司が部下の業務の細かいところまで知ろうとする、これまでの文化を変えて、ものごとを速く進めるためなんだそうです。

うわぁ、私も編集長に「ホウ・レン・ソウ」しなくていいなら、ずいぶん仕事が早く進みそうだけど…。上司の知らないところでものごとを進めてしまうのは、やっぱり不安だけどなぁ…。

「これまでの古い働き方にとらわれることなく、『いつでも・どこでも・誰とでも』をコンセプトに、日本マイクロソフトの働き方のデザインをしています」と平野さん。「早く理解して、早くアクションをする」ために、「アイディア出し」「問題解決」以外をテーマにする社内ミーティングは廃止。また、ミーティング時間は30分を標準に。制限。うーん、徹底しています。

平野:「早く決めて、早くやる」。オフィスでそれができるようであれば、オフィスで。そうすることで在宅で仕事ができて生産性が担保できるんだったら、在宅で。というように柔軟性を持ってテレワークも推進しています。

さすが、先進的! でも、それでいてフルリモートで仕事をする人はほとんどいないんだそうです。

平野:フェイストゥーフェイスに勝るコミュニケーションはない、という共通理解があるからなんです。チャットやメールでコミュニケーション量が増えているおかげで、素早いアクションを取ることができていますが、ツールだけあってもダメなんです。

やはりアナログとデジタルの融合が大切なんですね!

AIが「義理で会議していませんか?」と指摘

平野:そのほかにも、ワークライフバランスならぬ「ワークライフチョイス」ができる環境を整えました。たとえば子育てや介護、学び直しなどに直面した際、何の罪悪感もなく誰もが、いちばん適した働き方を「チョイス」できる。結果としてコミットメントを持って業務に取り組むことができると思っています。

これにより、6週間取得できる男性の育休休暇の取得率が、6~7割に達しているんだそうです。それでいて仕事に支障は出ていないんだとか。ステキですね!

また、AIを活用して、社員に「働き方に気づき」を与えることも行っているんだそうです。「誰とビジネスでコラボレートしている時間が長いか」「メールごとの送った相手の開封率」など、さまざまなデータからAIが報告書を作成。その結果「義理でミーティングをしていませんか?」といった指摘をAIがしてくるんだそうです。私、絶対、編集長とのミーティングについて指摘されちゃうな (笑)。次世代感、ありますよね~!

平野:「上司に怒られるから行動を変える」ではなく、自分で「どうすれば良いか?」という気づきにつながるのがAIのテクノロジーなのだと思います。

た、たしかに…!!

「マイクロソフトが目指すのは、人間の創造性を拡張すること。エンタープライズソリューションを軸により多くのことを実践する手助けをしていきたいと思っています」と平野さんは締めくくります。日本マイクロソフトさんが自ら実践した改革の経験が、ほかの会社への支援で活かされていきそうですね!

デジタルとアナログのバランスのとり方が重要

最先端を行くITの超巨大企業である、日本マイクロソフトさん。ベンチャー企業的な社風をもち、米国流の合理的な考え方をもち、課題解決に使える最先端ITを開発する能力をもっている──。当然、改革なんか必要ない、先進的な働き方をすでに実現できていると思い込んでいました。

でも、痛みを伴いつつも、劇的な働き方改革を推進していたんですね。その結果としての同社の働き方は、参考にできるところが多そうです。とくに、上司と部下の関係性。「ホウ・レン・ソウ」をなくしてスピーディにものごとを進めていく一方で、フェイストゥーフェイスのコミュニケーションを大事にしているといった、デジタルとアナログのバランスのとり方は、とても斬新で興味深いものでした!

私もさっそく、編集長とアナログなコミュニケーションをとってみようかな? 「日本マイクロソフトさんのセッション、終了しました!」というメールを送信するのをやめて、できるだけ早く帰社しよう。そして直接、今日の学びを伝えたい! なんだか急に熱く語りたくなってきてしまった、ライターのあやかでした!

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