多くの人でにぎわう街、池袋。豊島区役所は池袋駅から徒歩圏内にある、新しくてキレイな庁舎です。今回は、豊島区役所で働く職員おふたりに、お話をうかがいました。働き方改革を推進する中核を担う総務部 人事課長の小野寺 悠太さん(写真右)。そして業務改善を推進する政策経営部 行政経営課長の渡邉 明日香さん(写真左)です。

まずは2018年7月、管理職を対象にテレワーク(在宅勤務)の試行実施をした件について。自治体の働き方といえば、大量の書類を前にしたデスクワークのイメージがあります。 ホントにテレワークなんて可能なの…? そんな先入観をもって取材を始めたところ、想定外のポジティブな答えが返ってきました!

「在宅」がメリハリのある働き方を可能にする

──豊島区では2018年7月にテレワーク(在宅勤務)を試行実施したそうですね。

小野寺さん(以下、敬称略):はい。7月23日から27日まで、総務省が旗を振る「テレワークデイズ」に合わせて、管理職を対象に在宅での勤務を試行的に実施しました。当区役所の管理職は約100名。そのうち、期間中に1日でも在宅勤務を実施した管理職は27名でした。

──4分の1程度ですか。少ない印象を受けます。

小野寺民間企業での事例をよく取材されているでしょうから、そう感じるかもしれませんね。でも、私たちとしては、在宅勤務をやってみた管理職が27名もいたことは想像以上の数でした。なにしろ、自治体には在宅勤務をするという文化がほとんどないですから。

──確かに、そうですね。おふたりは、ともに在宅勤務の試行実施の対象である管理職です。今回、在宅勤務を実行したのでしょうか。

渡邉さん(以下、敬称略):はい。私は半日だけ実行しました。午前は通常通り庁舎内で業務を行い、午後、在宅で仕事をしてみました。

小野寺私もやってみました。私の場合は丸1日、在宅で仕事をしました。

──在宅勤務の文化がない中で、実際に実行してみて、どんなメリットを感じたのでしょうか。

渡邉いつも以上に資料などを読むことに集中できました。じっくりと資料を読みながら考える時間が取れたことで、その後の仕事に活かすことができました。

小野寺まずはなによりも、通勤による身体的な負担が減ったことが大きかったですね。これまで通勤で時間も体力も一定程度、消費していましたから。その分のエネルギーを仕事に振り向けることができました。

──なるほど。在宅勤務の導入は、ワークライフバランスの観点からのメリットが強調されがちですが、やる気や集中力を高めるメリットも大きいわけですね。では、反対にデメリットはありましたか。

小野寺とくにはないですね。今回は、家族が気をつかって、家を1日空けてくれたので、「生活の中の雑音が気になって、仕事がはかどらない」ということはありませんでした。いつも家を空けてもらうわけにはいきませんから、在宅勤務が本格的に導入されたら、問題が出てくるかもしれませんが(笑)。

渡邉私もとくに問題はありませんでした。実行する前は、「部下や他部署からの問い合わせにすぐ対応できるのだろうか」と少し不安でした。でも、メールによる問い合わせも、用件がしっかりまとまっていたので、短時間で対応できたと思います。ただし、7月は比較的、他部署からの問い合わせが少ない時期。これが繁忙期では、また別かもしれません。

今後は「モバイル化」で環境づくりを

──小野寺さんは部下とのコミュニケーション面で、困難は感じませんでしたか。

小野寺そうですね、困ったことはなかったです。私の場合も、部下からの質問に対しては電話やメールで対応しました。さらに、ビデオ通話も実施してみました。接続面で軽いトラブルはありましたが、リアルでの会議と大きな差異はなく、十分なコミュニケーションができました。私が即、庁舎に駆けつけなければならないような、よほど特別なトラブルでもない限り、不自由はないかと思います。

──今回の試行は大成功といえそうですね。では、本格導入へ向けて動き出すのでしょうか。

渡邉本格導入にはまだ課題があります。今回、対象を管理職に限定したいちばんの理由は、管理職はモバイルPCと携帯電話が支給されていたこと。管理職は職員に比べれば、資料作成などの業務は少ないので、在宅勤務が実行しやすかったわけです。職員は、モバイルPCや携帯電話が貸与されていないので、すぐ在宅勤務を実施するのは難しいかもしれません。

とはいえ、場所を選ばず多様な働き方が出来るのは、非常によいこと。今後は広げていきたいと思います。その前提条件となる環境を整え推進していくつもりです。

小野寺いま、在宅勤務を実行した管理職に対して、アンケート調査を行っているところです。その結果をまとめて分析し、課題を洗い出し、本格導入するための環境づくりに役立てていきます。

働きやすい職場環境で住民サービスの向上へ

──おふたりとも、在宅勤務の本格導入にポジティブな考えのようにお見受けします。その理由を教えてください。

渡邉女性職員が、子育てや介護などの理由で休職・離職をすることなく、働き続けられる、その原動力になりうるからです。私自身、まだ子どもが小さかったときに子どもの急な発熱などで仕事を休まざるをえなかった経験がたくさんあります。そんな時に、「家で仕事ができれば、急に休まなくてもすんだのに…」という思いを抱えていましたから。

また、女性が昇任試験に挑戦する際に、「育児や介護があるので不安…」という理由で、チャレンジをあきらめてしまうということがなく、女性が積極的に昇任試験に挑戦できる環境を整備するためにも、在宅勤務の導入は効果があると思います。女性の立場からも在宅勤務は拡大していきたいですね。

小野寺住民サービスの向上につながることも、理由のひとつです。在宅勤務を取り入れることで、通勤の苦痛や育児・介護の心配など、仕事以外のストレスに悩まされずに職員が職務に集中できる。それは必ず、住民サービスの向上につながると信じています。

──なるほど。住民の中には「税金から給料をもらっているくせに、出勤しないのか」なんて、厳しい視線で見る人もいるかもしれませんね。でも、サービスのクオリティが上がるなら、なにも文句はないですもんね。

小野寺どうしても公務員は「ラクをしている」「おいしい仕事だ」といったイメージをもたれがち。だから、ひたむきに住民サービスを向上させていくしかないですね。つねに住民目線のサービスを考えブラッシュアップしていけば、必ず理解を得られるはずです。

そこにいたるためには、職員の働き方を変革し、職員一人ひとりが公私ともに満たされていることも大切です。満たされている余裕から、住民に向ける笑顔や心配りが増えるでしょうから。

渡邉職員の働き方改革の推進は、職員が心身ともに健康で、勤労意欲の向上を図り、効率のよい働き方にシフトしていけば、仕事の生産性も上がり、区民サービスを向上させることにつながりますから、組織として必須事項です。テレワーク(在宅勤務)の導入も、職員の心身の健康維持のため、という側面もあります。健康的な職員が集まった健康的な組織による、健康的なまちづくりを目指します。


──なるほど! 民間企業であれば、働き方改革の成果を金銭的価値に置き換えて算出しやすいけれど、自治体であれば「住民サービスの向上」という指標があるんですね。それを「職員が住民に向ける笑顔が増える」ことで計測するって、とてもステキな考え方です!インタビューの後編では、そんなステキな考えのもとに推進されている、在宅勤務以外の働き方改革の取り組みをお聞きしました!

▼インタビュー後編はコチラ!
「“人気就職先ランキングNo.1の区”を目指せ!」豊島区の働き方改革(後編)

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