多くの企業でデジタル化が進む中、契約書をはじめとする文書にかかわる業務はアナログなままである企業がほとんどです。そんな「紙と印鑑の文化」を変えるために奮闘しているのが、電子署名ソリューションのパイオニアであり、グローバル標準をつくりあげた米ドキュサインの日本法人、ドキュサイン・ジャパン代表の小枝さん。文書業務のペーパーレス化を、トップが先導して推進することが「働き方改革」につながる──。そう話す小枝さんの真意を聞いてみました!

ドキュサイン・ジャパン 代表取締役社長 小枝 逸人さん
(所属・役職は取材当時)

残業時間が減った。それで本来の目標は?

──まず、ドキュサイン・ジャパンでは「働き方改革」に対してどのように取り組んでいるのかを教えてください。

「働き方」よりも「目標達成」にフォーカスした取り組みを進めています。「自分なりのやり方で、与えられたミッションを達成できればよい」というスタイルで社員が働いています。働くための基本的なルールはありますが、もっとも重要視しているのは、与えられたミッションを達成すること。たとえば、「私はカフェでノートパソコンに向かって仕事するのがもっとも能率が上がる」という社員なら、その働き方を認める、という具合です。

──米国資本の会社ならでは、という感じですね。

そうですね。ただ日本企業でも、最近は目標達成を重視する「業績主義」へとシフトしてきています。業績主義で考えるのであれば、企業は「働き方改革」ありきではいけないのです。まず、「目標を達成するために、なにを成さなければいけないのか」を考えることが必要です。そのうえで、「働き方」が問題ならば変える。それが本来のあり方でしょう。

「働き方改革◯◯」と名づけたプロジェクトをもつ企業はたくさんありますが、それはお題目だけ。「なにをしたいのか」がスポッと抜けているのではないでしょうか。だから「残業時間を月2.6時間減らした」などと、何にどう貢献したのかわからない数値で働き方改革プロジェクトが評価されてしまう。アメリカの企業も、たぶんヨーロッパの企業も、「それで、本来の目標はなんだったのか?」と聞くでしょう。まず「なにを成さなければいけないのか」を明確にするのが欧米のスタイルなのです。

──そこがあいまいになっていることが、よくある「働き方改革」の問題点なのですね。

そうです。それは、私たちが提供している電子署名ソリューションの導入プロジェクトでも同じことが起こりがちです。電子署名に切り替えることで、ペーパーレスが実現することは間違いありません。しかし、電子署名ソリューションを導入するにあたり、「ペーパーレスを実現することで、どこに向かっていくのか」を明確に落とし込んでおく必要があります。なんのための「ペーパーレス化」なのかが不明確だと、「紙の使用量を◯%減らせた」といったことでプロジェクトが評価されてしまうのです。

ショップ店員の「働き方改革」がゴールではない

──では、明確な目標をもって電子署名ソリューションを導入し、成果を上げた具体事例を教えてください。

米国本社が手がけた事例を紹介しましょう。スマートフォンを販売する店舗を展開している大手通信キャリアです。日本でもそうですが、スマートフォンを購入しようと思ったら、手続きに1時間ぐらいかかりますよね。

──確かに。ですが、もう仕方がないものだと…。

その大手通信キャリアは、仕方がないとは考えず、「ショップをもっとカッコよくしよう」という目的で改革プロジェクトを発足させたのです。この改革プロジェクトのゴールは「来店したユーザーが“楽しい”と思える、そんな体験をショップでできるようにする」と設定しました。しかし、契約に1時間もかかるようでは、他に“楽しい”体験があったとしても、トータルで見たときに“楽しい”とは言えません。では、契約の手続きをよりスムーズにするにはどうしたらいいのか。そこで、当社の電子署名ソリューションを導入し、その結果、1時間かかっていた契約を10分で終わらせられるようになったんです。

──すごい! 日本のショップにも早く波及してほしいです(笑)。

そうですね。しかし、日本企業のよくある例だと、「ショップ店員の働き方改革を推進しよう。まず、閉店後の片づけ業務を減らし、残業時間を30分削減できないか」といった具合になってしまうのです。これでは大きな成果は上がりません。

これに対し、先ほど紹介した大手通信キャリアの改革は、結果的にショップ店員の「働き方改革」につながっています。同じ労働時間で、より多くのユーザーと契約することができ、労働生産性を大きく高めているからです。ここで重要なのは、ショップ店員の「働き方改革」自体が目的だったわけではなく、「カッコいいショップにする」ことが本来の目的だったことです。

