NTTインテグレーション株式会社は2026年6月11日、IBM Power環境をお客様指定サイトに設置し、月額サービスとして提供する「PowerCloudNEXT@Customer」の提供を開始しました。同サービスは、IBM iおよびAIX環境を継続利用している企業を主な対象とし、オンプレミスの更改とクラウド移行という二択の間に、新たな第三の選択肢を提供するものです。
オンプレミスとクラウドの「狭間」にある課題
IBM PowerやIBM i、AIX環境を基幹系システムとして運用している企業にとって、システム更改は決して容易な判断ではありません。オンプレミス更改を選べば、サーバー本体や周辺機器の更新に伴う大きな初期投資が発生します。加えて、専門技術者の確保が年々難しくなっているという実態もあります。
一方でクラウド移行が最適解になるとも限りません。設置場所の制約やセキュリティ要件、既存システムとの接続性など、一般的なクラウドサービスでは対応しにくい要件を抱えている企業は少なくないと考えられます。「将来的にはクラウドへ移行したいが、いまは段階的に進めたい」というニーズもあり、こうした企業にとっては両者の間を埋める選択肢が求められていました。
「使う」ことに集中できる運用モデルへ
「PowerCloudNEXT@Customer」が提供するのは、IBM Power環境をお客様の指定拠点に設置しながら、運用・保守の主体をNTTインテグレーションが担うという形態です。ハードウェアおよびVIOS領域の維持管理から障害対応、24時間365日のヘルプデスクまでが月額サービスに包括されています。
お客様は現行の設置場所やネットワーク環境を変えることなく、基盤運用の負荷を大きく軽減できる点が特徴です。リソースもCPU・メモリ・ディスク単位で柔軟に契約できるため、個々の要件に応じた構成を組みやすい設計になっています。
「所有から利用へ」の流れは、クラウドだけに限らない
法人向けITの世界では近年、「所有から利用へ」というシフトが語られる際、多くの場合はパブリッククラウドへの移行が念頭に置かれてきました。しかしこのサービスは、その流れをオンプレミス環境にも持ち込もうとする試みと受け取れます。
インフラを物理的に保有・管理するコストや人的負荷を軽減しながら、設置場所や接続性といった「クラウドでは代替しにくい要件」を維持できる。こうした設計思想は、クラウドファーストが当然視される流れに対して、「現実の運用要件はより多様だ」という現場の声に応えるものとも言えそうです。
老朽化したレガシーシステムをどう扱うかという議論の中で、「すべてをクラウドに」ではなく、段階的に運用責任を外部に移していくアプローチの有効性が、改めて問われているタイミングかもしれません。
導入・選定にあたって意識しておきたいこと
同サービスの対象はIBM iおよびAIX環境に限定されており、汎用的なシステム基盤向けではありません。契約は最低1年単位で、料金は個別見積となっています。OS以上の導入・設定・運用・障害対応はお客様側の対応範囲となる点も、導入前に整理しておきたいポイントです。
既存の運用体制やスキルセットと照らし合わせながら、どの範囲をNTTインテグレーションに委ねるかを明確にしておくことが、スムーズな移行につながると考えられます。
まとめ
「PowerCloudNEXT@Customer」は、IBM Power系の環境を継続利用している企業に対し、オンプレミスの資産保有とクラウドの運用柔軟性を組み合わせたような選択肢を提示するサービスです。
「クラウドか、オンプレか」という二項対立が語られやすい今日において、物理環境を維持しながら「利用型」に移行するというモデルは、一定の現実解として注目に値すると言えそうです。今後、同社がこのサービスを通じてIBM Power領域のメニューをどのように拡充していくか、引き続き動向を見守りたいところです。

