今回取り上げるのは、テストセンター事業、テスト運営・受託事業、テスト等ライセンス事業を主力とする教育・試験関連企業、株式会社EduLabです。2026年9月期第1四半期は、売上高14億4百万円(前年同期比6.8%増)となり、テストセンター事業の利用者数増加が全体を支えました。
一方で、営業利益は25百万円の赤字、親会社株主に帰属する四半期純利益は1億2百万円の赤字です。ただし営業損失は前年同期の1億20百万円から縮小しており、構造改革の効果も見え始めています。
本記事では、同社の市場環境、決算内容、事業構造、AI事業の位置づけを整理し、IT・業務視点で「試験運営・学習支援・教育サービスのデジタル化」がどこまで進んでいるのかを読み解きます。
1. 市場背景と業界構造
同社の事業領域は、試験運営、テストセンター、教育・学習支援、AI英語学習サービスに関係します。
この領域では、試験のオンライン化、会場運営の効率化、学習データの活用、AIによる学習支援などがIT化の主なテーマになります。特にテストセンター事業は、受験者管理、会場運営、予約管理、本人確認、試験配信などが一般的に考えられ、業務プロセスそのものがシステム運用と密接に結びついています。
株式会社EduLabは教育プラットフォーム事業からは2024年3月に撤退済みであり、現在はテストセンターを中心とした事業構造へ整理が進んでいます。また、AI活用英語学習サービス「UGUIS.AI」では、英検®スピーキング対策機能や学習診断機能を追加しており、学習データを活用した個別最適化にも取り組んでいます。
デジタル化の影響を受ける側であると同時に、試験運営や学習支援のデジタル化を進める側の企業と整理できます。
2. 過去数年の業績推移
2026年9月期第1四半期の売上高は14億4百万円で、前年同期比6.8%増となりました。前年同期は13億15百万円で6.0%減だったため、足元では増収に転じています。
営業損益は25百万円の赤字ですが、前年同期の1億20百万円の赤字からは改善しています。費用面では人件費削減などにより販売費及び一般管理費が減少し、営業損失の縮小につながりました。
一方で、経常利益は29百万円で前年同期比71.2%減となりました。前年同期に計上されていた為替差益2億43百万円が発生せず、当四半期は為替差損12百万円を計上したためです。親会社株主に帰属する四半期純利益は1億2百万円の赤字となり、米国連結子会社の特別退職金等38百万円、法人税等68百万円、非支配株主持分利益25百万円の影響もありました。
株式会社EduLabは2024年9月期から2026年9月期までの中期経営計画の最終年度にあり、全利益区分の黒字維持を目指すフェーズです。売上面ではテストセンター事業が牽引している一方、AI事業では新サービスの先行ランニングコストが発生しており、投資と収益化のバランスが課題になっています。
IT視点では、同社の収益構造はテストセンターの利用者数や受託案件に左右される運営型ビジネスと、AIサービスのライセンス収入を組み合わせた形です。
3. 直近決算の重要ポイント
今回の決算で会社側が強調しているのは、「事業構造改革」「コスト構造改革」「組織体制・企業風土構造改革」の継続です。
特に、テストセンター事業は売上高8億89百万円で前年同期比20.0%増、セグメント利益は81百万円で273.4%増となりました。テストセンター利用者数が大幅に伸長したことが背景です。
一方、テスト運営・受託事業は売上高2億39百万円で13.7%減となりましたが、セグメント利益は27百万円となり、前年同期の赤字から黒字化しました。前年度単年度受注の剥落はあったものの、収益性は改善しています。
AI事業は売上高41百万円で5.6%増でしたが、セグメント損失は14百万円に拡大しました。これは下半期に売上計上見込みの新サービスに関する先行ランニングコストを計上したためです。
また、海外関係会社に対する外貨建債権の概ね全額を株式化したことで、2026年9月期から為替評価損益が大幅に低減する見込みです。これにより、為替による損益変動を抑える財務面の構造改革も進んでいます。
