ASM市場規模の現状
ASMは注目度の高いセキュリティ分野ですが、公的機関が世界市場や国内市場を毎年定点観測している統計はまだ多くありません。そのため、市場規模そのものに加えて、サイバー脅威やクラウド利用、DX推進といった周辺指標をあわせて見ることが重要です。
世界ASM市場規模
世界のASM市場は拡大傾向にあると見られていますが、ASM単独の市場規模を公的機関が継続公表している例は限定的です。実務上は、経済産業省がASMを独立した管理手法としてガイダンス化している点や、各国で外部公開資産の管理需要が高まっている点から、世界的に市場形成が進んでいると捉えるのが現実的です。
特に、インターネットからアクセス可能なIT資産を継続的に把握し、脆弱性や設定不備を洗い出す考え方は、クラウド活用や分散環境の拡大と相性がよく、今後も需要が広がりやすい分野といえます。
国内ASM市場規模
国内でもASMへの関心は高まっています。ただし、日本国内においてもASM単独の市場規模を公的統計として定点公表した資料は限られます。そのため、国内市場を把握する際は、サイバー攻撃の増加や企業のクラウド利用拡大、セキュリティ政策の強化など、需要を押し上げる要因をあわせて確認する視点が欠かせません。
経済産業省がASM導入ガイダンスを公表していることからも、ASMは一時的な概念ではなく、企業のIT資産管理を補完する実務的な対策として位置づけられていると考えられます。とくに公開資産が多い企業ほど、今後の導入検討が進みやすいでしょう。
参考:「ASM(Attack Surface Management)導入ガイダンス~外部から把握出来る情報を用いて自組織のIT資産を発見し管理する~」を取りまとめました|経済産業省
ASM市場成長率
ASM市場の厳密な年次成長率を公的統計だけで示すのは難しい一方、成長余地の大きさは公的資料から読み取れます。警察庁によると、ぜい弱性探索行為などの不審なアクセスは高水準で推移しており、攻撃者が外部公開資産を探る動きは継続している状況です。
このような環境では、企業が自社の公開資産を継続監視する必要性が高まります。ASMはまさにそのニーズに対応するため、市場の伸びは一過性ではなく、中長期で続く可能性があるといえます。
参考:広報資料 令和6年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁
ASM市場拡大の背景
ASMの需要が高まっている背景には、セキュリティ製品への投資が増えているだけではなく、企業のIT環境そのものが変化している事情があります。攻撃対象が広がる構造を理解すると、なぜASM市場が伸びやすいのかが見えてきます。
サイバー攻撃の増加
サイバー攻撃は、企業が想定している主要システムだけを狙うとは限りません。攻撃者は、管理が手薄なサブドメインや古いサーバ、設定不備のある外部公開機器を探し、侵入の足がかりにすることがあります。
こうした状況では、社内台帳に載っている資産だけを守る運用では不十分です。把握漏れのある資産を外部視点で見つけるASMの価値が高まり、市場拡大の後押しになっています。
クラウド環境の拡大
企業のIT環境は、オンプレミス中心からクラウドサービス併用型へ移っています。総務省の「情報通信白書」でも、企業におけるクラウドサービス利用状況が継続的に把握されており、クラウド活用が一般的な経営基盤になっていることがわかります。
便利な一方で、クラウドは拠点や部門ごとに利用が広がりやすく、全社で管理しきれない公開資産が生まれやすい側面もあります。このような状況では、従来の管理方法だけでは対応しきれません。
ASMは、こうした分散した外部公開資産の発見と継続監視に適した手法であり、クラウド環境の拡大とともに必要性が高まっている分野です。
DX推進
企業のDX推進は、業務の効率化や新サービス創出に欠かせません。一方で、Webサービスやアプリケーション連携、外部公開APIなどが増えるほど、攻撃対象領域も広がります。経済産業省とIPAはDX推進指標を継続的に公表しており、企業のデジタル変革が広く進められていることが確認できます。
DXが進む企業ほど、公開資産の棚卸しを一度だけ行うのでは足りません。変化に追従しながら継続的に見直せるASMは、DX時代の基盤的なセキュリティ対策として位置づけられやすく、市場拡大の土台になっています。
参考:DX推進指標 自己診断結果分析レポート|独立行政法人情報処理推進機構
ASM市場の主要ベンダー
ASM市場には、専業ベンダーだけでなく、既存のセキュリティ製品ベンダーや運用支援を行うサービス企業も参入しています。市場を見るときは、製品数の多さだけで判断するのではなく、どの提供形態が自社の体制に合うかを確認することが大切です。
海外ASMベンダー
海外では、クラウドネイティブ環境やグローバル拠点管理に対応したASMサービスが先行して普及してきました。複数のドメインやIPアドレス、公開証明書、SaaS利用状況などを横断的に把握しやすい設計が多く、外部公開資産の網羅性を重視する傾向があります。
