フューチャー株式会社(証券コード:4722)は、ITコンサルティングを中核とする企業グループの持株会社です。フューチャーアーキテクトを中心に、企業の経営改革とシステム構築を一体で支援するITコンサルティング&サービス事業を展開しています。あわせて、ECやメディア、スポーツ関連などのビジネスイノベーション事業も手がけています。
2026年12月期中間期の売上高は383億22百万円(前年同期比+7.5%)、営業利益は73億79百万円(同+3.8%)となりました。経常利益は76億77百万円、親会社株主に帰属する中間純利益は51億65百万円(同+13.0%)です。主力のITコンサルティング&サービス事業が増収増益となり、全体を牽引しました。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【フューチャー株式会社(証券コード:4722)徹底解説】DX投資拡大の中核を担うITコンサル企業
1. 上半期の市場動向と後半への示唆
同社は決算短信で、上半期の経済環境について先行き不透明な状況が続いたと説明しています。要因として、原油・エネルギー価格の上昇、国内の物価上昇、長期金利の上昇、円安、深刻な人手不足が挙げられています。こうした逆風があるなかでも、企業のデジタル投資は引き続き旺盛だとしています。
注目すべきは、生成AIの普及によってIT投資の在り方に質的な変化が生じ始めているという指摘です。同社は、従来型のシステム開発や汎用的なITサービスへの需要が変わりつつあると述べています。AIに代替される汎用サービスの提供企業と、AIで新たな価値を生む企業との選別が進む可能性も示しています。
この認識は、下半期以降のIT業界を見るうえで重要な示唆を含んでいます。単に開発人員を供給するモデルは、AIによる効率化の影響を受けやすくなると考えられます。一方で、経営改革の構想段階から関与できる企業は、AI活用を含む大型案件を獲得しやすい立場にあると見られます。
2. 業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
フューチャー株式会社 2026年12月期 中間期(第2四半期)決算短信(PDF)
中間期の売上高は383億22百万円で、前年同期の356億45百万円から26億77百万円増加しました。増収率は+7.5%です。前期の2025年12月期通期は売上高759億93百万円、前期比+8.8%でしたので、今期も同程度の成長ペースを維持しています。
営業利益は73億79百万円で、前年同期の71億08百万円から2億71百万円増加しました。増益率は+3.8%にとどまり、営業利益率は19.3%と前年同期の19.9%から低下しています。グループ各社で採用費が増加したことが、利益の伸びを抑えた要因と考えられます。
経常利益は76億77百万円で、前年同期の72億06百万円から増加しました。親会社株主に帰属する中間純利益は51億65百万円で、増益率は+13.0%と営業段階を大きく上回っています。前年同期には投資有価証券評価損1億22百万円の特別損失があり、その反動が最終利益の伸びに寄与したと見られます。
第2四半期の3か月間だけを見ると、売上高は200億60百万円、営業利益は39億46百万円です。前年同期の3か月間は売上高183億25百万円、営業利益37億73百万円でしたので、四半期単独でも増収増益を確保しています。1株当たり中間純利益は58.24円です。
3. 直近決算の重要ポイント
1つ目のポイントは、主力のITコンサルティング&サービス事業が堅調に伸びたことです。同セグメントの売上高は346億60百万円(前年同期比9.1%増)、営業利益は75億80百万円(同4.3%増)でした。「次世代バンキングシステム」のSBI新生銀行への新規導入が決まり、設計フェーズが順調に進んでいると説明されています。
2つ目は、ビジネスイノベーション事業の営業損益が黒字に転じた点です。同セグメントの売上高は36億45百万円(同5.9%減)と減収でしたが、営業利益は67百万円となりました。前年同期は67百万円の営業損失でしたので、YOCABITOの構造改革などにより損益が改善した形です。
3つ目は、成長投資としての採用強化が利益率を押し下げている点です。リヴァンプやフューチャーインスペースは増収となった一方、採用費の増加で減益となりました。フューチャーセキュアウェイブは一部受注が下期にずれ込み、減収減益だったとしています。
4. 中間期が示す事業の実力
通期計画に対する進捗を整理します。会社の通期予想は売上高806億円、営業利益175億円、当期純利益118億円です。中間期の進捗率は売上高47.5%、営業利益42.2%、純利益43.8%となりました。
中間期の目安である50%に対して、営業利益の進捗はやや低い水準です。ただし、前期の中間期実績は通期実績に対して売上高46.9%、営業利益43.9%でした。同社は下半期に利益が偏る傾向があり、今期の進捗も前期とおおむね同じ水準と考えられます。
同社の収益モデルの特徴は、経営改革の構想から関与し、そこで得た知見を知的財産として横展開する点にあります。「GlyphFeeds」や「FutureApparel」といった知財に係る保守売上が増加したことも報告されています。個別案件の受託に加え、ストック型の収益が積み上がる構造へ移行しつつあると見られます。
