ドライバービットメーカーのベッセル島根は国内で初めてドライバーを量産して以来、今日でも「ファスニングツール(締結工具)のリーディングカンパニー」として高い知名度を誇る。設立は1974年。電動ドライバーの先端に取り付けるスクリュードライバービット(以下、ビット)の需要増を背景に、ベッセルグループの一員として、ビットの開発・生産の拠点として発足した。
現在、ビットの生産は、島根県仁多郡にある仁多工場(本社)と横田工場の2つの工場で行われている。
生産管理面ではさまざまな課題を抱えていた。取り扱うアイテム数や生産量が多く、規格品や別注品もあるため、工程進捗や納期管理、個別の原価計算などに手を焼いていたのだ。現在のアイテム数は、流通センターに在庫を置くもので約1200 種。別注品を入れると、その数は3000 種以上に膨れあがる。2000 年代初めまでは、それらを手書きとエクセルで管理していた。紙に履歴を記載しておき、リピートが来るとファイルをめくって図番を調べる。そして図面をコピーして現場に製造指示を出すというやり方だった。
しかし、それでは生産管理にはならない。特に経営層が問題視したのは、生産品全体の売上と製造原価は分かっても、製品ごとの標準原価と実績原価、さらにはそれらの差異などが把握できなかったことだ。当時、ベッセル島根のTPiCS 導入担当だった品質管理係主任は
「リピートが入ったら、過去の履歴をもとにしっかりとモノづくりすることはもちろんですが、その製品の原価と売上、販売量がきちんと把握できないと、どれだけ利益を上げている製品なのか分かりません。これは、次の設備投資の方向性にも関わることなので、それを重要視したのです」と話す。