株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)は、法人向けネットワークサービスとシステムインテグレーション(SI)を複合して提供する企業です。ネットワークサービスには、インターネット接続やモバイル、セキュリティなどが含まれます。個人向けモバイルサービス「IIJmio」や、ATM運営事業も手がけています。会計基準はIFRS(国際財務報告基準)を採用しています。
今回は2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)の決算です。売上収益は976億4百万円(前年同期比+27.1%)、営業利益は65億88百万円(同+9.2%)となりました。税引前四半期利益は67億12百万円(同+17.0%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は43億95百万円(同+16.4%)で、増収増益を確保しています。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【IIJ(証券コード:3774)徹底解説】ネットワーク×運用×セキュリティを“ストック型”で伸ばす──2026年3月期3Q(3Q25累計)決算で読む、情シスアウトソースとデータセンター投資の意味
1. 今期スタートを取り巻く市場環境
同社の決算短信によると、当四半期の国内景気は緩やかに回復しました。一方で、中東情勢の影響や金融資本市場の変動には引き続き注意が必要だとしています。企業のIT投資を取り巻く環境は、底堅さと不透明感が同居する状況と言えます。
同社が主に関わる法人ICT関連市場では、クラウドやAIの活用が企業活動に浸透しつつあります。それに伴いインターネットトラフィックは増え続け、サイバーセキュリティ対策の重要性も一段と高まっていると同社は説明しています。企業のネットワークは、社内閉域網からインターネット技術を融合した複合的な構成へと変わってきています。
企業のAI活用が本格化すると、堅牢で柔軟なネットワークと、その安定運用の重要性はさらに増すと考えられます。ネットワークと運用、セキュリティを一体で提供できる事業者にとって、需要を取り込みやすい局面に入っていると見られます。
2. 業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
株式会社インターネットイニシアティブ 2027年3月期 第1四半期決算短信(PDF)
当第1四半期の売上収益は976億4百万円(前年同期比+27.1%)となりました。内訳は、ネットワークサービスが461億1百万円(同+8.4%)、SI(機器販売を含む)が507億39百万円(同+51.2%)です。ATM運営事業は7億64百万円(同+2.0%)でした。
売上原価は796億33百万円(同+32.4%)と売上の伸びを上回り、売上総利益は179億71百万円(同+7.7%)となりました。販売管理費等は113億83百万円(同+6.8%)で、営業利益は65億88百万円(同+9.2%)です。ファンドに係る金融資産評価益などが加わり、税引前四半期利益は67億12百万円(同+17.0%)となりました。
四半期利益は44億46百万円(同+16.7%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は43億95百万円(同+16.4%)です。財政面では、資産合計が3,637億58百万円、親会社所有者帰属持分比率は44.2%となりました。データセンター関連資産の取得などにより、有形固定資産は前期末から増加しています。
3. 直近決算の重要ポイント
今回の決算で最も目を引くのは、売上収益の27.1%増という高い伸びです。同社は、法人向けモバイル端末導入や海外でのサーバ構築といった大型案件の寄与により、売上が想定を大きく上回ったと説明しています。特にシステム構築及び機器販売の売上高は241億90百万円(前年同期比+106.9%)と倍増しました。
一方で、利益の伸びは売上ほど大きくありません。低利なハードウェア導入中心の大型案件や、インフレによるコスト増加が重なったためです。売上総利益率はSIが11.7%(前年同期14.1%)、ネットワークサービスが25.3%(同27.3%)に低下しました。それでも利益面は概ね想定通りに推移したと同社は説明しています。
通期の業績予想は据え置かれ、売上収益3,850億円(前期比+11.5%)、営業利益385億円(同+10.5%)を見込んでいます。税引前利益は370億円(同+5.0%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は250億円(同+3.4%)の計画です。第1四半期の進捗率は売上収益で約25.4%、営業利益で約17.1%となりました。年間配当は43円(前期39円)を予定しています。
4. 今期の重点領域と収益構造
IIJの収益は、毎月の利用料が積み上がるネットワークサービスとシステム運用保守、一時的な売上となるシステム構築及び機器販売に大きく分かれます。当第1四半期のシステム運用保守の売上高は265億49百万円(前年同期比+21.4%)で、継続的な収益の土台も着実に伸びています。
