AI CROSS株式会社は、SMSやRCSといったメッセージングサービスを基盤に、企業の顧客コミュニケーションやマーケティング活動を支援するIT企業です。主力サービスであるSMS配信プラットフォーム「絶対リーチ!SMS」などを通じ、企業と顧客のコミュニケーションをデジタル化するサービスを提供しています。
2025年12月期の業績は、売上高41億51百万円(前期比12.0%増)、営業利益3億70百万円(同10.6%増)と増収増益となりました。さらに、2025年にはマーケティング支援企業ロウプ社を子会社化し、メッセージングサービス中心の事業から「メッセージング×AI」の統合マーケティング支援モデルへの転換を進めています。
本記事では、ビジネスコミュニケーション市場の動向、同社の事業構造、今回の決算のポイントを整理しながら、企業のマーケティング業務におけるIT活用の視点から同社の位置づけを解説します。
1. 市場背景と業界構造
AI CROSS株式会社が属するのは、企業と顧客のコミュニケーションを支援するビジネスコミュニケーションプラットフォーム市場です。企業は顧客への通知、本人認証、キャンペーン配信などでSMSやチャットを活用しており、こうしたコミュニケーションをITサービスとして提供する企業が存在します。
市場の成長性については、デロイト トーマツ ミック経済研究所の調査によると、2030年度にはSMSの配信数が142億68百万通に達すると予測されています。スマートフォンを前提とした顧客接点の増加により、メッセージングサービスの利用は今後も拡大すると見込まれています。
また、SMSの次世代規格であるRCS(Rich Communication Services)の普及や、MA(マーケティングオートメーション)との連携が進むことで、企業のマーケティング活動の中でメッセージングの役割が拡大していくとされています。
この市場では、IT化やデータ活用が主に次の業務領域で進んでいます。
- 顧客への通知・認証メッセージ
- マーケティングキャンペーン配信
- 顧客データの分析
- CRMやMAとの連携
つまり、企業の「顧客コミュニケーション業務」をITで効率化する領域です。AI CROSSは、SMSなどのメッセージングサービスを提供することで、企業の顧客接点のデジタル化を支援する企業と位置づけられます。
2. 過去数年の業績推移
業績を見ると、AI CROSS株式会社は直近数年間で安定した成長を続けています。
2024年12月期の売上高は37億5百万円で、前期比13.9%増でした。2025年12月期は41億51百万円で、前期比12.0%増となっています。
営業利益は2024年12月期が3億35百万円(前期比14.7%増)、2025年12月期が3億70百万円(前期比10.6%増)です。経常利益は3億66百万円(前期比12.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1億65百万円(前期比11.3%増)となりました。
利益率の指標を見ると、売上高営業利益率は8.9%で前期の9.0%とほぼ同水準です。ROEは9.4%、ROAは13.4%となっています。
主力のSmart AI Engagement事業は売上高40億14百万円(前期比8.3%増)、セグメント利益10億50百万円(前期比20.1%増)と増収増益を達成しました。金融や人材関連など特定業界に向けた施策が収益性向上に寄与したとされています。
3. 直近決算の重要ポイント
今回の決算の最大のポイントは、事業モデルの転換です。
会社側は、従来の「メッセージングサービスのプラットフォーム提供」から、「メッセージングサービス×AI」によるマーケティングソリューション提供への転換を進めていると説明しています。
具体的には、2025年10月にマーケティング支援企業である株式会社ロウプを子会社化しました。これにより、新たに「マーケティングソリューション事業」が追加されました。
この新事業では、次のようなサービスを提供しています。
- 広告企画
- プロモーション
- クリエイティブ制作
- マーケティング戦略立案
ロウプ社が持つデータ分析やCRM/MA運用ノウハウと、AI CROSS株式会社のメッセージングプラットフォームを組み合わせることで、統合的なマーケティング支援を提供する狙いです。
また、同社は中期経営計画「AIX2027」を発表しており、次期(2026年12月期)の業績予想として、売上高53億円(前期比27.7%増)、営業利益6億円(同61.9%増)と大幅な成長を見込んでいます。
4. 事業構造と収益モデルの解説
AI CROSS株式会社の事業は大きく2つのセグメントで構成されています。
Smart AI Engagement事業
売上高40億14百万円で、全体売上の大半を占める主力事業です。
主なサービスには以下があります。
- SMS配信サービス「絶対リーチ!SMS」
- RCS配信サービス「絶対リーチ!RCS」
- チャットボットプラットフォーム
- ノーコードAI分析ツール「Deep Predictor」
これらは企業の顧客コミュニケーションやマーケティング業務に利用されます。
マーケティングソリューション事業
2025年から新たに追加された事業です。売上高は1億37百万円となっています。
広告企画やプロモーション、データ分析など、マーケティング業務の支援を行います。
IT視点で見ると、この会社のサービスは企業の次の業務プロセスに関係します。
- 顧客通知
- マーケティングメッセージ配信
- CRM運用
- 顧客データ分析
つまり、企業の「顧客コミュニケーションとマーケティング業務」をITで支援するサービスです。
5. 業界の注目ポイント
ポイント1:顧客コミュニケーションのデジタル化
企業は顧客への連絡や通知をデジタルチャネルへ移行しています。SMSやチャットなどのメッセージングサービスは、IT導入によって効率化できる領域です。
ポイント2:マーケティングデータ活用
CRMやMAと連携して顧客データを活用するマーケティング手法が広がっています。これはITによるデータ分析や自動化によって改善可能な領域です。
ポイント3:メッセージング×AI
顧客行動データを分析し、AIを活用したマーケティングの高度化が進んでいます。
6. ITトレンド編集部の考察
AI CROSS株式会社は、SMS配信を中心としたメッセージングサービス企業から、マーケティングテック企業へと事業を拡張している段階にあります。
特に注目すべき点は、メッセージング基盤を持ちながら、マーケティング支援領域へ拡張していることです。メッセージングサービス単体ではなく、データ分析やCRM運用を含めたマーケティング支援を提供する方向に進んでいます。
企業が同社サービスを検討する場合、単なるSMS配信ツールとして導入するのではなく、CRMやMAなど既存のマーケティングシステムとどのように連携するかを整理することが重要になると考えます
7. まとめ
AI CROSS株式会社を一言で表すと、
「メッセージングサービスを基盤にAIマーケティングへ拡張するコミュニケーションテック企業」です。
2025年12月期は、
- 売上高41億51百万円(+12.0%)
- 営業利益3億70百万円(+10.6%)
と安定した増収増益となりました。
IT・業務視点で見ると、同社は企業の顧客コミュニケーション業務とマーケティング業務のデジタル化を支援する企業です。SMSやRCSといったメッセージング技術とAIを組み合わせることで、マーケティングの高度化を支援する領域に位置しています。
企業担当者が同社サービスを検討する際は、顧客通知ツールとしての利用だけでなく、CRMやMAと連携したマーケティング施策全体の中でどのように活用するかを整理することが重要になります。

