アノテーションとは
アノテーション(annotation)とは、データにタグを付与して整理し、AIが正しく認識できるように加工するプロセスのことです。テキストや音声、画像などのさまざまな形式のデータに、タグやメタタグと呼ばれる情報を付与します。

例えば、AIがバナナとりんごを認識するには、それぞれの特徴を把握しておかなくてはなりません。バナナの画像に「バナナ・黄色・細長・フルーツ」、りんごの画像に「りんご・赤色・丸形・フルーツ」などの特徴となる情報を付与し、正確に区別して学習できるようにするための作業が「アノテーション」です。
アノテーションの必要性
アノテーションの必要性は、AI技術の進展とビッグデータが普及する現代でますます高まっています。特に、自動運転や医療分野などではAIモデルの正確性が重要視されており、その基盤となる高品質な教師データの需要が急増しています。また、IoTデバイスの普及により日々膨大なデータが生成されるなか、それらを効率的に分類・整理し活用するためにはアノテーションが必要不可欠といえるでしょう。
アノテーションの活用場面
以下のようにアノテーションは、さまざまな業界や分野で活用されています。
- ■ 自動運転
- 車両や歩行者、信号機などのオブジェクトを正確に検出する。膨大な画像データにタグ付けを行い、安全な運転システムの構築を支える。
- ■ 医療分野
- CTやMRI画像から病変部位を特定する。ピクセル単位でタグを付与し、診断精度の向上や新薬開発に貢献。
- ■ 自然言語処理(NLP)
- チャットボットや翻訳システムの開発に用いられる。感情分析や文章分類、検索エンジンの最適化にも活用される。
- ■ マーケティング・顧客分析
- マーケティング戦略や顧客データ分析に活用。YouTubeなどのプラットフォームでのコンテンツ分析やレコメンデーション機能に利用されることも。需要予測や効率的なサービス提供を実現する。
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AI学習におけるアノテーションの役割
アノテーションは、機械学習における教師データの作成やビッグデータの活用において、AIの性能向上を支える重要な役割を果たします。以下で詳しく解説します。
機械学習のための教師データを作成
教師データとは、入力に対する正しい出力について記載した正解データを意味します。AIシステムの学習方法の1つである「教師あり学習」を行う際に利用されます。AIの「教師あり学習」は、入力に対し正しい出力を返せるように学習させるアルゴリズムです。
教師あり学習を実施するにはまず、入力に対し正しい出力パターンの学習モデルを作成する必要があります。AI学習においてアノテーションは、正しい出力パターンを学習させるために、正解となる情報をタグ付けする役割を果たします。
ビッグデータの収集・管理を効率化
ビッグデータは、ビジネスや組織の成長に役立つ重要なデータ群です。しかし情報量が膨大となるため、個々のデータをタグ付けし必要な時に利用できるよう管理しなければなりません。アノテーションによってデータを分類・パターン化することで、ビッグデータの管理が効率化します。
またAIの機械学習では、入力データの特徴やパターンから、どのように出力するのが正しいのか学習しなくてはなりません。そのためには、アノテーションによって個々のデータを分類・パターン化する必要があります。そして、学習を繰り返すことでアノテーションの精度が向上します。
アノテーションの種類
アノテーションには、「画像・動画データ」「テキストデータ」「音声データ」の3種類があります。詳しく見ていきましょう。
画像・動画データ
画像データや動画データをアノテーションするには、以下の方法があります。
物体検出(バウンディングボックス)
画像や動画データでは、物体を矩形(長方形)で囲って検出し、タグを付与します。これにより、データ内の人間や物体が正確に分類されます。混在する物体でも個別に認識が可能で、監視システムやドローン映像の解析などで活用されています。
領域検出(セグメンテーション)
矩形(長方形)で囲って物体を検出するだけでは、背景情報も含まれるため、対象を1ピクセル単位でタグ付けして正確な領域を検出します。この手法は、「セマンティック・セグメンテーション」と呼ばれ、自動運転など高精度が求められる分野で使用されます。
画像分類(クラシフィケーション)
画像分類では、「人間は人物、猫は動物」というようにカテゴリごとにラベル付けします。画像の内容を見てどのカテゴリに属するか判別するだけなので、作業コストがかかりません。ただし1つの画像に対して「人物」「動物」など複数カテゴリを設定することが難しいのが特徴です。
テキストデータ
テキストアノテーションは、事前に定義された分類項目をもとにテキストの文章や段落をタグ付けします。これにより、PDF文書から特定の情報を抽出したり、ニュース記事をエンタメやスポーツなどのカテゴリに分類したりできるようになります。
音声データ
音声アノテーションは音声認識によって音声を書き起こしたり、テキストと音声内容の整合性を確認したりします。音声会話中に出てくる「家」などの名詞や「わーい」などの感嘆詞を、1つずつタグ付けしていくのが特徴です。日本語では他国にオフショアできないため、人件費が大きくなるといわれています。
アノテーションの実施にはツールがおすすめ
アノテーションは膨大なデータにタグ付けをする必要があり、手作業では非効率・かつ品質にばらつきが生じやすくなります。そのため、多くの企業では、アノテーションツールやサービスを利用しています。
アノテーションツールは、データにタグを付けて教師データを作成する作業を自動化するツールです。精度の高い教師データを活用することでAI開発が効率化します。ただし、使用には専門知識が必要な場合があり、担当者がいなければ代行サービスの利用がおすすめです。なお、アノテーションツールを利用することで、次のようなメリットがあります。
- ●人為的なミスやばらつきを防ぎ、一定の品質を保った教師データを作成できる
- ●手作業では膨大な時間がかかるデータのタグ付けが効率化される
- ●タグ付け作業の進捗状況やデータの履歴を可視化し、管理しやすい
- ●画像・テキスト・音声・動画などさまざまなデータ形式に対応するツールが多くさまざまな用途に使える
以下の記事では、おすすめのアノテーションサービスやツールを比較しています。費用や選び方なども紹介しているため、あわせて参考にしてください。
まとめ
アノテーションは、AI開発の品質に直結する重要な業務です。ビッグデータからの情報収集などビジネスに役立てられる部分が多いため、データ活用に積極的に取入れることをおすすめします。
アノテーションを自社で行うには知識やスキル、膨大なデータの処理が必要になるため、アノテーションツールやサービスを活用するとよいでしょう。ITトレンドでは、各社製品の一括請求ができるので、アノテーションツールの導入検討に役立ててください。