クラウド型のWAN高速化とは
クラウド型のWAN高速化とは、広域ネットワークであるWANの通信を、クラウド上の制御基盤や仮想機器を使って最適化する仕組みです。拠点ごとの専用機器だけに頼らず、クラウドアプリ利用時の遅延や通信量を抑える目的で使われます。通信品質の課題を見える化しながら、段階的に改善しやすい点も特徴です。
通信の遅延を抑える仕組み
WAN高速化とは、拠点間やクラウドとの通信で発生する遅延、データ量の増加、パケット再送を抑える技術です。クラウド型では、各拠点の通信をクラウド上のゲートウェイに集約し、圧縮やキャッシュ、経路制御を行います。回線を太くする前に通信の使い方を整える考え方といえるでしょう。
従来型との違い
従来型は、拠点ごとに専用機器を設置して通信を高速化する方式が中心でした。一方、クラウド型は、仮想アプライアンスやクラウド基盤を利用するため、設定変更や拠点追加を中央から進めやすい点が特徴です。ただし、既存機器や閉域網との相性は製品により異なります。小規模拠点から段階的に導入できるかも、比較時の見どころです。
検討が必要な企業
クラウド型WAN高速化は、複数拠点から同じクラウドサービスを利用する企業に向いています。例えば、営業所から基幹システムへアクセスする、海外拠点とファイルを共有する、Web会議の品質が不安定といった場面です。利用者の不満が「アプリが重い」という言葉で表れている場合、通信面の確認が必要です。
クラウド利用の広がりに対応
総務省の令和6年通信利用動向調査では、2024年時点で企業の80.7%がクラウドサービスを全社または一部部門で利用しています。クラウド利用が一般化するほど、社内ネットワークだけを整えても十分とは限りません。クラウド接続まで含めて、WAN高速化を検討する価値が高まっています。
参考:通信利用動向調査 令和6年企業編 問3(1)クラウドサービスの利用状況|政府統計の総合窓口
クラウド型WAN高速化でできること
クラウド型WAN高速化でできることは、通信速度の向上だけではありません。クラウドアプリへの経路を見直し、拠点間のデータ転送を効率化し、通信状況を可視化することで、利用者の体感品質を安定させる役割があります。原因を分けて考えると、回線増強が必要か高速化で足りるかを判断できます。
アプリの体感速度を整える
業務アプリが遅く感じる原因は、回線速度だけではありません。遠隔地との往復時間、データの重複送信、通信の再送が重なると、画面表示やファイル操作に時間がかかります。WAN高速化では、通信データを圧縮したり、同じデータを再利用したりして、利用者が感じる待ち時間の短縮を目指します。
SaaSへの接続経路を最適化
SaaSとは、ソフトウェアをインターネット経由で使うサービスです。各拠点からSaaSへ直接接続する場合、経路や混雑状況によって品質が変わります。クラウド型WAN高速化では、通信先にあわせて適した経路を選び、Web会議やクラウドストレージの利用を安定させやすくなります。本社経由でインターネットへ出る運用を見直したい企業にも有効です。
拠点間のデータ転送を効率化
本社と支社、国内拠点と海外拠点の間で大容量ファイルをやり取りする場合、距離による遅延が発生します。WAN高速化は、データの重複部分を削減したり、転送手順を最適化したりすることで、通信量を抑えます。バックアップや設計データの共有など、定期的な転送がある業務にも役立ちます。
通信状況を可視化する
クラウド型のサービスでは、管理画面から拠点別やアプリ別の通信状況を確認できる場合があります。どの拠点で遅延が起きているか、どのアプリが帯域を使っているかが見えると、改善策を決めやすくなるでしょう。問い合わせ対応も、感覚ではなく実測値をもとに進められます。
クラウド型WAN高速化のメリット
クラウド型WAN高速化のメリットは、利用者の体感速度を整えつつ、ネットワーク運用の負担を抑えやすい点です。拠点追加やクラウド移行が続く企業では、通信改善を個別対応ではなく、全体最適の視点で進められます。クラウド移行後の問い合わせ増加を抑えたい場合にも、検討しやすい施策です。
利用者の待ち時間を減らせる
メリットは、クラウドアプリや拠点間システムの待ち時間を減らしやすいことです。画面の切り替え、ファイル保存、検索処理の遅さは、従業員の小さな負担として積み重なります。WAN高速化で通信の無駄を減らせば、現場のストレス軽減や業務の停滞防止につながります。
導入や変更の負担を抑えやすい
クラウド型は、専用機器の調達や設置を抑えて始められる場合があります。設定変更も管理画面から行える製品であれば、拠点ごとの作業を減らせるでしょう。もちろん、初期設計やネットワーク調査は必要です。導入負担を見積もる際は、機器費用だけでなく、設計や運用の工数まで確認します。拠点展開のリードタイムも比較しておきましょう。
