セコム株式会社は、警備請負を中心とするセキュリティサービスを主力とする企業です。防災、メディカルサービス、保険、地理空間情報サービス、BPO・ICT、不動産賃貸や建築設備工事なども手がけています。
連結子会社148社、持分法適用関連会社17社で構成される企業グループです。事業所向けのシステムセキュリティ「AZ」や、顔認証機能を搭載した家庭向けの「セコム・ホームセキュリティNEO」など、入退室管理を含む幅広いセキュリティ基盤を提供しています。
本記事は、2027年3月期 第1四半期(2026年4月〜6月)の決算をもとにした更新版です。前回記事(2026年3月期 通期)時点では、売上高1兆2,568億円・営業利益1,603億円という着地を報告していました。
今回の第1四半期は、売上高2,984億53百万円(前年同期比+3.6%)、営業利益334億66百万円(同+3.9%)となりました。経常利益は390億75百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は240億96百万円(同-3.4%)です。売上高は第1四半期として過去最高を更新しました。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【セコム株式会社(証券コード:9735)徹底解説】2026年3月期通期の決算解説
本記事では、今期スタートの市場環境、第1四半期の業績内容、セグメント別の収益構造、そして通期に向けた論点を整理します。
1. 今期スタートを取り巻く市場環境
2026年4月から6月にかけての日本経済は、雇用・所得環境が改善するなかで、設備投資や個人消費に回復の動きが見られました。一方で、中東情勢の影響や金融資本市場の変動には引き続き留意が必要な状況が続いています。
セキュリティ市場に目を向けると、人手不足を背景とした省人化ニーズが構造的な追い風となっています。有人警備を機械警備やオンライン・セキュリティシステムで代替する動きは、企業規模を問わず広がっています。入退室管理の領域でも、カードや暗証番号から顔認証・生体認証へと移行する流れが定着しつつあると考えられます。
また、監視カメラと入退室管理システムの連携によって、入退室の記録と映像を突き合わせて確認する運用が一般化してきました。セコムは2026年6月に、事業所向けシステムセキュリティ「AZ」と監視カメラの連携機能を拡充しています。セキュリティ機能と操作性の両面を高め、販売促進につなげる取り組みを進めました。
2. 業績推移:通期から第1四半期へ
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
セコム株式会社 2027年3月期 第1四半期決算短信(PDF)
前期(2026年3月期)通期は、売上高1兆2,568億円・営業利益1,603億円・純利益1,126億円という実績でした。今期の第1四半期は、売上高2,984億53百万円・営業利益334億66百万円・経常利益390億75百万円・純利益240億96百万円となっています。
前年同期(2025年4月〜6月)は売上高2,879億円・営業利益322億円でした。これに対して売上高は+3.6%、営業利益は+3.9%とそろって伸びています。増収と増益が同時に進んでおり、事業の基調は堅調と評価できます。
一方で、経常利益は前年同期比で0.7%の減少、純利益は-3.4%と減益になりました。米国などにおける投資事業組合運用益が17億円減少したことが主因です。本業の稼ぐ力とは切り離して見るべき変動要因であると考えられます。
財政状態では、第1四半期末の総資産は2兆1,786億円となり、前期末から514億円(2.3%)減少しました。純資産は1兆4,903億円です。受取手形・売掛金及び契約資産が632億円減少しており、期末に集中した売上の回収が進んだ結果と見られます。
3. 直近決算の重要ポイント
第1四半期の最大のポイントは、売上高が四半期として過去最高を達成したことです。セキュリティサービス事業と防災事業がそろって増収となり、全体を押し上げました。ストック型の契約基盤が積み上がる事業構造が、安定した増収を支えています。
セグメント別に見ると、主力のセキュリティサービス事業は売上高1,640億円(前年同期比2.1%増)、営業利益319億円(同2.6%増)でした。事業所向け・家庭向けのセントラライズドシステムの販売が堅調に推移しています。集配金サービスを提供する株式会社アサヒセキュリティの増収も寄与しました。
防災事業は売上高400億円(同13.9%増)、営業利益12億円(同411.0%増)と大きく伸びています。火災報知設備や消火設備の増収に加え、採算性の良い案件による原価率の改善が効きました。ただし当事業は建設業界の影響を受けやすく、収益が期末に集中する傾向がある点には注意が必要です。
通期予想は、売上高1兆3,135億円・営業利益1,655億円・経常利益1,760億円・純利益1,058億円で、2026年5月12日の公表値から変更されていません。第1四半期時点の進捗率は売上高で約22.7%、営業利益で約20.2%です。防災事業と地理空間情報サービス事業が期末偏重であることを踏まえると、想定内のペースと考えられます。
4. 今期の重点領域と収益構造
