株式会社ABEJAは、「ゆたかな世界を、実装する」を企業理念に掲げ、顧客のAI活用を実運用として成立させるエンタープライズプラットフォーム事業を展開しています。中核製品である「ABEJA Platform」は、データ・意思決定・オペレーションを一体的に扱い、企業のミッションクリティカル業務にAIを実装する基盤です。
2026年8月期第3四半期累計期間の業績は、売上高33億69百万円(前年同期比+25.1%)、営業利益5億66百万円(同+41.9%)、経常利益5億82百万円(同+44.8%)、四半期純利益7億13百万円(同+101.8%)となり、増収に加えて利益面が大きく伸びる結果になりました。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
株式会社ABEJA(証券コード:5574)の決算解説
通期着地を左右する市場環境
当第3四半期累計期間における日本経済は、賃上げや雇用環境の改善を背景に緩やかな回復の動きが見られる一方、物価や資源価格の動向、金融資本市場の変動、国際情勢の影響などにより先行きは不透明な状況が続いています。ABEJAを取り巻く事業環境では、ミッションクリティカル業務にAIを活用するうえで、汎用的なモデルの導入だけでは不十分であるという認識が広がっています。
企業固有のデータを業務プロセスや判断ルールと結びつけ、安全かつ継続的に運用することへの要請が高まる中、AIの価値創出の焦点は個別モデルそのものから、進化するAIを現実の業務に実装し運用する基盤へと移りつつあると見られます。また、現実世界を理解し行動を計画するフィジカルAIが次の成長領域として位置づけられ、意思決定を担うAIと実行を担うロボティクスを統合する動きも加速しています。
こうした環境のもと、LLM関連需要の取り込みとABEJA Platformを通じたAI利活用の拡大により、当第3四半期累計期間の売上高は前年同期比+25.1%、営業利益は同+41.9%となりました。通期での着地は、この生成AI実装需要の取り込みをどこまで継続できるかにかかっていると考えられます。
業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
株式会社ABEJA 2026年8月期 第3四半期決算短信(PDF)
ABEJAの四半期業績を振り返ると、2026年8月期第1四半期は売上高11億99百万円(前年同期比+55.9%)、営業利益2億19百万円(同+131.8%)と極めて高い成長を見せました。続く第2四半期累計では売上高23億51百万円(同+30.0%)、営業利益3億84百万円(同+32.6%)となり、成長ペースはやや鈍化しつつも高水準を維持しています。
そして今回の第3四半期累計では、売上高33億69百万円(前年同期比+25.1%)、営業利益5億66百万円(同+41.9%)、四半期純利益7億13百万円(同+101.8%)という結果になりました。前期(2025年8月期)通期の売上高35億85百万円、純利益4億48百万円と比較しても、今期の成長ペースの高さがうかがえます。
財政状態を見ると、2026年5月末時点の資産合計は59億16百万円(前期末比+5億98百万円)、負債合計は6億21百万円(同-2億24百万円)、純資産合計は52億94百万円(同+8億23百万円)となりました。自己資本比率は89.5%と高水準を維持しており、財務基盤は非常に安定していると見られます。
直近決算の重要ポイント
今回の決算で最も注目すべき点は、四半期純利益が前年同期比+101.8%と2倍以上に拡大したことです。この背景には、将来課税所得の見積り等を踏まえ繰延税金資産の回収可能性を見直した結果、法人税等がマイナス1億31百万円(税負担の減少)となったことがあり、これが純利益の増加要因になっています。
また、売上高の内訳を見ると「トランスフォーメーション領域」が25億18百万円(構成比74.8%)、「オペレーション領域」が8億50百万円(同25.2%)となり、ストック型の継続収入であるオペレーション領域の売上が着実に伸長しています。金融分野では株式会社栃木銀行と全行的なDX/AI領域における業務連携を開始するなど、ミッションクリティカルな業務への実装が広がっている状況です。
業績予想については、当第3四半期累計期間の業績動向を踏まえ、2026年4月14日公表の通期業績予想を修正しています。翌期(2026年8月期通期)予想は売上高45億50百万円(前期比+26.9%)、営業利益7億10百万円(同+59.2%)、純利益8億52百万円(同+90.1%)となっており、通期でも大幅な増益が見込まれています。
