企業の中で「働き方改革」推進のコアになっている人物に、「そのヒトなりの改革」を聞く『俺の働き方改革』シリーズ。今回は、法人向けクラウド名刺管理サービス『Sansan』を展開するSansan株式会社で人事部部長を務める大間さん。先進的なプロダクトを提供している会社だけに、最新のITを駆使して働き方改革に取り組んでいるに違いない──。そう意気込んでインタビュー開始。すると、「いえ、当社では“働き方改革”をやろうとはしていないんですよ」という意外な答えが。そ、そんなことが…? 発言の真意をはじめ、考え方や施策を聞いてみました!

Sansan株式会社 人事部 部長 大間 祐太さん
(所属・役職は取材当時)

「働き方改革」をやろうとはしていない

──Sansanさんの「働き方改革」への取り組みを教えてください。

うーん、そもそも私たちは社内で「働き方改革」をやろうとはしていないんです

──えっ。インタビュー終了、でしょうか…?

いえいえ(笑)。「“働き方改革”を推進しよう」「残業時間を減らそう」「労働生産性を上げよう」など、そういう目的でなにか取り組みを進めることはしていない、という意味です。

私たちには、「ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する」というミッションがあります。このミッションを実現しようと立ち上がったのがSansanという会社。だから私を含め、当社のメンバーは全員、「ミッションの実現をいかに早く引き寄せるか」をつねに考えています。なにもしなければ10年先だったミッションの実現を、5年後、3年後の未来に近づける。そのためにはどんな手を打つべきなのか

たとえば人事部の業務に関して、「私たちのミッションに共感してくれて、その実現に情熱を燃やし、実現するための仕事をまっとうしてくれる能力をもった人材と効率的に出会い、入社してもらえる仕組み」を構築できれば、ミッション実現は早くなりますよね。だから、そうした仕組みをどうしたらつくれるか、いつも考えていますし、できることから手をつけています。

これらの打ち手の中には、結果として「生産性の向上」という効果をもたらすものも多い。「働き方改革」で目指すものと重なる施策もある。でも私たちはそれを、「働き方改革のための施策」と位置づけてはいないわけです。

短期的な成果より長期的なバージョンアップの早さを優先

──あぁ、そういうことなんですね(笑)。では改めて、「働き方改革」に該当するようなSansanさんの取り組みを教えてください。

たとえば、社内メールの廃止があります。社内でのコミュニケーションはすべてFacebook社の社内SNSツール『Workplace』を使用しています。メールとは違い、社員のコミュニケーションは『Workplace』内で完結することで、気軽にコミュニケーションを取ることができ、またプロジェクト限定でのコミュニケーションが活発になっています。それだけではなく、他部署と連携し、新しいアイデアや施策が生まれることもあり、相乗効果もあります。

メールならではの「お疲れ様です。◯◯です」といった定型文を入力する必要がなく、また「いいね!」のボタンだけで「承知しました」などのリアクションをすることができるため、結果としてコミュニケーションが効率化され、労働生産性向上につながっているのだと思います。

──さまざまなビジネスチャットツールがある中で、『Workplace』を選んだ理由はなんでしょう。

もっとも重要だったのは、バージョンアップのスピードが早いことです。実は、以前はMicrosoft社の『Yammer(ヤマー)』を使っていたんですが、2016年にリプレイスしました。とくに『Yammer』に不便な点があったわけではありません。あえて、長年不自由なく使っていたものからのリプレイス。一時的に生産性が下がりますし、「できれば変えたくない」というメンバーもいましたね(笑)

ですが、ミッションの実現を早く引き寄せるという観点からも「クラウドITツールの進化のスピードを目の当たりにしてほしい」という、当社代表の強い信念があり、バージョンアップの早い『Workplace(ワークプレイス)』へのリプレイスを行いました。当社も、プロダクトを提供する会社です。エンジニアやフロントサイドを含め、社員全員がITの進化スピードを体感できるのは大きなメリットになるのです。

──ほかに取り組みはありますか。

Web会議システムを使った営業スタイルを導入しています。顧客のもとへ訪問せず、Web会議を通して画面越しに商談するといったものです。営業担当は商談の時間になったら、商談ブースに入り、お客様とPCのカメラ越しにお話をします。

これも、訪問のための移動時間をなくすことで、同じ時間のなかで、より多くのお客様と出会うための取り組み。私たちのプロダクトをより多くの方に知っていただくことで、ミッション実現を早めることができるのです。

「社員マスター」活用で採用の精度をあげる

──なるほど。結果的に営業の生産性向上になっていますね。では、ミッション実現を早めるために、人事業務で取り組んでいることはなんでしょう。

採用業務の変革に取り組んでいます。具体的には、採用管理システム上で、応募者のレジュメの合格率分析を行っています。たとえば、100人の応募者のレジュメから、半分の50人の方と面接をしても、採用がたった1人ということが起こったりします。つまり、99人の方とはお互いのミスマッチが起きてしまっていることになります。

過去の内定者のレジュメを分析し、的確に採用ターゲットのレジュメが絞り込まれると、書類選考の工数も減り、5人との面接から1人採用というくらい的確な絞り込みができるようになります。そうなると採用プロセスにおけるミスマッチは劇的に削減され、採用の精度が高まると同時に、新たな時間が生まれます。その時間をさらに別の採用施策にあてることで優秀な人材により多く入社してもらうことができるようにもなります。

