資金繰り表とは
資金繰り表とは、企業活動により発生する入金や出金の時期や金額を示す表のことです。いつ入金があり、いつ支払いが発生するのかを可視化します。
日々発生する取引に応じて、入金予定日、支払予定日を資金繰り表に入力していきます。同時に、入金や支払いの予定日を確認し、銀行口座の残高を確認しながら、滞りなく支払いができるかどうかを確認するために資金繰り表を活用します。
支払いが難しくなることが分かれば、金融機関からの融資を検討するなど、資金調達を検討しなければなりません。
なお、資金繰り表はキャッシュフロー計算書と混同されることがありますが、対象となる取引が異なります。資金繰り表は未来の取引を予測してまとめたもので、キャッシュフロー計算書は過去の取引をまとめた報告書です。
資金繰り表が必要な理由
資金繰り表が必要な理由として、以下のような3点が挙げられます。
売上に伴う入金前に支払いが発生
事業活動は、ほとんどの場合、入金前に支払いが求められます。売上を上げるためには、あらかじめ仕入れをおこない、従業員に給料を払い、設備投資をし、家賃を払う必要があるからです。このため、入出金の時期を把握しないと資金が枯渇しやすいといえます。
掛け取引の一般化
企業間の決済手段が掛け取引になると、売上や仕入の計上後、実際にいつ入出金があるのか把握しずらくなります。特に手形での支払いを選択している場合、不渡りをおこすと事実上の倒産ということにもなりかねません。
金融機関との良好な関係性の構築
資金繰り表は、今後発生する入出金を見える化するための、経営者や経理部門が活用する内部資料です。しかし、資金繰り表を金融機関と共有すれば、融資を引き出しやすくなります。資金繰り表は、資金調達に活用することもできるのです。
資金繰り表の作り方
それでは、実際に資金繰り表をどのように作成すればよいのか、ポイントを確認していきましょう。
一般的な資金繰り表のフォーマット
資金繰り表には、決まったフォーマットはありません。このため、自社の実情に合わせて、入金と出金の額や時期が分かるように作成すればよいでしょう。作成が難しいと感じる方もいるかもしれませんが、エクセルや会計ソフトで簡単に作成できます。
一般的には、下記のように縦軸に入金・出金の各項目をおき、横軸に月度をおきます。
3つの区分に分けて表を作る
資金繰り表は、営業収支、投資収支、財務収支の3つの区分に分けて作成するとよいでしょう。その理由は、資金調達が必要になる理由が、事業活動のどの要素によって生じるのかが分かりやすくなるからです。
一般的には、営業収支で生み出した現金を投資収支に充当し、足りない分は財務収支で補うのが健全な状態であるといえるでしょう。
営業収支
営業収支は、日々の営業活動で生じる現金の流れを表したものです。事業活動を継続的におこなう上では、営業収支で捻出した現金で、仕入や人件費を賄うことが理想です。現実的には難しいため、営業活動だけでどれだけの現金を生み出すことができているのか、しっかりと把握するようにしてください。
投資収支
設備投資やITツールの投資の額、および土地や建物などの売却額など、投資に伴う現金の流れを表します。営業収支の状況や、金融機関との関係性などを加味しながら、投資の実行時期を検討するのに役立ちます。
財務収支
金融機関からの借入や返済について、その額や時期<を表します。営業収支や投資収支の状況によっては、早めに借入を検討したほうが良いといえます。一方で、営業収支に余裕があるのであれば、早期返済を視野に入れてもよいでしょう。
エクセルで資金繰り表を作成し、関数を入れる
まずは、本記事で紹介したフォーマットを参考に、エクセルを使って資金繰り表を作成していきます。資金繰り表は、各サイトで無料で公開しているところもありますので、必要に応じてダウンロードしてください。
表ができれば、予め計算式を入れておくと入力の手間が省けます。計算式を入力しておけば、取引ごとに、入金の額と時期を入力していくだけで資金繰り表は完成します。
実際の残高と資金繰り表の残高を確認する
