自らの働き方に疑問をもつ若手が、自らの意志で組織の働き方改革チームに参加。施策を立案し、実行していく──。そんなボトムアップによる改革推進を理想としているビジネスパーソンは多いですよね。

上から言われた指示に従うだけだと、「仕事が残っているのに、強制的に帰宅させられて、結局、自宅で仕事をした」なんてことにもなりがち。でも、自らの手で改革案を企画すれば、現場での仕事を効率化できるアイデアを取り入れて、本当に業務に携わっている時間を減らせる可能性が高くなります

そんな「ボトムアップによる働き方改革」を、推進している組織があります。今回は民間企業ではなく、お役所に注目します。

テレワークをはじめ、ICTを利活用した働き方改革推進の旗振り役である総務省。平成30年1月、省内の働き方改革の実現に向けて、若手職員25名による「働き方改革チーム」を発足させたのです。チームメンバーのひとり、若手官僚の中川さんに、チームへ参加した経緯やチームでの議論の中身について、詳しく聞いてみました!

総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 消費者行政第二課 課長補佐 中川北斗さん
(所属・役職は取材当時)

リクルーターとして「ウソをつきたくない」

──「働き方改革チーム」を発足させるという情報は、全職員に通知されたそうですね。中川さんがそれを目にしたとき、どう感じたか教えてください。

ビビッときました! 実は、私は日ごろから省内の働き方について不満を感じているタイプの人間なんです。私自身、信念として、いつも隙を見て早く帰るようにしていますし、休みもとります。

でも、“今後”を考えたら難しいだろうなと感じていました。先輩たちをみても非常に忙しそうです。キャリアをステップアップさせていく中で、自分の信念を突き通せない日がきっと来る。そう感じていたんです。だから、「働き方改革チーム」を立ち上げるという通知がきたとき、「おぉ!」と思いました。

――チームメンバーへ立候補した、決め手はなんだったんでしょう。

いちばんの決め手は、1年目の職員や入省を考えている学生に「ウソをつきたくない」という想いです。実は、3年前に職員を採用する部署でリクルーターをしていました。総務省の魅力を入庁志望者にPRする中で、「総務省はすごく働きやすい職場ですよ」と伝えていました。

でも、そこで出会って実際に入省してくれた学生の一部は、1年もしないうちに組織の働き方に染まってしまったんですよね。「若手だから遅くまで残って当然」とか「本当は早く帰りたいけど、上司がいるから帰りにくい」とか…。遅くまで残ることにやりがいを感じてしまっている職員もいて、「これはまずい」と感じました。採用時に「早く帰っているし、総務省は働きやすいですよ」と伝えたことが、ウソになってしまっているように感じました。

──そうだったのですね…。とはいえ、総務省に限らず、官庁の方はいつも、ものすごく忙しそうです。中川さんの働き方についての姿勢が異例で、「残業して当たり前」のほうが常識的なのではないでしょうか。

そうですね。国会関連の業務などは、その日のうちに絶対にやらなくてはいけない。自分の意思で「早く帰る」という選択ができない状況もあります。でも、だからといって「仕方ない」ですませていいのでしょうか。総務省は民間企業に対して、テレワークの導入をはじめとした、ICTを活用した働き方改革を推進するように、はたらきかける立場です。その官庁の働き方が旧態依然では許されないでしょう。「残業して当たり前」といった風土はもってのほか。働き方を根本から見直す取り組みが必要なんです。

“素朴な課題”を抽出することが第一歩

──具体的にチームの議論はどのように進んでいったのですか。

はじめは試行錯誤の連続でした。私を含め25人のメンバー全員で課題を抽出していったのですが、働き方といっても多様な側面がありますから、意見がバラバラになってしまう。そこで、「テーマごとにチームを3つにわけよう」という話になりました。

  • (1)意識改革班:職員の意識を変える
  • (2)業務改革班:具体的な業務プロセスを見直す
  • (3)インフラ整備班:職場環境の改善やモバイルワークを活用しやすくする

この3つのチームにわかれると、議論するべきテーマが明確になり、議論する人間も少数になったことで、一気に話が加速しましたね。私自身は「インフラ整備班」に回りました。

──おぉ。ICT利活用を推進する総務省だけに、最先端テクノロジーを活用するアイデアがたくさん出たのでしょうか?

いいえ。そんなことを期待されてしまうと、ガッカリさせてしまうかもしれません(笑)。むしろ、素朴ながらも重要な課題がたくさん出てきました。たとえば「会議室がとりにくい」「オフィスが暑くて仕事にならない」「せっかくポータルサイトがあるのに使いにくい」といったようなものです。

ハイテクを活用しなくても解決できる課題ばかりです。でも、当たり前のことを当たり前に改善していくことってすごく大切だと思うんです。小さな改善すらできなければ、大きな改善なんてできませんから。

アンケートから吹き出した職員たちの問題意識

――確かに、身近なところから取り組むことは大切ですね。でも、身近すぎる課題だと、個人的な不満なのか、大多数が不満に思っている課題なのか、判別が難しいのではありませんか。

はい、難しかったですね。そこで、総務省の全職員に自由記述形式で働き方に関するアンケートをとりました。その中でオフィス環境については「暑い」という意見が多く出ました。そして「会議室がとれない」というのも大きな問題になっていることが浮き彫りになりました。それ以外の意見についても、メッセージ性の強い記述が多く、「みんな、日頃から働き方についてさまざまな問題意識を持ちながら働いているんだ」いうことを痛感させられました

アンケートを取る前は、「記述式で任意回答のアンケートだから、ほとんど返信は見込めないだろう」と思っていましたが、フタをあけてみたら300件以上の返信があったんです。「こういう機会があればみんな声をあげてくれるんだ」と、さらに身が引き締まりました。

――まず、働き方に対する不満や疑問を表明する機会を提供する。ボトムアップの改革推進には、それが必要不可欠だということですね。

ええ。日頃から働き方に疑問を感じていたとしても、上司や幹部を前にして、たったひとりで声をあげることはなかなかできませんよね。そういう意味でも、今回の試みは大きな一歩だと感じています。

そして、アンケート結果、つまり「全職員の声」を後ろ盾にしていることが、その後の改革推進で大いに役に立ちました。これは官庁だけではなく、民間企業でも同じだと思います。


──なるほど! まずトップが「働き方改革を推進する」と決める。そのうえで、施策の立案や実行は有志の若手メンバーに任せる。そしてチームに「全員の声を代弁している」という後ろ盾を与えるために、全員の不満や疑問をすくいあげる調査を行う。これがボトムアップによる働き方改革を推進する王道のやり方と言えそうですね。インタビューの後半では、チームでの議論の結果、具体的にどう実行していったのかを伺います!

▼インタビュー後編はコチラ!
トップの意識改革とメンバーの声で組織を変える 若手官僚による働き方改革(後編)

おすすめ記事もチェック!