「ここまでやったのだから、やめられない」——その判断は正しいでしょうか
3年かけて開発してきたプロジェクトが、どう見ても成果が出ていない。でも「ここまでかけたコストを無駄にはできない」という理由で続けてしまう。
2時間並んでいたのに、まだ入場できない。「もうここまで待ったのだから」と、さらに並び続ける。
こうした判断の背後にある心理的な構造に名前をつけた概念が「サンクコスト」と「コンコルド効果」です。
サンクコストとは何か
サンクコスト(Sunk Cost)とは、すでに支出してしまって回収不可能なコストのことを指します。時間・お金・労力など、すでに使ってしまったリソースです。
経済学・意思決定理論の観点では、合理的な判断はサンクコストを無視して行われるべきとされています。過去に使ったコストは、どんな選択をしても戻ってきません。だから意思決定の際には「これから何が得られるか」だけを考えるべき——これが理論上の正解です。
しかし人間は実際にはこれができません。「3年かけたプロジェクトをやめる」ことに強い抵抗を感じる。「支払った授業料の元を取ろう」と続けたくなる。「せっかく来たのだからもう少し見ていこう」と動けなくなる。これが「サンクコストの誤謬」と呼ばれる認知バイアスです。
コンコルド効果——歴史が残した教訓
サンクコストの誤謬を語るとき、必ず引き合いに出されるのが「コンコルド」の事例です。
コンコルドは、イギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機です。1960年代から開発が始まり、途中で採算が取れないことが明らかになっていたにもかかわらず、「ここまで投資したのだから」という理由で開発が続けられました。結果として莫大なコストをかけて完成したものの、商業的には失敗に終わりました。
この事例から、サンクコストにとらわれた意思決定を「コンコルド効果」あるいは「コンコルドの誤謬」と呼ぶようになりました。国家規模のプロジェクトでも、合理的な撤退判断より「ここまでやったから」という心理が優先されることがある——その普遍性が、この言葉を世界中で使われる概念にしました。
ビジネスの現場で起きる「やめられない」のパターン
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