株式会社イーエムシステムズ(商号:株式会社EMシステムズ、証券コード:4820)は、医療・介護・福祉分野向けの総合ITシステムを提供する企業です。調剤薬局向けの調剤システムを主力に、医科クリニック向け電子カルテ・レセプトシステム、介護・福祉施設向けシステム、そして医療DXソリューションを展開しています。2026年12月期からカンパニー制を導入し、意思決定の迅速化と顧客対応力の強化を図っています。
2026年12月期第1四半期(2026年1月〜2026年3月)の業績は、売上高50億39百万円(前年同期比-24.9%)、営業利益2億16百万円(同-85.9%)、経常利益3億88百万円(同-77.2%)、四半期純利益1億55百万円(同-86.4%)となりました。前期に集中需要があったオンライン資格確認システムや電子処方箋の導入が一巡したことによる反動減が大きく影響した決算です。
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【株式会社イーエムシステムズ(証券コード:4820)徹底解説】調剤・医科・介護の総合医療ITで成長を続ける医療DX専業企業の実力
1. 今期スタートの市場環境
2026年12月期の医療業界は、「医療DX令和ビジョン2030」に基づいた医療DXの社会実装が加速するフェーズに入っています。電子カルテの標準化、医療情報ネットワーク(G-MIS)の活用、マイナンバーカードと保険証の統合(マイナ保険証)の普及など、政府主導のデジタル化施策が医療機関のIT投資を促進しています。
一方で、前期(2025年12月期)にはオンライン資格確認システムの導入義務化と電子処方箋の導入促進による集中需要が発生しましたが、今期はその反動減が業績に大きな影響を与えています。システム投資の先行サイクルが一巡した後、次の需要ドライバーとなる各種報酬改定対応、生成AIを活用した付加価値サービスの提供、および新規他社獲得を軸にした成長を追求する局面に移っています。
医療機関を取り巻く経営環境は厳しく、診療報酬改定による収益変動や原材料費・人件費の上昇が続いています。こうした中でも、経営基盤強化を目的としたシステム投資の重要性は一段と高まっており、中長期的な医療IT市場の成長持続は見込まれます。同社は「中期経営計画FY2025〜FY2027」の遂行を通じて、この市場での競争力強化を進めています。
2. 業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
株式会社イーエムシステムズ(商号 株式会社EMシステムズ) 2026年12月期 第1四半期決算短信(PDF)
2026年12月期第1四半期の売上高は50億39百万円(前年同期比-24.9%)となりました。前期に集中的に計上されたオンライン資格確認システムや電子処方箋の導入設置収益が今期はなく、反動減が主要因です。セグメント別では、調剤システム事業が40億74百万円(同-25.8%減)、医科システム事業が5億92百万円(同-28.8%減)となっています。
営業利益は2億16百万円(前年同期比-85.9%)と大幅な減少となりました。経常利益は3億88百万円(同-77.2%)、四半期純利益は1億55百万円(同-86.4%)と、各段階で前期からの大幅な減少が続いています。ただしこれは前期の特需による高水準の反動であり、中期経営計画の通常進行として想定内の動きと考えられます。
財務面では、前期末時点での自己資本比率は73.9%と高水準を維持しています(前期の通期業績より)。通期業績予想では売上高227億62百万円(前期比-3.8%)、営業利益33億16百万円(同-9.8%)を見込んでいますが、第1四半期は売上22.1%・営業利益6.5%の進捗率にとどまっており、下期(2026年7〜12月)での挽回が必要な状況です。
3. 直近決算の重要ポイント
今四半期の最大のポイントは、売上高-24.9%・営業利益-85.9%という大幅な落ち込みが「構造的後退」ではなく「特需の反動減」であることの確認です。前期にオンライン資格確認・電子処方箋という一時的な需要を計上した影響が今期は消えており、比較ベースが極端に高くなっています。この反動減は来期以降は解消されるため、正常化後のベースライン利益水準の確認が重要です。
一方で注目されるのが、医科システム事業の回復の兆しです。医科システム事業では損失を計上しているものの、「MAPs for CLINIC」の導入に伴う課金顧客数は着実に増加しており、課金売上高は順調に推移しています。新規他社獲得へのリソース重点配分という戦略的シフトが中長期の成長基盤となる見込みです。
AIの活用面では、コールセンターへのAIツール導入、オンラインを活用した効率的なシステム操作講習、社内業務へのAI活用を進めています。これらの取り組みはサービス品質の向上と業務効率化による収益構造の強化に貢献すると見られ、通期の利益改善要因として期待されます。
4. 今期の重点領域と収益構造
