株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS 代表取締役社長CEO 宇野 康秀さん
(所属・役職は取材当時)

JR山手線の目黒駅のすぐ目の前に建つ高層ビルの中、USEN-NEXT GROUPさんのオフィスに一歩入ると、そこには…。東京の街並みを見渡せる絶景! さらに数多くのグリーンが配置されている! 焼きたてパンが食べられるカフェも! そして、ゆっくり休息できそうなラウンジ・スペースがそこかしこに…って、どこで仕事をしてもかまわない、フリーアドレス制なんだそうです。こんなオフィスで仕事ができるなんて、うらやましい限り。

グループ企業9社、約1,300名がここへ引っ越してきたタイミングで、「Work Style Innovation」と銘打ち、USEN-NEXT GROUPさんならではの「働き方改革」を推進しているそうです。働く時間、働く場所を自分で決められるのだとか。フリーアドレス制でオフィス内のどこで働いてもいいだけでなく、自宅やカフェで仕事をするのも自由なんだそうです。先進的な取り組みを進める意図やその先にある理想像まで、代表の宇野さんに直撃インタビューを敢行しました。

「働く」という概念自体を変えてしまおう

──USEN-NEXT GROUPさんでは、働き方改革について、どんな取り組みをしていますか。

大きく分けると、「スーパーフレックスタイム制度」と「テレワーク勤務制度」という2本柱で働き方改革を進めています。どちらも昔からある制度で、すでに導入した企業も数多くあります。ただ、私たちの場合、そうした先行事例を研究して「うちでも導入しよう」となったわけではありません。「働き方」に対する考え方を根本的に変えようというのが原点にあり、それをつきつめていった結果、「スーパーフレックスタイム」と「テレワーク勤務」に行きついたのです。「働く」っていうのは「同じ時間・場所に集まること」じゃない。そういう意味あいが込められています。

    【USEN-NEXT GROUPの働き方改革の取り組み】

  • ●スーパーフレックスタイム制度
  • 始業・終業時刻を社員自らの決定に委ねるスーパーフレックスタイム制度を導入。コアタイム・フレキシブルタイムを設けず、時間にしばられない働き方の実現を目指す。
  • ●テレワーク勤務制度
  • 希望する全員に、テレワーク勤務を可能にする。場所や利用回数に制限を設けず、ノートPCとスマートフォンを全社員に貸与。社内にいなくてもスムーズに仕事ができる環境をつくり、場所にしばられない働き方の実現を目指す。
  • ●Cool&Smart BIZ!
  • 「かっこよく、働こう。」というスローガンのもと、クールビズを活用して、社員がさらに「自分らしく」「イキイキと」、ワーク・ライフを楽しめるように、服装の自由度を高めた。専門家によるファッション講座や社内ファッションコンテストの開催も計画している。
  • ●Innovationコンテスト
  • 日常業務における課題を解決するアイデア、業務の改善案、新たにつくりたい制度などを募集する社内コンテスト。働き方改革に関する情報を発信する社内向けポータルサイトで、グループ全体の約4,000人からアイデアを募集中。

――そもそも「働く」という考え方自体を改革してしまおう、と。

ええ。今日まで仕事とは「労働時間を提供し、お金をもらう」という意味でした。でも私は、その概念に疑問を感じています。同じ時間・場所にいれば、1日ボンヤリ過ごしても、1日中仕事に真剣に取り組んでも、ひとしく「働いている」っていうことになるんでしょうか? 違うはずです。

そこで私たちは、働く時間・場所についてのしばりから、社員を完全に解放してしまおうと、「スーパーフレックスタイム制度」「テレワーク勤務制度」を導入したわけです。いつ、どこで仕事をしたか、ひとつの仕事にどれくらいの時間をかけたかは、社員の評価にまったく影響しません。ただ、仕事の「結果」だけで評価します。これは、「何をすれば給与をもらえるのか」という根本的な考え方の改革ですね。