Q3時点の事業進捗
ABEJAはエンタープライズプラットフォーム事業を単一セグメントとして展開しており、ABEJA Platformを軸に企業のAI実装・運用を支援しています。研究開発面では、NEDOが公募した「GENIAC」の第三期事業が2026年2月に終了し、ロングコンテキスト対応の小型化LLM及びAIエージェントの構築・検証を行いました。
さらに第3四半期会計期間末日後には、NVIDIAのオープンモデル「NVIDIA Nemotron3」をABEJA Platformに搭載するなど、自社開発と外部の最先端モデルの両面から高度なAIエージェントの構築を推進しています。GENIACの第四期にも採択され、第一期から四期連続での参画となりました。第四期では中古車流通大手の株式会社IDOMと連携し、自動車整備領域に特化したAIエージェントの構築に取り組む予定です。
Q3時点の事業進捗としては、フィジカルAIを次の成長領域と位置づけ、ロボット基盤モデルの評価・検証を通じてデジタル空間の意思決定をリアル空間の実行へと接続する技術的な蓄積を重ねている段階にあると見られます。継続顧客からの取引拡大に加え、新規の大型案件の獲得が、収益基盤の拡大に寄与していると考えられます。
業界の注目ポイント
生成AI導入の「本番運用フェーズ」への移行
企業による生成AI導入は、PoC(概念実証)段階から本番運用フェーズへと移行しつつあると見られます。ABEJAはこの流れを捉え、ABEJA Platformを通じてAIの実運用と継続的な高度化を支援する立場を確立しつつあります。
個別モデルの性能そのものよりも、それを業務プロセスに組み込み、安全かつ継続的に運用する基盤の構築力が差別化要因になっていると考えられます。今後もこうした「実装・運用」領域での競争力が業績を左右すると見られます。
金融機関との協業拡大とガバナンス対応
栃木銀行との全行的なDX/AI領域における業務連携は、金融特有の複雑かつ高度なガバナンスを要する業務プロセスに、AIガバナンスやリスク管理を組み込んだアーキテクチャを構築する取り組みです。これは、ABEJAが展開するプラットフォームビジネスの代表例と位置づけられます。
ミッションクリティカルな業務領域への浸透が進むことで、継続的な運用収入の積み上げが期待できると考えられます。金融以外の規制産業への展開が今後の成長余地になる可能性があります。
フィジカルAIへの取り組みと次の成長領域
現実世界を理解し行動を計画するフィジカルAIは、意思決定を担うAIと実行を担うロボティクスを統合する動きとして注目されています。ABEJAはロボット基盤モデルの評価・検証を通じて、この分野での技術的蓄積を進めています。
デジタル空間に加えリアル空間(フィールドオペレーション)も含めたAIの社会実装が進めば、既存のエンタープライズプラットフォーム事業に続く新たな収益の柱になる可能性があると見られます。
ITトレンド編集部の考察
今回の決算で特に印象的なのは、売上高・営業利益の伸びに対して純利益の伸び率が突出して大きい点です。これは繰延税金資産の回収可能性見直しという会計上の要因が大きく寄与しており、事業そのものの実力を測る際には営業利益・経常利益の伸び率(それぞれ+41.9%、+44.8%)に注目するのが妥当だと考えられます。
それでも、売上高が前年同期比+25.1%で伸び続けている点や、自己資本比率89.5%という極めて高い財務健全性を維持している点は、成長投資と財務規律を両立できている証左と見られます。オペレーション領域の売上構成比が上昇していることも、ストック型収益への移行が進んでいるシグナルとして評価できます。
今後は、栃木銀行との協業に代表されるミッションクリティカル領域への浸透、そしてフィジカルAIという新領域への投資が、中長期の成長ドライバーになり得ると考えられます。通期予想でも大幅な増収増益が見込まれており、生成AI関連の高い成長期待に応え続けられるかが焦点になるでしょう。
まとめ
- 2026年8月期第3四半期累計の売上高は33億69百万円(前年同期比+25.1%)
- 営業利益5億66百万円(同+41.9%)、経常利益5億82百万円(同+44.8%)
- 四半期純利益は7億13百万円(同+101.8%)と大幅増益、繰延税金資産の見直しが寄与
- 自己資本比率は89.5%と高水準、財務基盤は非常に安定
- 栃木銀行との協業やGENIAC第四期採択など、生成AI実装の裾野が拡大
- 翌期(通期)予想は売上高45億50百万円、営業利益7億10百万円、純利益8億52百万円を見込む

