【はじめに】ECサイト構築の目的を明確にする
ECサイトが台頭してきたのは、ネットバブルと呼ばれた1990年代後半のことです。現在でも活躍している多くのショッピングモールが立ち上げられ、世間から注目されました。
これが一気に拡大したのが2000年以降のブロードバンド以降のことです。インターネット回線が広帯域となるにつれ、快適にショッピングを楽しむことができるようになりました。この時期から、既存の流通業者や製造業者が競ってWeb上にショップを展開するようになります。
このころのECサイトは、SI事業者がスクラッチで開発するのが一般的でした。しかし、2000年代後半から専門のパッケージが提供されるようになり、利用者が増加してきます。そして、現在ではクラウド(SaaS/ASP)の利用が目立つようになり、提供する事業者も増加。利用する側としては環境が整ってきたといえます。
こうしたソリューションから自社に適した製品を選択するには、まずECサイト立ち上げ、あるいは見直しの目的を明確にすることが必要です。ECサイトである以上、販売活動はもちろん、情報収集などのマーケティング活動の充実、広告宣伝、集客活動、顧客満足度の向上など、目的によって選択するソリューションや採用するオプションが異なってきます。
また、売上げ拡大においてもアクセスアップを目指すのか、リピートを増やすのか、ターゲットを年代で絞るのか、あるいは地域で絞るのかによっても利用する機能が異なってきます。
まず、構築したいECサイトの目的とイメージを明確にして、自社のECサイトに必要な機能を整理しましょう。
【そして】ECサイト構築ソリューションの機能を理解する
ECサイトの機能には、フロント機能とバックオフィス機能があります。フロント機能はお客様に直接プロモーションする部分で、バックオフィス機能は商品管理、在庫管理、顧客管理、注文管理など、管理系の業務を支援する機能です。
最近の傾向として、フロント機能の充実が目立ち、独自のサイトづくりが可能となっています。ソリューション選択の際の注目ポイントとなりますので、主なフロント機能を紹介しましょう。
- ○レコメンド機能:
お客様の購入履歴から売れそうな商品を推薦
Amazonが成功して有名になった機能
- ○購買ランキング機能:
売上げランキングを表示し、お客様の興味喚起を促す
- ○アクセス解析機能:
サイトへのアクセス状況や商品ごとのアクセス状況を解析する
専門のツールが用意されているほど、売上を大きく左右する機能
- ○SEO/SEM対策機能:
検索エンジンからのお客様誘導を促すための対策機能
- ○マイページ機能:
お客様のマイページを生成し、リピート率の向上に貢献する機能
- ○クーポン/ポイント割引き機能:
クロスセル・アップセルも促すリピーター化に効果がある機能
- ○メール機能:
メール、メールマガジンを購入者や希望者に対して自動配信
【最後に】ECサイト構築のメリット・デメリットを理解する
ECサイトの構築方式には、スクラッチ、パッケージ、クラウド(SaaS/ASP)の3種類があります。それぞれの方式のメリット、デメリットを比較してみましょう。
パッケージ:基本機能をベースに柔軟なカスタマイズが可能
パッケージとは、ECサイトを構築する上で、予め必要な基本機能を備えているソフトウェアです。パッケージの場合は、自社のサーバにインストールして使用します。自社の目的に合わせて戦略的なサイトを構築できるメリットがあります。ただし、サーバなどの初期費用やソフトウェアのバージョンアップ費用が必要となります。構築には一定の時間がかかり、構築後の運用・保守も必要となります。
■有償パッケージのメリット
パッケージ方式のECサイト構築は、中・大規模のECサイトによく使われています。もともと備わっている基本機能をベースに、柔軟にカスタマイズができるので、費用や労力をかけずにフルスクラッチに匹敵するECサイトをつくることができます。カスタマイズによって、CRMなどの各種システムとの連携も実現できます。
■有償パッケージのデメリット
フルスクラッチ方式と同様に、インフラやサーバー環境の設計や用意が必要になり、フルスクラッチ方式までとは言わずとも価格は高くなります。また、カスタマイズが必要なので、ECサイト構築までにある程度の時間を要します。