セコムの収益モデルの中核は、オンライン・セキュリティシステムの月額契約による安定収益です。契約が積み上がるほど売上が底上げされ、機器の設置や工事に伴うフロー収益が上乗せされます。セキュリティサービス事業が営業利益319億円と全社の大半を稼ぎ出している点に、この構造が表れています。
今期の重点は、「セコムグループ2040年ビジョン」で掲げるプロアクティブ(事前対応型)の考え方です。インシデントが起きる前の予兆を捉え、「先回りの安心」を提供する方向へサービスを進化させる取り組みを進めています。「セコムグループ ロードマップ2027」のもとで各種施策を展開しました。
セグメント間では収益性の差が明確です。メディカルサービス事業は売上高232億円(同5.4%増)・営業利益16億円、保険事業は売上高148億円(同8.2%増)ながら自然災害による損害増で営業利益23億円(同24.3%減)となりました。地理空間情報サービス事業は売上高99億円で15億円の営業損失であり、官公庁向けの納品が3月末に集中する季節性が背景にあります。
BPO・ICT事業は売上高317億円(同1.6%減)と減収でしたが、営業利益は23億円(同21.1%増)と改善しました。原価率の改善と販売費及び一般管理費の減少が寄与しています。減収でも利益を残せた点は、収益体質の改善が進んでいる証左と見られます。
5. 業界の注目ポイント
ポイント1:入退室管理と映像監視の統合が標準になりつつある
入退室管理システムは、扉の施解錠を制御するだけの仕組みから、映像や勤怠データと連携する統合プラットフォームへと役割を広げています。誰がいつ入退室したかという記録に映像を紐づけることで、内部不正の抑止や事故発生時の検証が容易になります。
セコムが「AZ」と監視カメラの連携機能を拡充したのは、この流れに沿った動きです。単体製品の性能競争ではなく、複数のセキュリティ機能をどれだけ滑らかにつなげられるかが、選定時の評価軸になりつつあると考えられます。
ポイント2:人手不足が機械警備・省人化への移行を後押しする
労働人口の減少により、有人での常駐警備や受付業務の維持は多くの企業で難しくなっています。オンライン・セキュリティシステムや非接触の入退室管理は、この課題への現実的な解として導入が進んでいます。
セキュリティサービス事業が第1四半期に2.1%の増収を確保できた背景には、こうした構造的な需要があると見られます。景気変動の影響を受けにくい需要である点も、収益の安定性を高める要因です。
ポイント3:防災設備の更新需要が中期の成長余地を広げる
防災事業が13.9%の増収、営業利益411.0%増と大きく伸びたことは注目に値します。火災報知設備や消火設備は法定点検と更新のサイクルがあり、建物の老朽化に伴って更新需要が発生し続けます。
建設投資の動向に左右される面はあるものの、セキュリティと防災を一体で提案できる体制は差別化要素になります。オフィスの安全管理を一社で完結させたい企業にとって、窓口の一元化は導入・運用の負担軽減につながると考えられます。
6. ITトレンド編集部の考察
今回の第1四半期を一言で表すなら、「本業が着実に伸び、利益変動は本業以外の要因による四半期」です。売上高+3.6%・営業利益+3.9%という数字は派手ではありませんが、四半期売上として過去最高を更新した点は評価できます。
純利益が-3.4%と減益になった理由は、投資事業組合運用益が17億円減少したことでした。営業段階では増益を確保しているため、事業の実力が落ちたわけではないと考えられます。通期予想が据え置かれていることも、会社側の見立てが変わっていないことを示しています。
IT・業務の視点で見ると、セコムの強みは全国規模の対処網とオンライン監視基盤を自前で持っている点にあります。入退室管理システムを検討する企業にとって、機器の導入だけでなく異常検知後の駆けつけまで一体で任せられることは、他のIT製品にはない価値です。監視カメラ連携の強化は、この一体提供をさらに使いやすくする方向の投資と見られます。
7. まとめ
セコム株式会社を一言で表すと、「オンライン・セキュリティの契約基盤を軸に、入退室管理から防災・医療まで広げる総合安全サービス企業」です。
2027年3月期 第1四半期(2026年4月〜6月)の業績は、以下のとおりです。
- 売上高2,984億53百万円(前年同期比+3.6%)
- 営業利益334億66百万円(同+3.9%)
- 経常利益390億75百万円(同-0.7%)
- 親会社株主に帰属する四半期純利益240億96百万円(同-3.4%)
通期予想は据え置かれており、売上高1兆3,135億円・営業利益1,655億円・純利益1,058億円を見込んでいます。年間配当予想は120円です。
IT・業務視点では、入退室管理と映像監視の統合、そして人手不足を背景とした省人化ニーズが、当面の成長を支える柱になると見られます。防災事業と地理空間情報サービス事業は期末に収益が集中するため、通期の着地は下期の進捗を見て判断する必要があります。
ITトレンド編集部
IT製品の比較サイト「ITトレンド」の編集部です。ITトレンドはイノベーションが2007年より運営している法人向けIT製品の比較・資料請求サイトで、累計訪問者数2,000万人以上、3,750製品以上を掲載しています。読者がIT製品・サービスを比較検討する際に役立つ情報や、システムを活用した社内の課題解決のヒントになる情報を日々発信しています。