拠点追加に対応しやすい
新しい営業所や海外拠点を追加するたびに、個別に複雑な設定を行うと運用が属人化します。クラウド型WAN高速化は、ポリシーを中央で管理し、同じ方針を複数拠点へ展開しやすい点が利点です。事業拡大や組織再編が多い企業ほど、設定の再利用性を重視するとよいでしょう。
障害時の切り分けが進めやすい
通信トラブルでは、回線、端末、クラウドサービス、社内システムのどこに原因があるのか見えにくくなります。可視化機能があるWAN高速化サービスなら、遅延やパケットロスの状況を確認しやすくなります。復旧を保証するものではありませんが、調査の出発点を絞れる点は大きな価値です。
WAN高速化クラウドの比較ポイント
クラウド型WAN高速化を比較する際は、速度の訴求だけで判断しないことが重要です。対象となる通信、最適化方式、セキュリティ、運用支援を確認し、自社の遅延原因にあったサービスかを見極めましょう。導入後に期待した効果を得るためにも、事前に比較軸をそろえておくことが大切です。
対象通信の範囲を確認する
まず確認したいのは、どの通信を高速化できるかです。拠点間のファイル転送に強いサービスもあれば、SaaSやクラウドサーバへの接続改善を重視するサービスもあります。Web会議、仮想デスクトップ、基幹システムなど、困っている業務ごとに対象範囲を整理してから比較しましょう。クラウド移行の前後で通信先が変わる場合は、その変化も候補選定に反映します。
高速化の方式を比較する
WAN高速化の方式には、圧縮、キャッシュ、重複排除、プロトコル最適化、経路制御などがあります。どれか1つで十分とは限らず、通信内容によって向き不向きが変わります。例えば、暗号化された通信は中身を最適化しにくい場合があります。自社の利用アプリに適した方式か確認が必要です。
セキュリティ機能を確認する
クラウド型では、社外のクラウド基盤を通信経路に含めるため、セキュリティの確認が欠かせません。暗号化、アクセス制御、ログ管理、認証連携、データの保存有無を見ましょう。ゼロトラストやクラウド型セキュリティとの連携が必要な場合は、既存の認証基盤や監視体制とあわせて評価します。
運用監視と支援体制を見る
導入後に使い続けるには、監視画面の見やすさやサポート体制も重要です。遅延が起きたとき、社内担当者だけで一次切り分けできるか、ベンダーがどこまで調査を支援するかを確認します。海外拠点がある企業では、対応時間や多言語サポートの有無も比較材料です。
「自社に合う製品・サービスを診断してみたい」、「どんな観点で選べばいいかわからない」という方向けの診断ページもあります。
ITトレンドで過去資料を請求した方の、リアルなお悩みや要望から作成した簡単な質問に答えるだけで、最適な製品・サービスをご案内します。
無料で今すぐ利用できますので、下のリンクから診断を開始してください。
自社にあうクラウド型WAN高速化
自社にあうクラウド型WAN高速化を選ぶには、現状把握が欠かせません。遅延が発生する時間帯、影響を受ける拠点、対象アプリ、既存回線の契約内容を整理すれば、必要な機能と不要な機能を分けやすくなります。製品名や機能名だけで比べるより、実際の通信課題にあわせた判断がしやすくなります。
現状の遅延箇所を洗い出す
製品比較の前に、どこで遅延が起きているかを確認しましょう。本社と支社の間か、支社からクラウドへの通信か、リモートワーク端末から社内システムへの通信かで対策は変わります。利用者の声だけでなく、通信量、遅延、パケットロスを測定すると判断しやすくなります。短い時間帯だけ遅いのか、常に遅いのかも分けて見ましょう。
業務ごとの優先度を決める
すべての通信を同じように高速化する必要はありません。Web会議や受発注システムなど、止まると影響が大きい業務を優先します。優先度を決めておくと、帯域制御や経路制御の設定方針も明確です。現場部門と情報システム部門で、重要な業務をすりあわせることが大切です。
既存回線との役割を分ける
WAN高速化は、インターネット回線、閉域網、VPN、SD-WANを置き換えるとは限りません。既存回線を活かしながら通信の無駄を減らす場合もあります。SD-WANとは、複数の回線をソフトウェアで制御する仕組みです。高速化との役割分担を整理すると、過剰な投資を避けやすくなります。
効果指標を導入前に決める
導入効果を確認するには、事前に指標を決める必要があります。ファイル転送時間、アプリ応答時間、Web会議の切断回数、問い合わせ件数などを測るとよいでしょう。導入前後で同じ条件を比較すれば、費用対効果を説明しやすくなります。経営層への報告にも活用できます。