ですから、単純に時間を削減するイメージがある「働き方改革」ではなく、あえて「Work Style Innovation」と名付けています。

――なるほど。しかし、同じ時間・同じ場所を共有するからこそ、「仲間意識」が生まれ、会社の一体感が醸成されるのではありませんか。

うーん…。同じ場所にいるからといって一体感が生まれるかというと疑問です。もちろん、顔を合わせたほうがコミュニケーションをとりやすい、というのはあると思います。でも、「同じ本社にいる」といっても、実際のところ、違うフロアの人とは、そうそう顔を合わさないですよね(笑)。

現代は、コミュニケーションツールが発達したので、会社で隣同士の人より、離れた所でチャットをしている人の方がむしろ親近感がわいたりする。そんな現実があるわけじゃないですか。そう考えると、オフィスという物理的な空間よりも、デジタル空間で親近感・一体感をつくっていくということのほうが求められているように感じています。

転職するならグループ内でどうぞ!?

――確かに、そうですね。よく分かりました。では、「労働時間を提供し、お金をもらう」から、「仕事の結果を提供し、お金をもらう」へと社員のみなさんの意識は順調に変わってきているのでしょうか。

まだまだ途上です。でも、これからどんどん意識変革が進んでいくと思いますよ。「Work Style Innovation」での取り組みだけでなく、さまざまな社内制度を、その意識変革を促すように推進していますから。たとえば、「グループ内転職制度」というものを導入しました。USEN-NEXT GROUP内の人材の異動をマネジメントする、いわば「グループ内の人材紹介会社」となる機能を立ち上げたのです。

転職を考えるきっかけとして、「上司とそりが合わない」とか「与えられた業務が合わない」というケースが多いと思います。でも、私たちは連結子会社15社、グループ全体の従業員約4,000名というグループ。ほかにも「上司」や「業務」はたくさんある。だからグループ内の人材紹介会社に相談してくれれば、最適な「グループ内転職先」を紹介しますよ、というわけです。

――「上司」「業務」だけが問題で、グループのミッションには共感していたり、風土にはなじんでいたりするのであれば、「グループ内転職」のほうが絶対にいいですね。

そうなんですよ。一方で、会社側としても、その人材がいなくなってしまったら、外部から人を補充してこなければいけない。採用コストがかかるわけです。でも、同じグループのなかの違うところで活躍してもらえるなら、そのコストの埋め合わせができる。完全にグループ外へ出てしまったら、もう埋め合わせはできません。ですから、「グループ内転職」のほうが、社員にとっても会社にとってもハッピーなんじゃないかと思うんです。

──グループ内で「引き抜き合戦」が起こりそうな気もします…。

ある意味、引き抜きしていいってシステムになっていますよね(笑)。でも、いまだって社外から人材を引き抜かれることがあります。よそにとられるくらいなら、グループ内で引き抜いたほうがいいでしょう。

――そうしたら優秀な社員さんはおのずと評価が上がっていきそうですね。優秀であればあるほど、グループの中で「ぜひともうちへ」といった声があちこちからかかるでしょうから。

その通りです。最終的には「評価」につながってくる話です。私は、社員の評価について、きちんと「市場原理」が働くべきだと思っています。「労働時間に対して賃金を支払う」という概念を変えて、「その人の産み出すであろう価値に対して賃金を支払う」になったあかつきには、グループ内でみたときと他社から見たときと、人材の市場価値は大きく変わらないはずなんです。ゆくゆくは、評価を「完全市場価格制度」へともっていきたいなと思っています。

市場価値が外部とUSEN-NEXT GROUPのなかと釣り合っていて、しかも年収がうちの方が高ければ、転職してしまうことは大幅に減るでしょう。それに、グループの中でも賃金の格差がなくなっていくと考えています。

「ネクタイ締めたら仕事してるふう」はやめよう

――なるほど。ほかに、「結果だけで評価する」という考え方を浸透させる取り組みはありますか。

たとえば「Cool&Smart BIZ!」という取り組みがあります。これは「Work Style Innovation」のひとつとして、「かっこよく働く」ということを体現していくために、身なりを変えていきましょう、というもの。「クールビズ」の当グループなりの発展形として、「ノージャケット、ノーネクタイ、ポロシャツでもOK」とか、より服装の自由度を高める取り組みです。

