アノテーションとは
AI分野におけるアノテーションとは、テキストや音声、画像などのさまざまな形式のデータに、タグやメタタグと呼ばれる情報を付与する作業のことです。
例えば、AIがバナナとりんごを認識するには、それぞれの特徴を把握しておかなくてはなりません。バナナの画像に「バナナ・黄色・細長・フルーツ」、りんごの画像に「りんご・赤色・丸形・フルーツ」などの特徴となる情報を付与し、正確に区別して学習できるようにするための作業が「アノテーション」です。
つまり、アノテーションは正確な機械学習を行うための前準備だといえるでしょう。
アノテーションの必要性
アノテーションは、機械学習のための教師データの作成やビックデータの活用において必要とされています。以下でそれぞれ解説します。
機械学習のための教師データを作成
教師データとは、入力に対する正しい出力について記載した正解データのことです。AIシステムの学習方法の1つである「教師あり学習」を行う際に利用されます。AIの「教師あり学習」は、入力に対し正しい出力を返せるように学習させるアルゴリズムです。
教師あり学習を実施するにはまず、入力に対し正しい出力パターンについて学習させ機械学習モデルを作成する必要があります。その際、正しい出力パターンを学習させるために、正解となる情報をタグ付けする「アノテーション」が必要とされています。
ビッグデータの収集・管理を効率化
ビッグデータは、ビジネスや組織の成長に役立つ重要なデータ群です。しかし情報量が膨大となるため、個々のデータをタグ付けし必要な時に利用できるよう管理しなければなりません。アノテーションによってデータを分類・パターン化することで、ビッグデータの管理が効率化します。
またAIの機械学習では、入力データの特徴やパターンから、どのように出力するのが正しいのか学習しなくてはなりません。そのためには、アノテーションによって個々のデータを分類・パターン化する必要があります。そして、学習を繰り返すことでアノテーションの精度が向上します。
このように、アノテーションはAI技術の開発やビッグデータの管理に必要な作業です。
アノテーションの種類
アノテーションには以下の3種類があります。
- ●画像・動画データ
- ●テキストデータ
- ●音声データ
それぞれどのようにアノテーションが行われるのでしょうか。詳しい内容を解説します。
画像・動画データ
アノテーションによってどのように画像認識し、画像処理・動画処理されるのでしょうか。画像データや動画データをアノテーションする方法について解説します。
物体検出
画像データや動画データのアノテーションでは、物体を矩形(長方形)で囲って検出し、それぞれタグ付けします。物体をカテゴリ別に分類するため、画像・動画内に人間やモノが一緒に存在していても問題なく判別可能です。
領域検出
矩形(長方形)で囲って物体を検出するだけでは、背景など対象とは関係ない情報も含んでしまいます。そのため厳密に対象だけを処理したい場合は、画像データや動画データの1ピクセルごとにタグを設定し、領域の検出を行う必要があります。
領域の検出では、「人間は緑、車は赤、建物は黄色」というように、対象ごとに色分けして画像アノテーションしていくのが一般的です。業界では「セマンティック・セグメンテーション」と呼ばれています。自動運転など周りの状況を詳細に判別しなくてはならないようなシステムで多く採用されているでしょう。また、1ピクセルごとに対象を色分けしなくてはならないため、アノテーション作業にかかるコストが大きくなりやすいという特徴があります。
画像分類
画像分類(クラシフィケーション)では、「人間は人物カテゴリ、猫は動物カテゴリ」というように、画像をカテゴリ別に分類してアノテーションを行います。画像の内容を見てどのカテゴリに属するか判別するだけです。ほかの手法と比べて作業コストがかかりません。ただし1つの画像に対して1つのカテゴリしか設定できないため、人間と動物が一緒に写っているような画像データや動画データを判別するのが困難です。
テキストデータ
テキストアノテーションは、事前に定義された分類項目をもとにテキストの文章や段落をタグ付けします。これにより、PDF文書から特定の情報を抽出したり、ニュース記事をエンタメやスポーツなどのカテゴリに分類したりできるようになります。
音声データ
音声アノテーションは音声認識によって音声を書き起こしたり、テキストと音声内容の整合性を確認したりします。音声会話中に出てくる「家」などの名詞や「わーい」などの感嘆詞を、1つずつタグ付けしていくのが特徴です。日本語だと他国にオフショアできないため、人件費が大きくなるといわれています。
アノテーションを実施する際の注意点
アノテーションは膨大なデータにタグ付けをする必要があり、この作業を人力で行おうとすると、非常に手間がかかります。またアノテーションの質は、AIの解析精度にも直結するため、作業者によってばらつきがあってはなりません。一定の品質を保つようにするには、作業ルールの策定や人材教育が必要です。
アノテーションには時間も人手もかかるため、社内のリソースだけで実施するのは難しいでしょう。そこで多くの企業では、アノテーションツールやサービスを利用しています。
アノテーションツール・サービスの導入メリット
アノテーションツールは、データのタグ付けによる教師データ作成を自動で効率的に行うためのツールです。アノテーションツールを活用することで、さまざまな形態のデータに自動でタグ付けを行えるようになります。情報量が多く精度の高い教師データをもとにAIの開発を行えるようになるため、開発業務の効率化にもつながるでしょう。
なお、アノテーションツールの活用には一定の専門知識を持つ担当者が必要です。社内に詳しい担当者がいない場合、代行サービスの利用を検討してみるとよいでしょう。
以下の記事では、おすすめのアノテーションサービスやツールを比較しています。費用や選び方なども紹介しているため、あわせて参考にしてください。
アノテーションとは何かを理解し実施を検討してみよう
アノテーションは、AI開発の品質に直結する重要な業務です。ビッグデータからの情報収集などビジネスに役立てられる部分が多いため、データ活用に積極的にとりいれることをおすすめします。
アノテーションを自社で行うには知識やスキル、膨大なデータの処理が必要になるため、アノテーションツールやサービスを活用するとよいでしょう。ITトレンドでは、各社製品の一括請求ができるので、アノテーションツールの導入検討に役立ててください。