株式会社ディスコ(証券コード:6146)は、半導体製造装置である精密加工装置と、消耗品である精密加工ツールを製造・販売する企業です。ダイシングソー、レーザソー、グラインダ、ポリッシャなどの装置に加え、ダイシングブレードやグラインディングホイールといった消耗品を手がけています。子会社23社、関連会社2社とともにグループを構成し、保守・サービスも提供しています。
2027年3月期第1四半期の売上高は1,143億08百万円となり、前年同期比+27.1%の増収となりました。営業利益は490億33百万円(同+42.2%)、経常利益は484億41百万円(同+42.5%)です。親会社株主に帰属する四半期純利益は342億21百万円(同+44.0%)となり、増収を大きく上回る増益で今期をスタートしています。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【株式会社ディスコ(証券コード:6146)徹底解説】生成AI時代の“装置×消耗品モデル”
1. 今期スタートを取り巻く市場環境
同社は決算短信のなかで、当第1四半期は生成AIの需要拡大を背景にデータセンタ向け投資が継続したと説明しています。先端ロジックやHBM(High Bandwidth Memory:高帯域幅メモリ)などの高性能半導体向け需要が高水準で推移したという認識です。半導体市場全体ではなく、AI関連の特定用途が牽引する構図が続いています。
この環境のもと、精密加工装置の出荷は高性能半導体向けの高付加価値製品を中心に好調に推移しました。消耗品である精密加工ツールの出荷も、顧客の設備稼働率等に連動して高水準で推移したとしています。装置が売れるだけでなく、すでに導入された装置が高い稼働率で動いていることを示す内容です。
当期の出荷額は1,359億06百万円となり、前年同期比+22.3%となりました。売上高の増加率+27.1%は出荷額の伸びを上回っています。同社は機械装置の検収が進捗したことなどにより売上高が増加したと説明しており、過去に出荷した装置の売上計上が今期に寄与したと見られます。
2. 業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
株式会社ディスコ 2027年3月期 第1四半期決算短信(PDF)
当第1四半期の売上高は1,143億08百万円となり、前年同期の899億14百万円から243億94百万円増加しました。増収率は+27.1%です。前期の2026年3月期通期は売上高4,368億89百万円(前期比+11.1%)でしたので、期初から増収ペースが大きく加速しています。
営業利益は490億33百万円で、前年同期の344億80百万円から145億53百万円の増加です。増益率は+42.2%となりました。営業利益率は42.9%となり、前年同期の38.3%から4.6ポイント上昇しています。
損益構造を分解すると、売上総利益は815億43百万円となり、前年同期の612億61百万円から大きく伸びました。販売費及び一般管理費は325億09百万円で、前年同期の267億80百万円から増加しています。同社は為替の影響と高付加価値製品の増加などにより売上総利益率が上昇し、人件費や研究開発費など販売管理費の増加を吸収して増益になったと説明しています。
経常利益は484億41百万円(前年同期比+42.5%、経常利益率42.4%)、親会社株主に帰属する四半期純利益は342億21百万円(同+44.0%、純利益率29.9%)です。前期の2026年3月期通期は営業利益1,849億89百万円、当期純利益1,355億21百万円でしたので、四半期単独で前期通期の4分の1を超える利益を計上した計算になります。
財政状態は、当第1四半期末の総資産が7,511億59百万円となり、前期末から77億48百万円増加しました。棚卸資産を中心とした流動資産の増加が主因です。負債は1,686億36百万円で前期末から133億50百万円増加し、純資産は5,825億23百万円で56億01百万円減少しました。自己資本比率は77.3%となり、前期末の78.9%から1.6ポイント低下しています。
3. 直近決算の重要ポイント
今回の決算で最も重要なのは、増収率を大きく上回る増益率が実現した点です。売上高が+27.1%伸びるなかで、営業利益は+42.2%、四半期純利益は+44.0%と伸びました。売上の増加分が高い比率で利益に転換していることを意味します。
その源泉は売上総利益率の改善にあります。売上高1,143億08百万円に対する売上総利益は815億43百万円で、率にすると71.3%です。前年同期は売上高899億14百万円に対し売上総利益612億61百万円でしたので、率は68.1%でした。同社は為替の影響と高付加価値製品の増加を要因として挙げています。
もうひとつ押さえておきたいのが、業績予想の開示方法です。同社は半導体・電子部品業界において顧客の投資意欲が短期間で激しく変動し需要予測が困難なため、業績予想を「1四半期先までの開示」としています。今回は市場環境と業績動向を精査した結果、これまで未開示であった4-9月期(中間期)の業績予想を開示しました。あわせて未定であった中間配当の予想も開示しています。
4. 今期の重点領域と収益構造
同社の収益モデルは、精密加工装置という設備投資型の商材と、精密加工ツールという消耗品の組み合わせで成り立っています。装置は顧客の設備投資サイクルに左右されて変動しやすい一方、消耗品は顧客の設備稼働率に連動します。当期は装置と消耗品の双方が高水準で推移し、この2本立ての構造が増収を支えました。
