三菱重工業(以下、三菱重工)とPreferred Networks(以下、PFN)は2026年9月16日、資本業務提携を発表しました。両社は8月31日に資本業務提携契約を結んでいます。三菱重工はPFNに総額100億円を出資し、両社による共同開発を本格化させます。
対象となるのは、社会インフラやナショナルセキュリティをはじめとする「ミッションクリティカル領域」です。高い信頼性と即応性が求められる機械やシステムについて、知能化と自律化に向けたAI技術を共同で研究開発し、社会実装を進めます。
8月31日に契約締結、第三者割当増資で100億円を出資
出資は、PFNが実施する第三者割当増資を三菱重工が引き受ける形で行います。PFNの株主総会での承認など、必要な手続きが完了することが条件です。出資総額は100億円です。
公式発表では、取得する株式の数や出資比率は示されていません。払込の時期についても記載はありません。共同開発で生み出す製品やサービスの名称、具体的なスケジュールも示されていません。
6月の業務提携を、中長期の協力体制へ
両社は2026年6月に、業務提携を発表していました。ミッションクリティカル領域で、機械・システムの知能化と自律化に向けた最先端のAI技術を共同開発するという内容です。今回の資本業務提携は、この取り組みを中長期的に進めるためのものです。
両社は、業務提携よりも強固な協力体制を築くと説明しています。「小さく、早く、変わり続ける」という価値観を共有し、既存の枠組みにとらわれずに新たな価値を生み出すとしています。
ミッションクリティカル領域でAI実装が求められる背景
発表では、国際情勢の変化や労働力不足、社会インフラの老朽化を背景に挙げています。こうした領域では、レジリエンスを高め、安心・安全を維持するために最先端AIの実装が求められています。一方で、AIの仕組みを理解・制御し、現場の設備や制御技術と融合させることが不可欠だとしています。
加えて、外部環境に左右されずにAIを使い続けるための視点も示されています。日本が主体性を持つには、AI技術やデータ、運用ノウハウを国内に蓄積することが重要だという考え方です。
両社の役割は明確に分かれています。三菱重工は社会インフラや航空・防衛・宇宙の分野で、設計から保守までの技術と、現場に結び付いたデータを持ちます。PFNはAI半導体や計算基盤、生成AI基盤モデルからソリューションまでを自社で一貫して開発しています。
両社トップのコメント
三菱重工の伊藤栄作社長は、PFNが国産AIをハードとソフトの両面で社会に実装しようとする姿勢を評価しました。そのうえで、同社のものづくりの精神と深く通じ合うと述べています。今回の提携は、同社が掲げる「ITO」(Innovative Total Optimization)の方向性に沿うと説明しました。
PFNの岡野原大輔社長は、ミッションクリティカル領域でのAI実装を世界的にも難度の高い挑戦だと位置付けました。現場の制約を理解し、信頼性やリアルタイム性を高める必要があると指摘しています。そして、ハードウェアとソフトウェアを一体で最適化することが求められると述べました。
日本企業への示唆
インフラや製造の現場でAIの導入を検討する企業にとって、今回の提携は参考になります。モデルの性能だけでなく、現場固有の制約や継続的な稼働性をどう確保するかが論点になるためです。AIベンダーを選ぶ際は、制御技術や設備との統合まで支援できるかを確認する価値があります。
「国内に技術やデータ、運用ノウハウを蓄積する」という考え方も、経営層が押さえたい視点です。重要な業務にAIを使う場合、提供元の事情で利用が止まるリスクを評価しておく必要があります。データの保管場所や、モデルを自社で管理できる範囲を調達要件に含めるかどうかを検討するとよいでしょう。
まとめ
三菱重工はPFNに総額100億円を出資し、6月に始めた業務提携を資本業務提携へ発展させます。社会インフラやナショナルセキュリティの領域で、機械・システムの知能化と自律化に向けたAIを共同開発します。
出資比率や払込時期、共同開発の具体的な成果物やスケジュールは、今回の発表では示されていません。今後、両社から続報が出た段階で、実装分野や提供形態を確認していく必要があります。