さらにパッケージ方式は、無償のオープンソースパッケージがありますので比べてみましょう。
オープンソースパッケージ:ライセンス費用不要のソフトウェア
オープンソースとは、広く一般にソースコードを公開し、誰でも自由に使えるようにされているソフトウェアのことを指します。
■オープンソースのメリット
オープンソースのパッケージは、ライセンス費用は無償ですので、安価でECサイトの構築が可能です。カスタマイズやデザインも自由に変更できます。ソースコードが公開されているので、ソフトウェアの信頼性は担保できます。また、自社のシステム担当で保守・運用が可能です。
■オープンソースのデメリット
オープンソースのパッケージでは、バグによってシステムに障害が発生したとしても全て自己の責任となります。オープンソースの提供元はソフトウェアを無償で公開しているにすぎず、ECサイト事業者とは契約関係にはないからです。また、オープンソース方式では、緊急時のサポートがないことや、サービスの永続性がないこともデメリットとして挙げられます。
クラウドサービス(SaaS/ASP):安価で手軽なECサイトの構築方法
クラウド型のEC構築サービスは、アプリケーションソフトの機能をネットワーク経由でサービスとして必要な機能を利用します。SaaSやASPといわれることもあり、厳密には、仮想技術の採用やシングルテナント(ASP)とマルチテナント(SaaS)の違いなどがありますが、現在は、いずれもクラウドサービスといわれることが多くなっています。
■クラウドサービス(SaaS/ASP)のメリット
月々の定額料金で利用できます。サーバやソフトウェアの管理費も必要もありません。ECサイトの利用状況に応じて、サーバなどのハードウェアリソースの増減も容易にできるので、セールなどの急激なアクセス数の増加があってもサーバダウンを防止して機会損失を防げます。また、平常時にはすぐに戻せるのでトータルでコスト削減にもなります。
さらに、常にバージョンアップやセキュリティーの更新が行われるので、最新の環境でECサイトの運営を行うことができます。すでに完成しているシステムを利用するので、スピーディーにECサイトの立ち上げも可能です。
■クラウドサービス(SaaS/ASP)のデメリット
サービスによっては、機能やデザインなどのカスタマイズができない場合があります。自社特有の機能追加は基本的できないか、追加の開発コストが必要になったり、デザインも用意されたテンプレートから選ぶだけしかできないことがあります。また、CRMなどの各種システムとは連携が用意されていないサービスもあるので、事前に確認が必要です。
フルスクラッチで構築:自由にECサイトの構築が可能
フルスクラッチとは、システムやソフトウェアの開発において、既存のものを一切流用せず新規で開発することを指します。現在、ECサイトの新規構築においては、独自にゼロから構築するスクラッチ方式はあまり見られなくなっています。よほど個性的なサイトでない限り利用することは少ないでしょう。
■フルスクラッチ方式のメリット
フルスクラッチ方式のECサイトは、アクセスが多い大規模なECサイトに最適です。ゼロからシステムを構築するので、デザインの設定が自由にできるのはもちろんのこと、どんな要望にも対応できます。CRMなどの各種機能にも連携が可能なので、使い勝手はいうまでもありません。
■フルスクラッチ方式のデメリット
自由にサイトの構築が出来る反面、インフラやサーバー環境の設計や用意が必要となり最もコストがかかります。また、システムが複雑なため、サイト構築を委託した会社に依存してしまう、減価償却費用の回収に時間がかかるといった理由で、システムが古くなってしまった場合でも乗り換えが困難になります。
まとめ
いかがでしたか。ECサイト構築ソリューションの選定方法について、まず「目的を明確にする」、そして「機能を理解する」、最後に「構築方法を理解する」という検討の流れを大きな3つのステップにして紹介しました。
この流れに沿って、自社に合う構築方法や構築ソリューションを選んでください。ECサイトは日々の運営を、いかに効率的かつ柔軟に行っていけるかがカギとなります。ここまでの選定プロセスで複数の候補に絞り込んだら、導入実績や事例なども確認してみると良いでしょう。