資金繰り表の精度を高めるために、実際の銀行口座の残高と、資金繰り表の残高を確認するようにしてください。両者に乖離があるようでは、資金繰り表の意味を成しません。
資金繰り表の項目の中では、特に営業収支の動きには注意してください。営業収支は、入金や出金の額にズレがあることが理由で、月度別ではプラスになったりマイナスになったりするはずです。
しかし、恒常的にマイナスが続いているようでは、資金が枯渇し事業が継続できなくなります。このような場合は、資金調達を検討するだけではなく、利益構造を確認し、値上げや経費削減を検討しなければなりません。
資金調達の基礎知識
資金繰り表を作成できれば、運転資金が枯渇する時期や、設備投資に必要な金額とその時期を、早期に把握することができます。
ここからは、資金調達の基礎的な知識を確認しておきましょう。
融資と出資の違い
資金調達を考える上で、融資と出資の違いは押さえておくようにしてください。
融資
返済が求められる資金調達方法です。一般的に経営への関与度合いは低く、融資を受けても経営権を維持することができます。このため、資金調達の際は、まず融資を受けることを検討することになるでしょう。
出資
返済の必要はありませんが、出資の額に応じて経営権が失われます。実質的に、M&Aを視野に入れる場合、出資を検討することになります。
金融機関の種類
融資は金融機関に相談することになりますが、金融機関にも種類があるため、確認しておきましょう。
政府系金融機関
商工組合中央金庫、日本政策金融公庫など複数の金融機関がありますが、融資を受けるのであれば、日本政策金融公庫が相談先の候補になります。民間の金融機関では融資が難しい創業者や、経済が危機的な状況になった場合でも融資に応じてくれる可能性があります。
実際に、現在では「新型コロナウイルス感染症特別貸付」が制度化されています。
参考:
新型コロナウイルス感染症特別貸付
地方銀行、信用金庫、信用組合
地方に密着した資金繰り支援をおこなう金融機関が地方銀行です。地方銀行よりさらに経営者に寄り添ってくれる金融機関が信用金庫、信用組合と考えよいでしょう。
一般的に、地域に密着した金融機関の方が、資金調達だけではなく、経営支援全般の相談に応じてくれます。自社の事業規模に応じて最適な金融機関を選択するようにしてください。
メガバンク
日本では、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループがメガバンクに位置づけられています。中小企業でも融資を取り付けることはできますが、親身に相談に乗ってくれるとはいいがたいため、地域密着型の金融機関や政府系金融機関を利用したほうが良いといえるでしょう。
知っておくと得する!資金調達方法
資金調達の基本は、出資と融資のどちらかから、最適な方法を選択することです。基本を押さえながら、場合によっては以下のような第三の方法を模索するようにしてください。
ノンバンク
預金をおこなわない銀行以外の金融機関のことです。消費者金融やカードローンなどが含まれます。一般的に、金融機関より審査が甘く簡単に融資を取り付けることができますが、金利が高く設定されています。
ノンバンクの利用は極力回避し、やむを得ない場合は、短期間で返済できるときに制限する必要があります。
クラウドファンディング
近年急速に普及してきた資金調達方法です。クラウドファンディングは、個人から小口の資金を広く集めることができる点に特徴があり、返済の必要もありません。
その一方で、単に資金繰りに厳しいというだけでは資金を集めることは難しく、社会的な貢献度が高いことや、今までにない全く新しい目を引く取り組みであることが求められます。
資金繰り表を使って健康経営を
事業を継続する上で、資金繰りは極めて重要な要素ですが、経営者の目線はどうしても今後の経営戦略やマーケティング戦略に行きがちです。しかし、ずさんな資金繰りは、例え黒字でも倒産するという黒字倒産を招きかねません。
資金繰りの状況を見える化するためにも、資金繰り表を作成し、堅実かつ健康な経営を目指すようにしてください。