根本で言うと「ネクタイしていたら仕事しているふうに見えるのは間違いだよ」という話です。仕事の本質は服装ではなく「結果」なので、「制服を着ていればいい」みたいなのはやめましょうというのがこの取り組みの原点です。

――服装についても、「働く」という概念の変革が根底にあるわけですね。

はい。そうそう、この取り組みの一環として、社内ファッションショーの開催も計画しています。

――えっ! それはめずらしい試みですね。それは、やはり2001年に「ベストドレッサー賞」を受賞した宇野さんの発案なのでしょうか…?

いえいえ、そうではありません(笑)。「オシャレしなさい」ということではないんです。急に「スーツじゃなくてもいい」と言われると、毎日の洋服選びに困る人も出てくるじゃないですか。そこで、「こんな格好はどうでしょうか」とプレゼンしてあげたほうがなじみやすいですよね。そういう趣旨のファッションショーです。いまは安くていい服もたくさんありますから、そういう情報を提供する意味もあります。

経営者が守るべきは社員・株主よりも「事業」

――楽しい取り組みですね!では、宇野さんが考える、ビジネス組織の理想のあり方、ビジネスパーソンの理想の働き方を聞かせてください。

会社がいとなむ事業が、「お金もうけの手段」から「会社が存在する目的そのもの」へと変化していくと思っています。昔は、「資本家がお金をだして、労働者は時間労働を提供する。結果、出したお金以上のリターンが資本家にある」というのが会社の仕組みだったわけです。会社がどんな事業をやるかは本質的ではなく、「もうかる事業なのか」が問題になりました。

でも、いまでは「目的ありき」に変わってきているように感じます。その会社が「何をやるか」ということが真ん中にある。そして資本家は「あ、そういう目的だったら自分もお金を出したい」。労働者は「なるほど、そういう目的であれば自分もその目的のために働きたい」となるわけです。その会社がやることに対してお金が集まったり、人が集まったりする。そういうつながりの「ハブ」みたいになっているものが、これからの会社像なのかなと思っています。だから経営者は「事業」をしっかりと守っていくべきなんです。

――「事業」ですか。

はい。よく「経営者は株主を守るのか社員を守るのか」っていう議論がありますよね。それはどこまいっても矛盾する話なんです。そこで、私は「事業」を守るべきだと思うようにしたんです。自分たちがやっている事業に、意義・価値があって、それが社会のよりよい変化に貢献するのであれば、おのずと人やお金が集まってくる。だからこそ、経営者は「事業」を守るべきなんです。

――では最後に、働き方改革に踏み切れていない経営者や、具体策がわからずに悩んでいる経営者にアドバイスをください。

認識していただきたいのは、「働き方改革」っていうのは、「働かせ方改革」なんだということです。いちばん大事なのはマネジメントする側が変わることです。マネジメント側が「働かせ方」を変えないと、社員の「働き方」は変わりようがありませんからね。「遅刻していないからマジメ」とか、「定時で帰っているからダメ」とか、そんな時代遅れの評価をしているままのマネジメント層を放置していたら、改革は進みません。

マネジメント層を改革についてこさせるのは経営者の手腕です。ぜひ当事者意識をもって働き方改革について考えてみてほしいです。

――「働き方」を変えるには、まず「働かせ方」を改革する必要があるということですね。時間も場所も服装も関係なく、仕事の結果だけで評価する。それは、マネジメント層に対して、大きな意識変革を迫るものですもんね。「オシャレなオフィスに移転」とか「社内ファッションショー開催!」といったUSEN-NEXT GROUPさんの取り組みの表面ばかりを見ていてはわからない、ビジネスパーソンの既成概念に「NG」を突きつける宇野さんの根本的な思考に感銘を受けました! 本日はどうもありがとうございました!

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