こんにちは! 『ITトレンドスタイル』ライターのあやかです。現在、「Future of Work Japan 2018」への潜入取材中です。虎ノ門ヒルズ森タワーで2018年9月6日・7日に開催された、このイベントも終盤に差し掛かってまいりました。本当に勉強になるようなセッションが多くて、この2日間で脳が活性化されたような気がします。いまなら記事を何本だって書けちゃいそう…!

なんてハイテンションな気持ちでいたら、なんだか周囲も熱量高め? 実は、最終セッションの登壇者は、RIZAPグループ株式会社 代表取締役の松本晃さん!

RIZAPグループ株式会社 代表取締役 (元 カルビー株式会社 代表取締役会長兼CEO) 松本 晃さん
(所属・役職は取材当時)

松本さんといえば、 元 カルビー株式会社 代表取締役会長 兼 CEO。就任以来、9期連続増収増益を達成した立役者です。「創業者」「世襲」「社内出世」のどのパターンでもなく、大株主から他社での経営の実績をかわれて社長に就任した、日本では有数のプロ経営者の成功例として知られています。

その松本さんが2018年6月20日に開かれたカルビーの株主総会で正式に退任。直後の6月24日にRIZAPの代表取締役に就任という早業でした。新進気鋭の急成長企業へ転身したばかりの「経営の達人」が、働き方改革について、どんなお話をされるのでしょうか? 私だけでなく、会場全体が期待に包まれているのがわかります!

ニッポンの働き方は30年から40年遅れている

「Change, or Die! 〜業績に直結する新しい働き方・稼ぎ方とは?〜」と題された今回のセッション。すごく刺激的な題名ですよね! 松本さんの対談相手は慶應義塾大学総合政策学部 准教授の琴坂将広さん。

慶應義塾大学 総合政策学部 准教授 琴坂将広さん
(所属・役職は取材当時)

琴坂さん(以下、敬称略):会場の皆さんも未来は変わっていくということは認識していると思います。でも、どんな未来になるかわからない。そのような不透明な未来に私たちはどう対応していけばいいのでしょうか?

松本さん(以下、敬称略):「未来はわからない」ことはもう大前提として、猛スピードで変化していくさまをしっかりと把握することが重要です。そして、把握した変化に、すばやく対応していくこと。賢い人や強い人が生き残るわけではない。変化に対応できる人こそが生き残るんです。

なるほど。確かに、見えない未来を予測するのではなく、社会の変化をきちんと理解さえしておけば、怖いものでもないのかもしれない…!

また、働き方の変化について松本さんは、「日本の働き方はどう考えたって30年から40年前の働き方ですよ。現代の働き方にすら追いついていない」とバッサリ。おおお。それって変わってない、ってことですよね…? 平成も終わろうとしているのに、まだまだ昭和の働き方をしているなんて。のっけから強力なパンチをくらったような気分で、クラクラしてきました…。

抵抗勢力に対しては「力ずく」で改革を推進

「いつまでも昭和の働き方を続けていたら低迷からは抜け出せないでしょうね」と言い切る松本さん。カルビーでも、その前に社長を務めたジョンソン・エンド・ジョンソンでも女性登用を推進した「ダイバーシティの第一人者」である松本さんが言うと説得力があります!

でも松本さんに言わせると「いや、そんなの第一人者でもなんでもない。『ダイバーシティと働き方改革』なんて誰でもできる。『何でやらないの?』と思うわけです」。ご、ごめんなさい…。と、なぜか謝ってしまう私。

松本:ある特定の人だけで働き方改革をやっている時代は終わったんです。日本人だけ。男だけ。年寄りだけ。ましてや一流大学の人たちだけ。業績が上向くわけないでしょう。だってスポーツ界もそうじゃないですか。相撲だって野球だってどんどん外国人選手が活躍しているでしょう。それでどんどん強くなっている。それがなぜビジネスではできないんですか?

はい、確かに…。ご、ごめんなさい。またも謝ってしまった私。松本さんはなぜ、できたのかなぁ。

松本:私がダイバーシティの必要性に気づいたのは、ジョンソン・エンド・ジョンソンに入社して、社長になる前に、上司から言われた言葉のおかげなんです。「アキラ、お前、全然ダイバーシティを実践していないじゃないか。女性があんなにいるのに女性を全然使っていないじゃないか」と。でも当時、「ダイバーシティってなんじゃいな?」って、その言葉の意味するところを知らなかったんですけどね(笑)。でも、女性登用については「それもそうだな」と、実践してみることにしたんです。私はね、頭は良くないんですけど、やわらかいんです(笑)。だからすぐ実践してみたんです

その後、カルビーにおいても「男女問わず、良い人は使う」という意識でダイバーシティを断行。「抵抗勢力もあったと思うのですが、どうやって進めていったんでしょうか?」という琴坂さんの問いに、「力ずくです」と、松本さん。私を含め会場のみなさん、これにはびっくりして、のけぞる感じでした!

松本:これまでのやり方を変えるというのはね、必ず抵抗勢力があるんです。これはあるに決まっているんです。それを前提として、どうしていくか。それには力ずく。つまり、本気で取り組むことが一番重要なんです。

この言葉に、会場のみなさん、今度は力強くうなずいていました!

改革と同時に「業績アップ」にコミットすべし

琴坂:ダイバーシティや働き方改革などが広がりを見せないのは、一時的にしろ「業績が下がる」ことが挙げられませんか? 生産性が下がるなどの不安や短期的なプレッシャーがその要因になっているのでは…?