イーエムシステムズの今期の重点施策は、(1)各種報酬改定対応による既存顧客との関係強化、(2)生成AI等の先端技術を活用した新たな付加価値サービスの開発・提供、(3)新規他社獲得を軸にした市場シェアの拡大の3点です。カンパニー制の導入により各セグメントの意思決定を迅速化し、顧客ニーズに即応した体制を構築しています。
収益構造の観点では、調剤システム事業が売上の約80%を占める主力ですが、医科システム事業・介護/福祉システム事業も着実に成長しており、中長期的な収益の多様化が進んでいます。「MAPs for CLINIC」などクラウドSaaS型サービスの課金顧客数増加は、ストック収益基盤の強化という観点で重要な指標です。
通期業績予想では、売上高227億62百万円(前期比-3.8%)、営業利益33億16百万円(同-9.8%)、純利益21億93百万円(同-10.6%)が見込まれています。第1四半期の大幅な下振れを下期で取り戻すには、報酬改定対応需要の取り込みと新規顧客獲得の加速が必要です。下半期(2026年7〜12月)の業績回復がどの程度実現するかが、通期予想達成の焦点となります。
5. 業界の注目ポイント
医療DX令和ビジョン2030が次の需要を創出
政府が推進する「医療DX令和ビジョン2030」では、全国医療情報プラットフォームの整備、電子カルテの標準化(FHIR対応)、マイナンバーカードを基盤とした医療情報の一元管理が重点施策として位置づけられています。これらの政策実現に向けて、医療機関のシステム更新・新規導入需要が今後も継続的に生まれると見込まれます。
イーエムシステムズはこの政策的追い風を受ける立場にあり、調剤システム・医科システム・介護システムの総合提供体制を活かして、医療機関の複数の課題を一括対応できる点が強みとなっています。電子処方箋の普及拡大や電子カルテ標準化対応は、引き続き同社製品の需要を後押しするドライバーとなります。
AIを活用した付加価値サービスが次世代の収益軸
医療IT分野においても生成AIの活用が急速に進んでいます。医療記録の自動作成支援、薬剤師・医師の業務効率化、在庫管理の最適化、患者対応のAI支援など、多様な活用領域が広がっています。コールセンターへのAI導入など社内活用でコスト削減を進めながら、顧客向け付加価値サービスへの展開を進めることが、今後の差別化に直結します。
医療現場へのAI導入は、高い安全性・信頼性の担保が必要であり、医療IT専業企業ならではの知見とコンプライアンス対応が参入障壁となっています。イーエムシステムズが長年積み上げた医療業界の業務知識とシステム実績は、AI付加価値サービス開発において他社にない優位性を持つと考えられます。
介護・福祉システム事業の安定成長が収益多様化に貢献
高齢化の進展に伴い、介護・福祉分野でのITシステム需要は長期的に拡大しています。介護報酬改定への対応、ICT導入補助金の活用、業務効率化による人材不足への対応という複合的なニーズが介護施設のシステム投資を後押ししています。
イーエムシステムズの介護/福祉システム事業は、今期の反動減の中でも一定の安定性を維持していると見られ、調剤・医科事業に次ぐ収益の柱として機能しています。今後の高齢化加速による需要拡大を取り込む体制の整備が、中長期の成長において重要です。
6. ITトレンド編集部の考察
イーエムシステムズの今第1四半期は、数字だけを見れば厳しい内容ですが、前期特需の反動減という文脈を踏まえると本質的な事業悪化とは言えません。売上-24.9%・営業利益-85.9%という減少幅は、前期のオンライン資格確認・電子処方箋需要が如何に一時的かつ大規模なものだったかを示しています。
注目すべきは、反動減の中でも医科システム事業の「MAPs for CLINIC」課金顧客数が増加していることです。クラウドSaaS型の課金顧客基盤の拡大は、特需に左右されないストック収益の積み上げを意味します。この指標が今後の四半期で継続的に成長すれば、業績の安定性が高まります。
中長期的な成長を見るうえで重要なのは、「医療DX令和ビジョン2030」に向けた次の需要波を取り込めるかどうかです。電子カルテ標準化、全国医療情報プラットフォームへの対応、AI活用サービスの商用化が今後の成長ドライバーになると考えられます。下半期の業績回復と中期経営計画の進捗を次の決算で確認することが重要です。
7. まとめ
- 2026年12月期第1四半期:売上高50億39百万円(前年同期比-24.9%)、営業利益2億16百万円(同-85.9%)、経常利益3億88百万円(同-77.2%)、四半期純利益1億55百万円(同-86.4%)
- 前期のオンライン資格確認・電子処方箋の集中需要が一巡した反動減が主因(構造的後退ではない)
- 医科システム「MAPs for CLINIC」の課金顧客数は増加傾向を維持、SaaS型ストック収益基盤の拡充が進行中
- カンパニー制導入・AIツール活用等の組織・業務改革により収益構造の強化を推進
- 通期業績予想:売上高227億62百万円(-3.8%)、営業利益33億16百万円(-9.8%)、純利益21億93百万円(-10.6%)
- 下半期(2026年7〜12月)の報酬改定対応需要取り込みと新規獲得加速が通期達成の焦点