当期の出荷額1,359億06百万円に対し、売上高は1,143億08百万円です。出荷から検収までのタイムラグがあるため、出荷額は将来の売上を先行して示す指標となります。出荷額が前年同期比+22.3%と伸びていることは、次の四半期以降の売上にも一定の下支えがあることを示すと考えられます。
会社が開示した4-9月期(中間期)の業績予想は、売上高2,428億円、営業利益1,049億円、経常利益1,048億円、当期純利益738億円です。前年同期にあたる2026年3月期中間期の売上高は1,945億37百万円でしたので、+24.8%の増収を見込む計画になります。4-9月期の出荷額は2,769億円と予想されており、7-9月期の想定為替レートは1米ドル159円とされています。
5. 業界の注目ポイント
AI需要が牽引する用途別の二極化
同社が挙げる需要の牽引役は、生成AIを背景としたデータセンタ向け投資です。先端ロジックやHBMといった高性能半導体向けの需要が高水準で推移したと説明されています。半導体全体の景気ではなく、特定用途の投資が業績を動かす構図が鮮明になっています。
この構図は、同社の業績が汎用品市況よりもAI関連投資の継続性に左右されやすいことを意味します。高性能半導体は積層や薄化といった加工難度が高く、精密加工装置に求められる精度も上がります。高付加価値製品の比率が上がることで売上総利益率が改善した点は、この需要構造と整合していると考えられます。
消耗品ビジネスが支える収益の安定性
精密加工ツールは装置に装着して使う消耗品であり、顧客の設備稼働率に連動して出荷が変動します。当期は顧客の稼働率等に連動して高水準の推移となったと説明されています。装置の販売が一巡した後も、稼働が続く限り継続的に売上が生まれる構造です。
装置単体の販売はサイクルの影響を強く受けますが、消耗品は導入済み装置の台数に比例して積み上がります。長期にわたって装置を供給してきた実績が、そのまま消耗品の基盤になっていると考えられます。この2階建ての収益構造が、高い営業利益率を支える要因のひとつと見られます。
需要予測の難しさと短期開示という選択
同社は業績予想の開示方法について、1四半期先までの開示という方針を採っています。理由として、半導体・電子部品業界では顧客の投資意欲が短期間で激しく変動し需要予測が困難であることを挙げています。年間を通した計画を示さない代わりに、確度の高い範囲だけを開示する考え方です。
今回はこの方針のもとで4-9月期(中間期)の予想が開示され、中間配当の予想もあわせて示されました。投資家にとっては見通せる期間が短い一方、開示された数値の信頼性は高まる面があります。想定為替レートが明示されている点も、外部環境の前提を確認しやすくする要素と考えられます。
6. ITトレンド編集部の考察
今回の第1四半期は、売上・利益とも過去の水準を大きく更新する内容だったと考えられます。売上高1,143億08百万円(前年同期比+27.1%)に対し、営業利益は490億33百万円(同+42.2%)でした。営業利益率42.9%という水準は、製造業としては極めて高い部類に入ります。
収益性の高さは、加工装置と消耗品の双方で代替の効きにくい立ち位置を確保していることの表れと見られます。特に高性能半導体向けの加工工程では、精度と歩留まりが最終製品の価値に直結します。価格よりも性能が優先されやすい領域であるため、高付加価値製品の比率上昇がそのまま利益率に反映されたと考えられます。
一方で、留意点もあります。純資産は5,825億23百万円と前期末から56億01百万円減少し、自己資本比率は77.3%へ1.6ポイント低下しました。利益を計上しながら純資産が減っているのは、配当などの株主還元が利益計上額を上回る形で実行されたことによると見られます。財務基盤は依然として厚い水準にありますが、還元と内部留保のバランスは注視したいところです。
今後の焦点は、AI関連投資の継続性です。開示された4-9月期(中間期)予想は売上高2,428億円、営業利益1,049億円と高い伸びを織り込んでいます。この計画は7-9月期の想定為替レートを1米ドル159円としており、為替が前提から乖離した場合の振れ幅も小さくないと考えられます。出荷額2,769億円という見通しが実際の検収にどこまで結びつくかが、中間期の着地を左右すると見られます。
7. まとめ
- 2027年3月期第1四半期の売上高は1,143億08百万円(前年同期比+27.1%)、営業利益は490億33百万円(同+42.2%)
- 経常利益は484億41百万円(同+42.5%)、親会社株主に帰属する四半期純利益は342億21百万円(同+44.0%)
- 営業利益率は42.9%、経常利益率は42.4%、純利益率は29.9%
- 出荷額は1,359億06百万円(同+22.3%)で、機械装置の検収進捗が売上を押し上げ
- 為替の影響と高付加価値製品の増加により売上総利益率が上昇し、販売管理費の増加を吸収
- 総資産は7,511億59百万円、純資産は5,825億23百万円、自己資本比率は77.3%(前期末比-1.6ポイント)
- 業績予想は1四半期先までの開示方針で、4-9月期(中間期)予想は売上高2,428億円・営業利益1,049億円・経常利益1,048億円・当期純利益738億円
- 4-9月期の出荷額予想は2,769億円、7-9月期の想定為替レートは1米ドル159円
ITトレンド編集部
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