松本:ただダイバーシティをやっただけではダメなんです。大切なのは「業績を落とさない」ことです。売上をはじめとする数字へのこだわり、業績へのこだわり、そして「何が何でもやるんだ!」というこだわり。それが会社を変えるのです。約束をした結果に対して実現するように動くことが大切。

そのこだわりがあらわれているのが「現場主義」という経営者としての松本さんの信念。

松本:私はオフィスに行かない、ミーティングをしない。仮説検証のために現場に行くことを大切にしていたからです。お客さんや社員とのコミュニケーションを通して見えてくるものと、自分が考えていたものが違うということもあるので、それを実地に確かめて、修正していったんですよ。

琴坂:経営者が現場に行くと、その分、経営の生産性が落ちるんじゃないか、ということは考えなかったのですか?

松本:仕事に対する実感の問題だと思いますよ。一日中オフィスにいて、ミーティングばかりしているのと、現場に出てお客さんや社員とコミュニケーションを取りながら、トラブルを解決したりするのと、どちらが「今日は良かった」と思えるか。おのずと決まってくるのではないでしょうか。

なるほど。現場を見ない経営者は多いですが、社内で課題を予測するくらいなら、実際に見に行って解決するほうがいいのですね!

会社とは魅力的な人間をつくるところ

未来に向かって、企業はまず何を変えていけばいいのでしょうか。この問いに対する松本さんの答えは明快。「まずは働き方をグローバルスタンダードに合わせること」だそうです。オフィスに出社しなくても働ける環境や、勤務をしながらも自由に学べる企業風土などは、もはやグローバルスタンダードであって、やるしかない、ということ。

さらに、「今回のセッションテーマである『新しい働き方、稼ぎ方』をどのように考えていらっしゃいますか?」との琴坂さんの問いにも、「実に簡単なことです。時間ではなく、成果で働くことです」と明快に答える松本さん。

松本:「自分で考えて成果を出すように適当に働いてください、ただしやり方は皆さんに任せます」と。これくらい変えないとダメだと思っています。そうするとね、「どうやったら成果が出るんだろう?」と自分で考えるようになるんですよ。自分に足りない知識があったら大学かどこかに行って学ぶでしょうし、いかに効率よく働いて生産性を上げるか、自分の頭で考えるようになると思うんです。

なるほどなぁ。会社から「これをやれ!」と押しつけられる仕事ではなく、自分からすすんでやる仕事であれば、明らかにやる気も、真剣度も変わってきそう。ちょっと想像しただけでも、わかるような気がします。

松本:会社っていうところは魅力的な人間をつくるところなんです。ダメな人間をつくるところじゃありません。それでは魅力的な人間を作るにはどうすればいいか? それはいろんな意味で環境と制度を整えてあげること。そうすれば、だいたいの人は良い人間になると私は思っています。

そんな松本さんの熱い言葉に、会場のみなさん、大きくうなずいていました。社員を信頼して任せる。その会社の懐の深さ、みたいなものが、すごく重要なんじゃないかなぁ。

これからのリーダーに必要な資質とは?

「新しい働き方に合わせるためには、リーダーにも新しい資質が必要!」と松本さんは言います。

  • ①実績:圧倒的な実績のある人
  • ②理論:なるほどなと思わせられる人
  • ③人徳:この人の背中についていきたいという人徳のある人

うーん、確かに納得なんです。でも、この3つすべてを持ってるような、そんなスゴイ人って、いるのかなぁ…。そんなふうに考えていると、松本さんも「見たことがありませんね」。ガクッ。「少なくともこういう要素が必要です」と。

また、リーダーに必要な「力」として、

  • ①わかりやすく考えを伝える力
  • ②物事を決めきる力
  • ③どんなことからも逃げないという勇気

この3つが極めて重要だと話していました。ただし、「最初からそういうことができるとは限りません。だんだん進化することがリーダーにとって大切なんです」とも話していました。うん、それなら希望が持てますよね…!

経営者も柔軟であること。それが生き残るカギ

セッションも終盤に差し掛かり、松本さんからは、未来の会社がどう変化していくべきなのか、をお話してくださいました。

松本:たとえばセブンイレブンは時代の変化に対応した優れた会社のひとつだと思います。アメリカのビジネスモデルを日本風にアレンジして変化に対応しましたよね。

①開いててよかった:24時間営業に
②近くて便利:ワンストップで、セブンイレブンに行ったら何でもできるように

この2つのコンセプトを入れたことで大成功しました。このように変化に対応し続ける会社が生き残るんだと思います。確かにこれからもITはさまざまな分野で導入されていくでしょう。しかし、事業に何が必要か? 皆で考えていくことが必要なんだと思います。

変化を恐れないこと。すべてはそこから始まる

「未来の働き方に焦点を当てて話してきましたが、実はすぐれた働き方は古くから変わっていないと思っています。変化に対応することです」と話を締めくくった松本さん。カルビーを退任し、電光石火のごとくRIZAPグループへと活躍の場を移した、松本さんご自身の生きざまからも「変化に飛び込んでいく」ことの覚悟と、自分がその会社でやるべきミッションをまっとうすることへの強いこだわりが見えました。

私は変化に対応した働き方ができているのかな? なんてことを考えていたらグーっとお腹が鳴ってしまいました(笑)。まず私のお腹の変化に対応しなくっちゃ。「虎ノ門コーヒー」へ寄って、名物の玉子サンドを食べて行こう! そして、2日間にわたって取材した「Future of Work 2018」の熱量を、早く読者のみなさんに伝えたい! それではまた! ライターのあやかでした!

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