ネットワークサービスでは、アウトソーシングサービスが177億30百万円(同+11.5%)と伸び、セキュリティ関連サービスが増収に寄与しました。法人IoT等用途向けのモバイル回線数は約350万回線に達し、法人向けインターネット接続サービスの契約総帯域は前年同期から約36%拡大しています。トラフィック増加という市場の変化が、契約の数字にも表れていると言えます。
受注面も好調です。SIの受注高は713億79百万円(前年同期比+57.5%)、受注残高は1,795億50百万円(同+41.2%)となりました。シンガポール子会社でのGPU基盤構築の受注約120億円も含まれており、AI関連のインフラ需要を取り込み始めていると見られます。データセンター関連の設備投資も継続しており、中長期の成長に向けた基盤づくりを進めています。
5. 業界の注目ポイント
ポイント1:AI活用の本格化で高まるGPU基盤・インフラ需要
IIJは当第1四半期に、シンガポール子会社でGPU基盤構築の案件を約120億円受注しました。企業や組織がAIの学習・推論を本格的に進めるには、計算資源とそれを支えるネットワーク、運用体制が欠かせません。インフラ事業者にとって、AI関連案件は新たな成長機会になっていると考えられます。
ただし、GPUなどのハードウェアを多く含む案件は、売上は大きくても利益率が低くなりやすい面があります。案件の規模拡大と収益性の確保をどう両立させるかが、今後の業界共通の課題になると見られます。
ポイント2:セキュリティとネットワーク運用の一体提供
企業のネットワークがクラウドやインターネットを組み合わせた構成に変わるなかで、セキュリティ対策の重要性が高まっています。IIJのアウトソーシングサービスはセキュリティ関連を中心に2桁の伸びとなりました。経済産業省のサプライチェーンセキュリティ対策評価制度への対応を支援するアセスメントサービスの準備も進めています。
ネットワークの提供から運用、セキュリティまでをまとめて任せられることは、情報システム部門の人手が限られる企業にとって大きな利点です。データセンターの選定においても、こうした一体提供の力が比較のポイントになると考えられます。
ポイント3:大型SI案件がもたらす売上と利益率のギャップ
当第1四半期は、売上収益が27.1%増えた一方で、営業利益の伸びは9.2%にとどまりました。機器販売を含む大型案件は売上の規模を押し上げますが、利益への寄与は相対的に小さくなります。売上の伸びだけで事業の勢いを判断しにくい点には注意が必要です。
その一方で、案件の受注が運用保守などの継続収益につながれば、長期的な利益の積み上げが期待できます。受注残高の大幅な増加が、今後の安定収益にどう結びつくかが注目されます。
6. ITトレンド編集部の考察
2027年3月期第1四半期は、大型案件の寄与で売上収益が大きく伸び、利益も想定通りに確保した好スタートと整理できます。システム構築の売上倍増に目が向きがちですが、運用保守やネットワークサービスといった継続収益も着実に伸びている点は評価できます。
一方で、営業利益の進捗率は約17.1%で、売上収益の約25.4%に比べて低めです。会社側は第2四半期累計の営業利益を153億50百万円と、前年同期並みの水準で見込んでいます。低利な案件の比率とコスト増加の影響が、今後どこまで利益率を押し下げるかは注視が必要です。
中長期的には、SIの受注残高1,795億50百万円とGPU基盤構築の受注が示すように、AI関連のインフラ需要が同社の成長を支える柱になると見られます。データセンター投資の回収と、継続収益の積み上げが進むかどうかが焦点になりそうです。
7. まとめ
IIJを一言で表すと、「ネットワーク・運用・セキュリティの継続収益を土台に、AIインフラ需要も取り込み始めた企業」です。
2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)の業績は以下のとおりでした。
- 売上収益 976億4百万円(前年同期比+27.1%)
- 営業利益 65億88百万円(前年同期比+9.2%)
- 税引前四半期利益 67億12百万円(前年同期比+17.0%)
- 親会社の所有者に帰属する四半期利益 43億95百万円(前年同期比+16.4%)
- SI受注高 713億79百万円(前年同期比+57.5%)、受注残高 1,795億50百万円(同+41.2%)
通期(2027年3月期)の業績予想は以下のとおりです。
- 売上収益 3,850億円(前期比+11.5%)
- 営業利益 385億円(前期比+10.5%)
- 税引前利益 370億円(前期比+5.0%)
- 親会社の所有者に帰属する当期利益 250億円(前期比+3.4%)
- 年間配当 43円(予想)
大型案件の利益率と、受注残高の収益化ペースが今後の焦点となりそうです。
ITトレンド編集部
IT製品の比較サイト「ITトレンド」の編集部です。ITトレンドはイノベーションが2007年より運営している法人向けIT製品の比較・資料請求サイトで、累計訪問者数2,000万人以上、3,750製品以上を掲載しています。読者がIT製品・サービスを比較検討する際に役立つ情報や、システムを活用した社内の課題解決のヒントになる情報を日々発信しています。