この記事をご覧の方には、以下の記事もおすすめです。あわせて参考にしてください。
WAN高速化と関連施策の違い
クラウド利用時の通信課題には、WAN高速化以外にも回線増強やSD-WAN、セキュリティ統合型のネットワークサービスが検討されます。それぞれ役割が異なるため、目的を分けて考えることが重要です。ここでは、WAN高速化と混同しやすい関連施策との違いを整理します。
回線増強との違い
回線増強は、通信容量を増やして混雑を緩和する施策です。動画や大容量ファイル転送が多く、帯域不足が主な原因であれば有効です。一方で、遠隔地との往復遅延や同じデータの再送が原因なら、WAN高速化のほうが課題にあう場合があります。まずは遅さの原因を切り分けましょう。
SD-WANとの違い
SD-WANとは、複数の回線をソフトウェアで制御し、アプリごとに適した経路を選ぶ仕組みです。WAN高速化は、圧縮やキャッシュ、重複排除により通信量や待ち時間を抑える点が異なります。経路の最適化が必要か、通信そのものの効率化が必要かで選び方が変わります。
SASEとの違い
SASEとは、ネットワーク機能とセキュリティ機能をクラウド上でまとめて提供する考え方です。拠点やリモートワークの接続を安全に管理したい場合に検討されます。WAN高速化は通信効率の改善を主な目的とするため、セキュリティ強化を重視する場合はSASEやゼロトラストとの役割分担を確認しましょう。
以下に違いをまとめました。
| 施策 | 主な目的 | 向いている課題 |
|---|---|---|
| WAN高速化 | 通信量や待ち時間の削減 | 拠点間通信、クラウド接続、ファイル転送の遅延 |
| 回線増強 | 通信容量の拡大 | 帯域不足による混雑、大容量通信の増加 |
| SD-WAN | 複数回線の制御と経路最適化 | 拠点ごとの回線品質差、クラウド接続経路の見直し |
| SASE | ネットワークとセキュリティの統合 | リモートワーク、クラウド利用時の安全なアクセス管理 |
これらの施策は、どれか1つだけを選ぶものとは限りません。例えば、SD-WANで経路を制御しながら、WAN高速化で通信量を削減する構成もあります。自社の課題が帯域不足なのか、遅延なのか、セキュリティ管理なのかを整理して検討しましょう。
クラウド型WAN高速化に関するFAQ
クラウド型WAN高速化は、回線、VPN、SD-WAN、セキュリティと関係するため、導入前に疑問が生じやすい分野です。ここでは、比較検討時によくある質問を整理し、判断に必要な観点を簡潔に紹介します。導入後の認識違いを防ぐためにも、よくある疑問を早い段階で整理しておきましょう。
- Q:既存回線を変えずに導入できますか
- 既存回線を活かして導入できるサービスもあります。ただし、回線品質が大きく不足している場合は、WAN高速化だけでは改善が限られる可能性があります。現状の帯域、遅延、利用アプリを確認したうえで判断しましょう。契約回線の見直しと並行して検討する方法もあります。
- Q:VPNの遅さにも効果がありますか
- VPNの遅さが通信経路や帯域利用に起因する場合、効果を見込めることがあります。一方で、暗号化方式、端末性能、認証処理が原因の場合は別の対策が必要です。VPNのログや通信状況を確認してから比較すると安心です。社外からの接続が多い企業では、認証や端末管理も確認しましょう。
- Q:SD-WANとは何が違いますか
- SD-WANは複数回線の制御や経路選択を得意とする仕組みです。WAN高速化は、通信量削減や応答時間の改善を重視します。両者は競合するだけでなく、あわせて利用される場合もあるため、目的を分けて検討しましょう。
- Q:セキュリティ対策は別に必要ですか
- WAN高速化サービスにセキュリティ機能が含まれる場合でも、自社の認証、端末管理、ログ監視との整合性は確認が必要です。クラウド経由の通信が増えるほど、アクセス制御や運用ルールの整備が重要です。
- Q:導入後は何を確認すべきですか
- 導入後は、アプリ応答時間、転送時間、通信量、問い合わせ件数を確認しましょう。利用者の体感だけで評価すると、改善範囲が曖昧です。導入前の数値と比較し、必要に応じてポリシーを見直すことが大切です。定期的に確認すれば、利用状況の変化にも対応できます。
まとめ
クラウド型WAN高速化は、拠点間通信やクラウド接続の遅延を抑え、業務アプリの体感品質を整えるための選択肢です。比較時は、対象通信、最適化方式、セキュリティ、運用支援を確認しましょう。自社にあうサービスを見極めたい方は、ITトレンドの資料請求を活用し、複数製品の機能や特徴を比較してみてください。