──国内企業の事例はありますか。

人材派遣大手の例があります。派遣スタッフ1名を採用するごとに2種類の契約書類(本人の登録用の書類、派遣先企業との契約書類)が必要です。以前は、これらの処理を紙ベースで、数十名規模のチームでおこなっており、多大なコストや時間がかかっていたそうです。そのうえ、契約書に記入漏れや記入ミスが見つかると手戻りが発生し、さらにコストと時間がかかります。

そこで当社のソリューションを導入したところ、処理にかかる時間が大幅に削減されたうえに、漏れやミスを発見しやすくなり、手戻りをゼロにすることができました。一連の業務にかかっていた全体のコスト削減という意味では、大きな成果が上がったといえます。しかも、一人の派遣スタッフの契約書類処理にかかる時間を大幅に削減できた結果、同じバックオフィスの陣容で、より多くの派遣スタッフ登録に対応できるようになったのです。

60トンの紙とハードウェアを処分しセキュリティを確保

──なるほど。社員の「働き方改革」にもつながったうえに、攻めの経営ができるようになったわけですね。「バックオフィスの陣容が不足しているから、派遣スタッフを増やせない」といった心配をしなくて済みますね。

その通りです。「紙の使用量を減らす」といった効果だけに目を向けてほしくないですね。

「働き方改革」とは直接的には関連しませんが、一つ事例を紹介しましょう。国内の大手通信グループの傘下にある企業で、情報流出事件が起きてしまったことがありました。その対策として当社のソリューションを導入し、「ペーパーレス化」を実現。そのとき、60トンの紙の文書とハードウェアを処分したそうです。

──60トンですか!

はい。紙ベースで保存するのと、セキュリティを確保したデジタルデータとして保存するのと、どちらが盗まれたり流出したりする危険性が高いかといえば、前者でしょう。しかも紙の場合、保存するには広いスペースが必要で、検索するのも不便です。とはいえ、コンプライアンス上、記録をきちんと保存しておかないと、いざというときに証明する材料がなくなるので、デジタル化して保存しておくに越したことはないです。

それでも、数百年も続く「紙と印鑑」という文化があり、「回覧されてきた書類に印鑑をついて隣の席の人に回す」といったことが、いまもなお、おこなわれています。しかし、そんな非効率なことを続けているような企業は生き残れない時代になっていると思います。

成功の秘訣は一気に導入すること

──それでは、「ペーパーレス化」に成功する企業に共通する要素はなんでしょう。

「業界を変えよう」「これまでのやり方を変えよう」という革命的な思考をもっていることです。業界を代表する企業や尖ったリーダーが存在している企業には、革命的な志向をもつ企業が多いでしょう。

電子署名を導入しなくても別に会社がつぶれるわけではありません。そのため、メリットがあることはわかっていても、「ライバルが導入してからね」「まず、特定の部署で始めるスモールスタートがいいかな」と消極的な判断になりがちです。しかし、成功している企業は、トップが「業界に先駆けて導入しよう」と決断したり、全社的に一斉導入したりしています

電子署名だけではなく、「働き方改革」も同じだと考えています。先導者たる企業のトップが、ゴールを決めて一気に動かないと成功しないでしょう。

──最後に、「『ペーパーレス化』を実現して『働き方改革』も成功させたい」と考えている経営者・管理部門担当者にメッセージをお願いします。

いちばん言いたいメッセージは、「もう変えていきましょうよ」ですね。

最近、私は海外と日本を行ったり来たりする生活を送っています。そして、海外に行けば行くほど「日本って素晴らしいな」という思いが強くなります。なぜなら、日本には100年以上続いている企業が多いですが、アメリカには長く続く企業は数えるほどしかないからです。

ただ、そんなすばらしい日本がいま、元気がありません。元気を取り戻すためには、大きなイノベーションを起こさなければなりません。その一つが「働き方改革」だと考えています。いま、大きく変えなければいけない時代だと思いますよ。

──そうですよね。「ペーパーレス化」は単純に紙の使用量を削減することだと思っていましたが、お話をうかがって、「働き方改革」にもつながっていく企業の巨大な変革プロジェクトの手段の一つであることがよく理解できました。「ペーパーレス化」の普及で日本がポジティブに変わっていくのか楽しみです。本日はありがとうございました!

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