Microsoftは2026年7月6日、Windows 11 Insider Preview Build 26300.8772のリリースノートで、新しい復旧機能「Cloud Rebuild(クラウドリビルド)」を発表しました。OSが起動しない状態からでも、Windows RE(回復環境)から直接Windows UpdateへアクセスしてOSイメージとデバイスドライバーの両方をダウンロードし、PCをクリーンな状態に再構築できる仕組みです。USBメディアの用意も、カスタムイメージの管理も、既存OSの健全性への依存もなく、Windows 11の復旧オペレーションを根本から変える可能性のあるアップデートといえます。
Cloud Rebuildとは——「PCをリセット」との違い
Windows 11にはこれまでも「PCをリセット(Reset this PC)」という機能があり、初期化・OS再インストールを行える仕組みが提供されていました。ただし、これらは基本的に「現在動作しているOSの中から」実行することが前提で、OSが起動できない状態やシステムファイルが破損しているケースでは実質的に使えない場面もありました。
Cloud Rebuildが従来と大きく異なるのは、Windows RE(Windows Recovery Environment)から直接実行でき、Windows UpdateからOSイメージ・デバイスドライバーの両方を取得して再インストールする点です。既存OSの状態に依存しないため、「Windowsが起動しなくなった」「システム更新が原因で復旧できない」といった、これまでUSBインストールメディアや管理者による物理対応が必要だったケースでも、ネットワーク接続さえあれば端末単体で復旧が完結する構成になっています。
実行手順——Windows REから3ステップで開始
現時点でのプレビュー版での実行手順は、リリースノートに以下のように示されています。
- Windows RE(回復環境)で「トラブルシューティング」→「回復とアンインストール」→「Cloud rebuild」を選択
- 有線Ethernetまたは Wi-Fi でネットワークに接続
- インストール対象のWindowsビルド・エディション・言語を確認し、データ消失に関する警告を承認してから再構築を開始
WinREから直接操作できるため、OSが起動不能な状態でも実行可能です。有線・無線どちらのネットワークにも対応しており、Wi-Fi設定情報が失われた端末でも、その場でSSIDとパスワードを入力して復旧を進められる想定です。データ消失を伴う操作である点は従来のリセット同様のため、社内運用ではバックアップ設定の確認と組み合わせた運用設計が前提になります。
併せて発表された「バックアップの既定有効化」——26H2で企業運用が変わる
Cloud Rebuildと同時に、Windows 11 バージョン26H2から、Microsoft Entra参加・Entraハイブリッド参加の対象デバイスで、Windows設定バックアップ(Windows settings backup)がデフォルトで有効になることも公表されました。ユーザー設定とMicrosoft Storeアプリの一覧が自動的にキャプチャされ、端末の再イメージ化・リセット後にも慣れた環境へすばやく復帰できるようになる設計です。
管理者側は既存ポリシーで挙動を上書きでき、明示的な設定が優先されます。復元操作自体はオプトインで管理者管理下にあり、勝手に個人設定が復元されるわけではありません。Cloud Rebuildと組み合わせることで、「起動不能のトラブル発生 → Cloud Rebuildで再構築 → 復元は管理者判断」という新しい復旧サイクルが企業運用の標準になっていく方向性が明確になっています。
その他のアップデート——アカウント制御UI刷新やアクセシビリティ改善
同ビルドには周辺機能の改善も含まれています。アカウント制御(Account Control)フライアウトはモダンなデザインにリニューアルされ、サブスクリプション状態をひと目で確認できるバッジ表示が追加されました。個人向けMicrosoft 365のサブスク管理が可視化される流れは、法人ユースにも影響しそうな要素です。
このほか、Bluetoothクイック設定ページがゲームパッド入力で操作可能になった点、垂直タスクバー時に検索アイコンが非表示になる不具合の修正、モンゴル語Baitiフォントの表示改善、スクリーンリーダー対応の改善など、アクセシビリティ・多言語対応の底上げも含まれています。Outlookの閉じるボタン不応答問題や、タイトルバーツールチップのリソース利用改善も入っており、日常業務での細かなストレスを減らすアップデートとして扱われる印象です。
情シスへの示唆——USB・カスタムイメージ運用からの脱却
Cloud Rebuildが正式提供に進んだ場合、情シス現場の運用は少なくない範囲で見直しが必要になりそうです。1つ目は、USBインストールメディアやWDS(Windows Deployment Services)、SCCMなどの復旧配布インフラの位置づけです。エッジケースや大量展開では引き続き必要ですが、日常的なトラブル対応の相当部分がクラウド経由の端末セルフ復旧に置き換わる可能性があります。
2つ目は、リモートワーク・ハイブリッドワーク環境での対応スピードです。従業員が自宅などの遠隔地でOS起動不能に陥った場合、これまでは端末回収・貸出機提供・宅配などの物理オペレーションが必要でした。Cloud Rebuildが使えれば、ヘルプデスクからのガイドで自己復旧を完了できるケースが増え、業務ダウンタイムを大幅に短縮できる余地があります。3つ目は、ドライバー管理です。従来はイメージ配布に含めていたドライバーがWindows Update経由で自動取得される設計のため、社内標準ドライバーの管理ポリシーも改めて整理する必要が出てきます。
まとめ
Cloud Rebuildは、「OSが起動しなくても、ネットワークにさえつながれば端末単体で復旧できる」という新しい復旧モデルを、Windows標準機能として提示するアップデートです。26H2からのバックアップ既定有効化と組み合わせることで、企業デバイスの復旧・再セットアップフローがクラウド前提に整理されていく方向性が見えてきました。
現時点はInsiderチャネルのプレビュー段階のため、本番運用への組み込みはまだ検討フェーズです。ただし、GA後にはUSBメディアやカスタムイメージに依存した現行の復旧運用を見直す議論が避けられなくなりそうです。情シス部門としては、ネットワーク要件・ドライバー管理・バックアップポリシーの3点を軸に、Cloud Rebuild時代の復旧設計を早めに検討しておくのが実務的な備えになりそうです。