財政面では、中間期末の総資産が977億02百万円、純資産が664億37百万円です。営業活動によるキャッシュ・フローは84億73百万円のプラスとなりました。長期借入金の返済を進めながらも現金及び預金は363億61百万円へ増えており、財務の余力は大きいと考えられます。
5. 業界の注目ポイント
AI時代のITサービス企業の選別
生成AIの普及は、システム開発の工程そのものを変えつつあります。コードの作成やテストの一部が自動化されれば、人員数に比例して売上を得る従来型のモデルは価格面で圧力を受けやすくなります。同社が決算短信で企業の選別が進む可能性に触れたのは、この変化を意識したものと考えられます。
同社は「AI社会実装No.1カンパニー」を掲げ、研究所「Future AI Science Laboratories」を開設しました。融資業務支援システムと連携する「FutureBANK AI HUB(仮称)」の稼働も始めています。AIを業務の現場へ実装する力が、今後の受注競争で差を生む要素になると見られます。
金融機関の基幹系システム刷新
金融機関の基幹系システムは、長年にわたって個別に作り込まれてきたものが多く、刷新には大きな投資と長い期間を要します。クラウド型の基幹系システムへの移行は、保守費用の抑制や新サービスの迅速な投入につながる選択肢として注目されています。一度採用が決まれば、長期にわたる関係が続きやすい領域です。
同社の「次世代バンキングシステム」がSBI新生銀行に新規導入されることは、知財を活用した案件の拡大という点で意味があります。導入実績が増えるほど、他の金融機関に対する提案力も高まると考えられます。設計フェーズから構築、保守へと段階が進むにつれ、中長期の売上に寄与していくと見られます。
セキュリティ事業の受注タイミング
セキュリティ関連の事業は、製品の保守更新やサービス契約の時期によって四半期ごとの売上が変動しやすい性質があります。顧客側の予算執行や導入計画の変更によって、受注が期をまたいでずれ込むことも珍しくありません。単一の四半期の数字だけで需要の強弱を判断するのは難しい領域です。
同社グループのフューチャーセキュアウェイブは、受注は概ね計画通りだったものの、一部が下期にスライドしたと説明しています。需要自体が落ち込んだのではなく、計上時期のずれによる減収減益と読み取れます。下期にこの受注がどの程度売上として実現するかが、同事業の評価のポイントになると考えられます。
6. ITトレンド編集部の考察
今回の中間期決算は、増収増益を確保しながらも、利益の伸びが売上に届かなかった内容でした。売上高383億22百万円(前年同期比+7.5%)に対し、営業利益は73億79百万円(同+3.8%)です。採用費の増加など、将来の成長に向けた先行投資が利益率を押し下げていると考えられます。
ただし、この利益率の低下を悲観的に捉える必要は小さいと見られます。人材はITコンサルティング企業にとって最大の経営資源であり、需要が旺盛な局面での採用強化は合理的な判断です。営業利益率は19.3%と依然として高い水準を保っています。
通期予想は営業利益175億円で、前期比+8.2%の増益計画です。中間期の進捗率42.2%は前期の43.9%をわずかに下回るため、下半期には上半期より大きな利益の積み上げが必要になります。下期にずれ込んだセキュリティ関連の受注や、大型プロジェクトの進捗が計画達成の鍵になると考えられます。
中長期で注目したいのは、AIによってITサービスの需要構造が変わるなかで、同社がどのような位置を占めるかです。経営改革の構想段階から関与し、知財を横展開するモデルは、単純な開発受託よりもAIの影響を受けにくいと見られます。下半期の決算では、AI関連の取り組みが具体的な案件としてどこまで数字に表れるかを確認したいところです。
7. まとめ
- 2026年12月期中間期の売上高は383億22百万円(前年同期比+7.5%)、営業利益は73億79百万円(同+3.8%)
- 経常利益は76億77百万円、親会社株主に帰属する中間純利益は51億65百万円(同+13.0%)
- 営業利益率は19.3%で、採用費の増加などにより前年同期の19.9%から低下
- ITコンサルティング&サービス事業は売上高346億60百万円(同9.1%増)、営業利益75億80百万円(同4.3%増)
- ビジネスイノベーション事業は売上高36億45百万円(同5.9%減)、営業利益67百万円で黒字転換
- 「次世代バンキングシステム」のSBI新生銀行への新規導入が決定し、設計フェーズが進行
- 総資産は977億02百万円、純資産は664億37百万円、営業キャッシュ・フローは84億73百万円のプラス
- 通期予想は売上高806億円(前期比+6.1%)、営業利益175億円(同+8.2%)、当期純利益118億円(同+0.7%)
- 通期予想に対する進捗率は売上高47.5%、営業利益42.2%、純利益43.8%
ITトレンド編集部
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