『サッポロ生ビール黒ラベル』『ヱビスビール』などでおなじみのサッポロビール。2017年秋から、「働き方改革2020」と銘打ち、「テレワーク」「スーパーフレックスタイム」など、「働きがい」と「働きやすさ」の両面から社員を支援する取り組みをスタートしています。大手ビール会社の中でも先進的な改革。その推進の一翼を担う人事部マネージャーの竹内さんに、ご自身の業務の改革も含めて、取り組みの詳細についてお聞きしてきました!

サッポロビール 人事部 マネージャー 竹内 利英さん

3年間で育児理由の退社はゼロに

──2017年秋から「働き方改革2020」という取り組みを始めていますね。サッポロビールさんには以前から在宅勤務やフレックスタイムといった先進的な制度があったと聞いています。なにが変わったのでしょう。

在宅勤務を自宅に限らず、業務に集中できる場所であればどこでも仕事をしてよい「テレワーク制度」へと進化させました。制度を利用できる回数や上長の許可を得るタイミングについて制限を大幅に緩和し、より利用されやすいように改定しています。フレックスタイムについてもコアタイムを廃止し、「スーパーフレックスタイム」へと改定しました。

おっしゃる通り、当社は「働き方改革」が謳われるようになる以前から、在宅勤務制度やフレックスタイム制度の導入など、従業員の働きやすさを支援する仕組みを取り入れてきました。でも、期待されたほどには制度が活用されていなかったのです。当時は、社外で円滑に仕事をするためのIT環境がまだ発展途上だったこともその理由のひとつ。でもいまは、営業担当者であれば誰もがスマートフォンをもっていますし、Web会議システムもストレスフリーに進化している。それらを駆使して社外で仕事をする場合のセキュリティ対策のテクノロジーも、大幅に進歩しています。

コミュニケーションツールやセキュリティレベルを高めるようなITツールなどをうまく活用し、より従業員に活用してもらえる制度に変え、従業員の「働きやすさ」と「働きがい」を向上させたい。そんなトップの強い意思もあって、「働き方改革2020」の実施に至りました。

──テレワーク制度やスーパーフレックスタイムを導入後、どんな変化がありましたか。

営業担当者から「お客様を回る時の空き時間を有効に使えるようになった」「お客様を訪問後、いったんオフィスに戻る必要がなくなり効率的に仕事ができる」と歓迎する声があがっています。ほかにも、通勤に時間のかかる人や、子育て・介護をしている人もいます。働く場所や時間を自由に選べることで、両立できる人が増えました。

ちなみに当社ではここ3年間、産休後に職場復帰せず退職したケースはゼロです。

──えっ。サッポロビールさんのような大企業では、かなり稀だと思います。

そうかもしれません。当社が働き方改革を推進する根底には、「社員一人ひとりがいきいきと働いてほしい」という想いがあります。育児のために、意に反して退職せざるを得ない状況を変え、育児と両立しながらいきいきと働ける職場にしていきたいです。

AIに新卒採用の書類選考を任せてみた

──なるほど。では、竹内さんが属する人事部を「いきいきと働ける職場」にするための取り組みを教えてください。

まず、私を含む人事部メンバーの業務時間のうち、かなりの割合を占める新卒採用業務に、AIを導入しました。

2018年4月入社の新卒採用でいうと、プレエントリー約1万6,000名、書類エントリー約6,000名。そこから書類選考で1,800名ほどが面接に進み、最終的に63名に内定を出しました。この過程で私たち人事は、エントリー書類を読み込むのに、合計約600時間も費やしていたのです。

そこで、2019年4月入社の新卒採用から、エントリー書類の読み込み業務にAIを導入しています。AIには、過去の内定者が書類に記入していたことや、人事担当者による評価ポイントの記録を記憶させ、それをもとにエントリー書類をチェックして合否判定を出すまでをやってもらうのです。

──「優秀だけれど、エントリー書類は特異な書き方をしている」といった候補者が機械的に不合格判定されてしまうのでは…?