直近では、自社の社員を対象にSPIを実施し、その結果に当社社員の強みなど掛け合わせて、傾向を分析できるような土台を整えています。それらのデータを当社のR&Dメンバーと採用チームで共同のプロジェクトを立ち上げ、分析することで当社にとって必要な人材の採用基準を抽出するような取り組みも予定をしています。

また、当社は1年ほど前に採用管理システム(ATS)をリプレイスし、ビズリーチ社の『HRMOS(ハーモス)』を導入しています。入社前の候補者データはHRMOSで管理していますが、入社後の社員データを活用するために、サイボウズ社の『kintone(キントーン)』上で、新たな「社員マスター」の構築も進めており、先ほど言及した「分析した社員データ」を蓄積することで、社員の強みや志向さらに事業成長に結びつけられるようなプロジェクトも走り出しています。

──基本となるシステムに『HRMOS』を選んだのはなぜですか。

おもに2つあります。ひとつはユーザーインターフェースがすぐれていることです。『HRMOS』は画面遷移が少ないので、日々の業務を確実に効率化してくれます。そして2つ目は、チャットツールについてもお話ししたように、バージョンアップが早いことです。「バージョンアップの早いプロダクト」を優先して採用するのは、なにごとも「ミッション実現のため」から発想する当社ならではの“ITとの向き合い方”かもしれませんね

ミッション達成のための適材適所なチーム

──ほかに、人事業務で取り組んでいることはなんでしょう。

人材の配置について、タレントマネジメントシステム『カオナビ』を活用しています。社員の顔写真が画面に並ぶ人材管理ツールです。たとえば、新規ポジションに対して、新たに人材を確保しようとする場合。通常は、社外から人材を新規採用することが多いと思います。ただ、適性のあるメンバーを異動で集め、社内の人材を活用することができれば、効率的ですよね。メンバーがより適性の高い仕事に就けるメリットもあります。

こうした環境を実現するために、社内の部門同士が能動的に、適材適所に人員を配置できるような仕組みを、『カオナビ』をもとにつくっていければと、現在取り組みを開始しています。

──部署の間で、人材の争奪戦が起きてしまうのでは…?

確かに、そのままでは起きてしまうと思いますね。そこは、「会社全体のミッションの実現」という大きな目標を共有することで回避できると思います。それに、部署異動先で社員の強みを活かせるのであれば「社員のパフォーマンスを最大化したい」という気持ちは、みんな同じですから。

──全社員が「ミッションの実現をいかに早めるか」を考えて判断できるとブレないですね。では、ミッション実現を早めるために、大間さんが「こんなITがあったらいいな」と思っているものを聞かせてください。

そうですね。社員にまつわるあらゆるデータをAIによって解析し、「その社員がどの部門のどんな部署に配属されれば最高のパフォーマンスが発揮できるか」を、瞬時にマッチングできるような人材プラットフォームみたいなものがあればいいですね。「ミッション実現に向かうチームのフォーメーションとして、本当の意味で全メンバーが適材適所にいる」状態を描いてくれるシステム。そのシステムを活用することにより、社員も120%の能力が発揮できる。そういったソリューションがほしいです。

「働き方改革チーム結成!」って違う気がする

──働き方改革を推進している立場の方は、よく「改革推進に抵抗する人がいて困っている」とため息をついています。でも、Sansanさんのように「ミッション実現のための取り組み」という共通理解があって、みんながミッション実現に情熱をもっているのなら、大間さんは何の問題もなく取り組みを推進できていそうですね。

ボトルネックになっているような人や部署はないですね。しいて言えば、会社の文化。私たちには、ミッション実現のために「逃げずにやりきる」などのValues(ヴァリューズ)と呼ばれる指針があります。それ自体はポジティブなものですが、裏を返せば、なにか会社の仕組みに問題を感じていても声を上げにくい状況があるかもしれない。そんな環境があるのであれば、人事として、社員が声をあげやすい環境をつくっていきたいですね。

また今後、部署を越えて、新しいプロジェクトがどんどん生まれるような仕組みもつくりたいですね。

──最後に、「働き方改革」を推進する立場にある人たちに、メッセージをください。

まず、「働き方改革推進チームが組成されました」っていうところから始まるのが、よくないよねと思うんですよ。会社にはそれぞれ、私たちが「ミッション」と呼んでいるもののような、その会社が存在し事業を継続している理由になっているものがあるはずです。それをより早く実現するために、どんなことをするべきなのかを、まず考えることが大切です。そのうえで、「◯◯部門の✕✕業務の労働生産性を上げること」ことが必要であれば、それに取り組めばいいんですから。

ITの導入についても同じことが言えます。ミッション実現のために、必要な取り組みをまず考えるべきだと。そのうえで、取り組みを促進したり、支援したりするためにITという手段が必要なのであれば使えばいいんですよ。

──確かに。「他社がやっているから、ウチでもERPを導入してみるか」みたいな発想でITを導入しがちですもんね。会社が存在する理由から見つめなおすことが、結果的に生産性向上につながっていく。それが理想的なあり方かもしれません。本日はありがとうございました!

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