海外ベンダーのサービスは、IT資産が多い企業や海外拠点を持つ企業に向く場合があります。一方で、日本語サポートや国内運用との相性は事前確認が必要です。
国内セキュリティベンダー
国内ベンダーは、日本企業の運用体制に合わせやすい点が強みです。ASM単体の提供だけでなく、脆弱性診断や資産管理、セキュリティ監視と組み合わせた提案も増えています。日本語サポートや国内拠点での支援を重視する企業にとっては、導入後の運用負荷を抑えやすい選択肢になりやすいでしょう。
また、セキュリティ専任者が限られる企業では、画面の見やすさやアラートの整理方法など、日常運用のしやすさも比較ポイントになります。
セキュリティサービス企業
ASMはツール購入だけで完結するとは限りません。発見した資産をどう評価し、どこから対処するかまで含めて運用できる体制が必要です。そこで、マネージドサービス型やコンサルティング型でASMを提供する企業の存在感も高まっています。
社内の人員が限られる場合は、監視から棚卸し、リスク評価、改善提案まで支援するサービスのほうが導入しやすいことがあります。市場拡大に伴い、製品型とサービス型の両方が伸びる可能性があります。
ASM市場の今後
今後のASM市場を考えるうえでは、需要の増加だけでなく、どのような機能や提供形態が伸びるかを押さえることが重要です。とくに、継続監視や統合管理、自動化の三つは今後の中核になりやすい要素です。
外部公開資産の継続監視
今後は、外部公開資産を一度見つけて終わりではなく、変化を継続的に追える機能の重要性が高まると考えられます。新しいサブドメインの追加や設定変更、証明書の更新漏れなどは、時間の経過とともに発生するためです。
そのため、市場で伸びやすいのは、継続監視を前提としたASMサービスといえるでしょう。定期スキャンだけでなく、変化検知や優先度づけがしやすい製品は、今後も評価されやすいと考えられます。
セキュリティ統合管理
ASM単体で資産を可視化できても、対処の優先順位づけや運用連携が難しければ、十分な活用にはつながりません。そのため、脆弱性管理や資産管理、監視運用などと連携しやすい統合型のサービスが、今後さらに伸びると考えられます。
市場の成熟が進むほど、単機能よりも他製品との組み合わせやすさや、運用フローへの載せやすさが選定条件になっていくでしょう。
AI活用の高度化
IPAの公開情報でも、生成AIを含むAI技術がサイバー攻撃と防御の双方で活用される動きが示されています。ASM領域でも、発見した資産の重要度判定や、リスクの優先順位づけ、自動分析の精度向上にAI活用が広がる可能性があります。
今後伸びやすいのは、資産を列挙するだけでなく、どのリスクに先に対応すべきかを判断しやすくするサービスです。セキュリティ担当者の負荷軽減につながる機能は、導入後の評価にもつながるでしょう。
ASM市場を踏まえた選び方
市場が広がるほど、製品やサービスの違いも見えにくくなります。ASMを比較する際は、知名度や価格だけで判断せず、自社の運用体制と公開資産の複雑さに合うかを確認することが重要です。
資産の見つけやすさ
まず確認したいのは、どこまで外部公開資産を見つけられるかです。ドメインやサブドメイン、IPアドレス、クラウド利用、証明書情報など、発見対象の広さによって可視化の精度は変わります。見落としを減らしたい企業ほど、探索範囲や継続監視のしやすさを重視するとよいでしょう。
運用しやすさ
ASMは導入して終わりではなく、見つかった資産の評価と改善につなげる必要があります。そのため、アラートの見やすさやレポート機能、日本語対応、他ツールとの連携性など、日常運用のしやすさも重要です。セキュリティ担当者が少ない企業では、支援体制の有無も比較したいポイントです。
支援体制の厚さ
社内で完結運用が難しい場合は、導入支援や分析支援、定例報告まで含めたサポート体制を確認しましょう。ASM市場では、ツール型だけでなくサービス型も増えています。自社の体制に対して無理なく運用できる選択肢を見極めることが、導入後の定着につながります。
以下の記事ではASMツールの価格や機能、サポート体制などを、具体的に比較して紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
ASM市場は、サイバー攻撃の高度化やクラウド環境の拡大、DX推進を背景に、今後も需要拡大が見込まれる分野です。一方で、ASM単独の市場規模を示す公的統計はまだ限られているため、周辺の公的データから将来性を読み解く視点が重要になるでしょう。
これからは、継続監視や統合管理、AI活用に強みを持つサービスが伸びやすいと考えられます。自社に合うASMツールを比較したい方は、ITトレンドで複数製品の資料請求を行い、機能や支援体制をまとめて確認してみてはいかがでしょうか。


