「マルチタスクができる人が優秀」は、本当でしょうか
メールを返信しながら会議に出て、Slackの通知を横目にドキュメントを書く——こうした働き方が「仕事ができる」の象徴として語られることがあります。
しかし、人間の脳はそもそもマルチタスクに向いていないという研究結果が、認知科学の領域では繰り返し報告されています。「シングルタスクとは」という問いで検索する人が増えているのは、「複数のことを同時にこなすほど生産性が下がる気がする」という体感を持つビジネスパーソンが増えているからかもしれません。
マルチタスクという「幻想」
まず前提として整理しておくべきことがあります。人間の脳は、厳密な意味での「マルチタスク」、つまり複数の作業を同時並行で処理することが、構造的に苦手です。
私たちが「マルチタスク」と感じているものの多くは、実際には「タスクスイッチング」——複数の作業を高速で切り替えているに過ぎません。メールを書きながら会議を聞いているとき、脳はメールと会議の間を素早く往復しているのです。
問題はこの切り替えにコストがかかることです。認知科学では「コンテキストスイッチング」と呼ばれるこの現象で、タスクを切り替えるたびに注意の再集中が必要になります。アメリカ心理学会が発表した研究では、マルチタスクによって作業効率が最大40%低下する可能性があると報告されています。感覚的に「何かやったのに何も進んでいない」という日の正体は、ここにあることが多いと考えられます。
「マルチタスク 脳疲労」という言葉が検索されるようになっているのは、この非効率が体感として広く共有されている表れだと受け取れます。
シングルタスクとは何か
シングルタスクとは、一度に一つの仕事だけに集中するアプローチです。当たり前のことのように聞こえますが、Slackの通知・メール・複数の締め切り・オープンなオフィス環境が当然になった現代の職場では、これを実践することが意外と難しくなっています。
「シングルタスクしかできない」という検索が存在することも興味深い点です。シングルタスクが「できない人の特徴」として検索されているということは、まだ「マルチタスクこそ優秀」という前提が職場に残っている表れだといえます。しかし研究が示す方向は逆です。シングルタスクに集中できる環境を作ることが、生産性と仕事の質を高める土台になります。
シングルタスクが難しくなった、現代の職場の構造
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