豊島区役所 総務部 人事課長 小野寺 悠太さん(写真左)
豊島区役所 政策経営部 行政経営課長 渡邉 明日香さん(写真右)

地下鉄駅に直結し、カフェやコンビニなど店舗がテナントとして入っている豊島区役所庁舎。まるで最先端のオフィスビルのよう。2015年にここへ移転したばかりという、新しい庁舎なのです。豊島区では、その移転の際、自治体では非常にめずらしい取り組みを実施しています。庁舎内をフリーアドレス制にしたそうです。

役所といえば、部署ごとにデスクの“島”がつくられていて、各人のデスクの位置が完全に決まっているのが一般的。そのなかで、フリーアドレスとは大胆ですね!

そうした改革の具体的な中身と、働き方を変える取り組みに熱心な理由を、働き方改革を推進する中核を担う総務部 人事課長の小野寺 悠太さん、業務改善を推進する政策経営部 行政経営課長の渡邉 明日香さんに聞いてみました!

※インタビュー前編はコチラ。
「テレワークで役所の中から“健康的な街づくり”」豊島区の働き方改革(前編)

役所ではめずらしい「フリーアドレス制」を導入したものの…

──2015年の新庁舎への移転を機に、フリーアドレス制を導入したそうですね。公共機関ではめずらしい取り組みだと思います。

渡邉はい。ただ、実情をお話しすると、個人の席が決まってしまっている部署がほとんどです。現在、フリーアドレス制を導入しているのは、総合窓口課です。チームで仕事をしていて、窓口に関する業務を日々異なるチーム編成で行うスタイルのため、座る場所を業務ごとに割り当てるほうが都合がよい。

でも、ほかの部署は、ほとんどが職員の担当業務を固定しており、担当者が必要とする資料類などが大量にある。必然的にそれらの資料が置いてあるところが、「自分の席」になってしまうんです。

小野寺私が課長を務める人事課は、個人情報や機密事項をあつかうことが多い。なるべく重要書類の保管庫のそばに担当者を配置したほうが、管理上、都合がいいんです。そのため、席が決まってしまう。

とはいえ、「席は決まっているのが当たり前」という慣習が抜けていないだけ、という側面も大きい。これから、それを変えていきたいですね。

──フリーアドレス制のメリットはなんでしょう。

渡邉組織変更や異動時のレイアウト変更が必要なくなったことは大きいです。旧庁舎では職員が大量の書類を運んだり、電話配線や機器の移動などの作業が発生していました。原則として、現状のレイアウトを変更するのではなく組織や人をレイアウトに合わせて配置し直すことで、職員の負担を減らすとともに、コスト削減効果も出ています

すでに無線LANの整備や座りやすいイス・机の導入といった、環境の整備は行っているのです。あとは、前回のインタビューで、在宅勤務の導入の前提となる環境整備としてあげた、モバイル化。これはフリーアドレス制の浸透にも有効です。あとはもう、「慣れ」でしょうね(笑)。

ちょっとした工夫の積み重ねが、着実な残業時間減に

──役所は異動が多いので、むしろ民間企業よりもフリーアドレス制に向いているのかもしれませんね。では、働き方改革の大きなテーマである「残業時間の削減」についての取り組みを教えてください。

渡邉平成28年度から、職員のワークライフバランスの観点で、行政経営課と人事課が連携しながら「超勤」の削減に取り組んでいます。民間企業でいう残業のことを、役所用語では超過勤務、略して「超勤」と呼んでいるのです。

──どんな成果がありましたか。

小野寺一人当たりの月平均の超過勤務時間は平成27年度が9.2時間だったのが、28年度8.0時間、29年度は7.6時間。着実に減ってきています。

──すばらしい! 具体的にどんな施策を講じたのか、教えてください。

小野寺たとえば夜7時の一斉消灯。時間になったら強制的に電気を消します。また、ノー残業デーにはパソコンにポップアップで「ノー残業デー」の表示が出る。注意喚起・リマインドのためです。さらに、個人の年間目標の中に超過勤務時間の目標数字を立てるように指導しています。これらの施策によって意識づけをはかっています。