大丈夫ですよ。AIが不合格判定を出した応募者の書類は、私たち人事部メンバーが一度目を通していますから。それでも、AIが合格させた応募者の書類については、じっくりと読みこむ必要がない。2018年4月入社の新卒採用業務で試験的にAIを導入したときは、書類読み込み業務の40%を削減できました。

削減できた時間を、セミナーや面接など、私たちが応募者の方々と直接コミュニケーションを取る時間にあてています。

──「AIに合否判定させる」というと冷たい印象ですが、実際には逆なのですね。

ええ。私たちは、応募者が本当に自分の価値観に合った会社を選び、やりたい仕事を見つけてほしいのです。そのためには、私たちが応募者一人ひとりとしっかり向き合い、直接会って話し合うことが重要です。これは「ヒトにしかできない仕事」です。AIに書類選考業務を任せたことで「ヒトにしかできない仕事」に時間を費やすことができました。

AIに限らずITを導入することで業務を効率化し、「ヒトにしかできない仕事」「ヒトが本来、やるべき仕事」「ヒトがやりたい仕事」に割く時間を増やす。それが当社のITとの向き合い方といえるかもしれません。

──ほかに、IT活用によって「ヒトが本来、やるべき仕事」に時間を割くことができている例はありますか。

たとえばグループ会社であるサッポログループマネジメントは、グループ各社からの業務上の問い合わせへの回答の窓口にAIを活用しています。経理業務をはじめ、グループ全体に共通する業務について、サッポログループマネジメントがベストプラクティスを取りまとめ、浸透させ、業務の効率化をはかる仕組みです。AIが質問受付の窓口役になることで、「この質問であれば◯◯さんへ」と的確に振り向けられます。ヒトは「質問にていねいにこたえる」仕事に専念できます。

AIと共存しながら全員がいきいきと働く職場へ

──将来、竹内さんが「ITを活用して効率化できたらいいな」と期待している業務はなんでしょう。

各従業員の情報をシステムから抽出する業務でしょうか。人事部は人材の育成・異動などの経営判断に際して、参考資料を提出することが多い。その作業にかなりの時間がかかっています。そうした部分にAIなどを活用することで、もっと効率化できればいいですね。

また、ITを使って、サッポログループ各社間で連携した採用活動ができないかと考えています。たとえばサッポロビールを受けにきた志望者に、「グループ会社であるポッカサッポロフード&ビバレッジのこの仕事があなたのやりたいことに近いですよ」とアドバイスし、選考を受けてもらうようなことがシステム連携によって可能になるかもしれません。

ほかには、音声入力システムの進化にも期待しています。採用や異動のための面談時のメモ取りや、各種会議の議事録作成などにも、かなりの時間と労力がかかっています。音声入力システムによって手軽にテキスト化できれば、と。営業担当者からも「営業日報の記入を音声によって簡単にできないか」という声が出ていますし。

──だんだんとヒトの仕事がAIに代替され、いずれは完全に自動化されるのでしょうか。

いいえ。私の考えている未来は、AIとヒトが共存する世界。ITを活用することで、ヒトが「ヒトにしかできない仕事」「ヒトが本来、やるべき仕事」「ヒトがやりたい仕事」に、より集中できるようになる。そうすることで、すべての従業員がいきいきとやりがいを感じながら楽しく仕事ができるようにするのです。

働き方改革の最終的な目標は、労働生産性の向上です。いちばん労働生産性の高い状態とは、社員全員がいきいきと働いている状態と考えています。その理想の状態を目指して、日々「働き方改革」に取り組んでいます。

──「ITで仕事を効率化する」というよりも、「ITで仕事が楽しくなる」というイメージなのですね。「生産性が高い職場」も、ベルトコンベアーのように業務が効率的に流れていくような機械的なイメージでしたが、「みんなが笑顔でいきいきと働いている」イメージに変わりました! 竹内さん、ありがとうございました!

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