4. 事業構造と収益モデル
株式会社EduLabの主力は、テストセンター事業、テスト運営・受託事業、テスト等ライセンス事業です。
2026年9月期第1四半期の売上構成を見ると、テストセンター事業が8億89百万円と最も大きく、全体の中心です。続いて、テスト運営・受託事業が2億39百万円、テスト等ライセンス事業が1億55百万円、その他事業が78百万円、AI事業が41百万円となっています。
テストセンター事業は、一般的に試験会場運営や受験者対応など、リアルな運営基盤とデジタル管理が組み合わさる事業です。予約管理、本人確認、試験配信、結果処理など、業務フローの標準化とシステム運用が重要になります。
AI事業では、「UGUIS.AI」において自社サービスのライセンス収入が安定して推移していると記載されています。2025年10月には英検®スピーキング対策機能のベータ版を公開し、12月にはAIチャット「UGUIS先生」に学習診断機能を追加しました。学習データをもとに、間違えるポイントや改善傾向を自動で整理・可視化する機能は、学習支援におけるデータ活用の具体例です。
IT視点では、同社は「試験運営の効率化」と「AIによる学習支援」の両方を持つ企業です。ただし、収益の中心は現時点ではテストセンター事業であり、AI事業はまだ先行投資を伴う成長領域です。
5. 業界の注目ポイント
ポイント1:テストセンター運営の効率化
試験運営は、会場管理、予約、本人確認、受験者対応など多くの業務が発生します。これはIT導入で改善可能な領域です。テストセンター利用者数が伸びるほど、オペレーションの標準化とシステム管理の重要性が高まります。
ポイント2:AI学習支援の収益化
AI英語学習サービスは、学習データを活用して個別最適化を進める領域です。学習診断機能の追加は、AIを使った教育支援の具体的な取り組みです。ただし、現時点ではAI事業は赤字であり、下半期以降の新サービス売上計上が重要になります。
ポイント3:為替リスクの低減
海外関係会社に対する外貨建債権を株式化したことで、為替評価損益の変動は大幅に低減する見込みです。これはIT導入で改善する論点ではありませんが、経営管理上の安定性には関係します。
6. ITトレンド編集部の考察
同社は、教育・試験領域の中でも、テストセンター運営を収益の中心に据えながら、AI学習支援へ展開している企業と考えます。
IT導入検討者の視点で見ると、株式会社EduLabの価値は「試験運営のデジタル化」と「学習データ活用」の2点にあると考えます。特にテストセンター事業は、リアルな会場運営とシステム管理が不可分であり、運営品質がそのまま事業価値につながります。
一方で、AI事業はまだ成長途上です。UGUIS.AIの機能追加は明確な進展ですが、売上規模は41百万円にとどまり、先行コストにより赤字です。導入・比較検討では、既存の試験運営基盤として見るのか、AI学習サービスの将来性を見るのかを分けて評価する必要があります。
また、中期経営計画の最終年度として、全利益区分の黒字維持を目指す中で、コスト構造改革が重要な局面にあります。営業損失は縮小しているため、今後はテストセンターの成長を維持しながら、AI事業をどの程度収益化できるかが焦点です。
7. まとめ
株式会社EduLabを一言で表すなら、テストセンター運営を軸にAI学習支援へ展開する教育・試験DX企業と考えます。
2026年9月期第1四半期は、売上高14億4百万円で6.8%増となり、テストセンター事業が全体を牽引しました。一方で、営業損失は縮小したものの、最終損益は赤字となっています。
IT・業務観点では、同社の事業は、試験運営の標準化、受験者管理、学習データ活用、AIによる個別学習支援と関係します。現時点ではテストセンター事業が収益の柱であり、AI事業は先行投資段階です。導入・比較検討では、運営基盤の安定性とAIサービスの成長可能性を分けて見ることが重要になります。