これに加え、平成30年度からは、管理職の目標に「部署内の超過勤務時間の削減目標」を立てさせるようにしました。組織目標を達成するのは必須として、達成手段として職員に長時間働いてもらうような形を求めてはいけませんよ、ということです。ワーク・ライフ・バランスを進めてやる気を引き出すことで、超過勤務をすることなく組織目標の達成に貢献してもらう。それが管理職の仕事ですよ、と。

渡邉超過勤務をする職員一人ひとりへの意識づけと並んで、その上司(管理職)による働きかけが非常に重要なんです。上司が声をかけることにより、組織全体の意識改革や、組織として超過勤務を減らす組織文化の醸成につながりますから。

──そのあたりは民間企業と同じですね。では、平成30年度の超過勤務時間削減の目標を教えてください。

小野寺平成30年度はさらに0.8時間減らし、「6.8時間」にすることを目指しています。将来的には「東京23区でいちばん超過勤務が少ない区」を目指しているんです。

「働きやすさ」で差をつけて、優秀な人材の獲得へ

──東京23区の区役所の間で、職員の働きやすさの競争をしているんでしょうか…?

小野寺そういう面はありますよ。ほかの区よりも、よい人材を確保したいですからね。

──えっ。人材採用競争というのは、民間企業同士の話だと思っていました。

小野寺役所同士でも競争はあります。東京23区の職員採用の仕組みを説明しますと、志望者には23区の共通の採用試験を受けてもらい、合格者がそれぞれの区に割り振られます。このとき、試験の成績がよかった順に、自分が希望する区に割り振られるんです。だから、就職先として人気の高い区は、優秀な人材を確保する機会に恵まれるわけです。

──なるほど! そこで他区よりも働く場として魅力的であることをアピールするために、職員の働き方改革を熱心に推進しているわけですね。

小野寺その通りです。いまの若い人、とくに公務員を目指す人はワークライフバランスを重視する人が多い。23区は給与などの待遇は同水準。そこで差をつけることはなかなか難しい。そこで、「働きやすさ」の部分で差をつけていきたいと思っています。そして、たとえ好景気で民間企業に人材が集まってしまうようなときでも、それに負けない採用力をつけたいですね。

業務効率化のためにRPAを試験導入中

──今後、働き方改革について、どんな取り組みをしていきますか。ビジョンを聞かせてください。

渡邉RPAやAIといった最新のテクノロジーを利用して、これまで職員が行っていた業務の自動化をはかりたいですね。すでにRPAについては、ある部署で試行的に導入中。全庁に広めていけるか検証しています。AI利用については、RPAとの組み合わせなど広く適用ができるものと思っているので、将来的な導入に向けて、いろいろ調査をしています。

小野寺男女問わず働きやすい職場環境を目指します。超過勤務時間を減らし、在宅勤務やフレックスタイム制を取り入れ、ライフスタイルに合わせて働ける環境を整えたいです。「豊島区に入ってよかった」と、ひとりでも多くの職員に思ってもらうことが目標です。

──最後に、ひとつ。これまでに豊島区が改革を推進してきたプロセスのなかで、民間企業の参考になる工夫やアイデアがあれば、シェアしてください。

小野寺そうですね…。役所では一般的ですが、民間ではあまりないと聞くものに、1時間単位での有給休暇取得制度があります。ちょっと病院に行くとか、お子さんを早めに迎えに行くとか、1日休みを取らなくても1時間で十分個人の用事に対応できる。平成22年の労働基準法の改正により、民間でも導入可能となっていますので、ぜひ取り入れてほしい制度ですね。

──ありがとうございます。豊島区の「職員に長く働き続けてほしい」という想いがよく伝わってきました! それは、民間企業の経営者が抱く想いと同じ。ほかにも、意外に公共機関も民間企業も、働き方については同じ課題を抱え、同じ取り組み方をしているのだと思いました。本日はありがとうございました!

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