MRT株式会社(証券コード:6034)は、医療人材プラットフォームと医療DXプラットフォームの2軸で事業を展開する企業です。医師の非常勤紹介サービスおよび常勤紹介サービスを中核に、行政機関や各種団体との連携を通じて医療人材の確保を支援しています。加えて、医療DXプラットフォーム「Door.」の機能拡充とサービスラインアップの拡張を進め、オンライン診療・健康相談サービスも提供しています。会計基準はIFRSを採用しています。
2026年12月期 中間期(2026年1月〜6月)の連結業績は、売上収益21億26百万円(前年同期比-8.6%)、営業利益1億71百万円(同+29.5%)となりました。親会社の所有者に帰属する中間利益は1億円(同+33.3%)です。減収となる一方で利益は大きく伸び、収益構造の入れ替わりが数字に表れた中間期となりました。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
MRT株式会社(証券コード:6034)の決算解説
1. 上半期の市場動向と後半への示唆
同社が2026年12月期第1四半期決算短信で示した認識によれば、医療・ヘルスケア業界は社会保障制度の持続可能性が問われる局面にあります。日本の医療費はすでに40兆円を超え、2040年度には約66兆円に達する見込みとしています。そのため医療提供体制の再編や地域包括ケアシステムの再整備、予防・健康増進の強化、業務効率化といった対策が求められているとの整理です。
医療現場の変化としては、2024年4月に施行された医師の働き方改革が定着期に入ったことが挙げられています。さらに2025年度より「電子カルテ情報共有サービス」の運用が開始され、マイナ保険証の利用率に応じた診療報酬上の優遇措置も導入されました。これにより医療情報のデジタル化と施設間連携が急速に進展したと説明されています。
一方で、生産年齢人口の減少に伴う医療従事者の不足、特に地方における地域偏在は依然として深刻な課題です。2025年2月に閣議決定された「医療法等の一部を改正する法律案」に基づき、2040年を見据えた「新しい地域医療構想」の策定も進められています。限られた医療リソースの最適配置という課題は、人材マッチングと医療DXの双方に需要をもたらす構造だと考えられます。
2. 業績推移
中間期の売上収益は21億26百万円となり、前年同期の23億26百万円から-8.6%の減収となりました。前期通期の売上収益41億91百万円と比べると、上半期で約51%の水準です。減収の一方で営業利益は1億71百万円となり、前年同期の1億32百万円から+29.5%の増益を確保しました。
親会社の所有者に帰属する中間利益は1億円で、前年同期の75百万円から+33.3%の増加です。1株当たり中間利益は18円37銭となり、前年同期の13円28銭から改善しました。営業利益率は8.0%で、前年同期の5.7%から2.3ポイント上昇しています。
四半期ごとの推移を見ると、変化はより明確です。第1四半期の売上収益は9億7百万円で、営業損益は1億18百万円の損失、四半期損益は79百万円の損失でした。これに対し中間期の累計値から逆算すると、第2四半期単独の売上収益は12億19百万円、営業利益は2億89百万円となります。第1四半期の赤字を第2四半期で一気に埋め戻した形です。
前期との比較でも収益性の改善は際立ちます。前期通期は売上収益41億91百万円に対して営業利益95百万円でしたので、営業利益率は2.3%にとどまっていました。中間期だけで前期通期を上回る営業利益を計上しており、利益水準の段差は大きいと言えます。
財政状態については、中間連結会計期間末の資産合計が63億67百万円、資本合計が47億45百万円となりました。前連結会計年度末の資産合計64億77百万円、資本合計46億46百万円と比べると、資産は減少し資本は増加しています。資産に対する資本の比率は概算で74%台となり、前期末の水準から改善しました。
3. 直近決算の重要ポイント
今回の決算で最も注目すべきは、減収と増益が同時に起きている点です。売上収益は-8.6%減った一方、営業利益は+29.5%、中間利益は+33.3%伸びました。売上の量を追う局面から、採算を優先する局面へ軸足が移っていることを示す組み合わせだと考えられます。
二つ目は、四半期をまたいだ損益の振れ幅です。第1四半期は営業損益が1億18百万円の損失でしたが、中間期累計では1億71百万円の営業利益となりました。差し引きで第2四半期単独の営業利益は2億89百万円に達します。売上の計上時期に季節性がある事業構造がうかがえます。
三つ目は、通期予想の見直しです。第1四半期決算時点の通期予想は売上収益43億円、営業利益1億70百万円、当期利益1億9百万円でした。中間期の開示ではこれが売上収益39億50百万円、営業利益1億95百万円、当期利益1億29百万円へと変更されています。売上は引き下げ、利益は引き上げる方向の修正です。
四つ目は、修正後の通期予想に対する進捗です。中間期時点の進捗率は売上収益で53.8%、営業利益で87.7%、当期利益で77.5%となっています。売上はおおむね折り返し地点ですが、利益は通期予想の大半を上半期で確保した計算になります。1株当たり配当予想は0円で、内部留保を優先する方針が続いています。
4. 中間期が示す事業の実力
同社の収益は、医療人材プラットフォームを起点とした紹介サービスが中心です。会員基盤を継続的に拡大し、そこから医師の非常勤紹介サービスと常勤紹介サービスへつなぐ流れをつくっています。会員基盤の規模がマッチングの精度と件数を決めるため、プラットフォームの厚みがそのまま収益力につながる構造です。
非常勤紹介は単発のスポット需要を積み上げる収益で、常勤紹介は1件あたりの単価が大きい代わりに成約までの期間が長くなります。この2つを組み合わせることで、月次の売上の振れを抑えながら収益単価を引き上げる設計になっていると考えられます。中間期の営業利益率8.0%への改善は、単価の高い案件構成へのシフトが効いた可能性があります。
もう一方の柱が医療DXプラットフォーム「Door.」です。機能拡充とサービスラインアップの拡張を継続しており、厚生労働省による予防接種後の健康状況調査では回答者数の拡大に貢献したと説明されています。行政案件は継続性と信用の両面で価値がありますが、案件の有無によって売上が振れる側面もあります。
今回の減収は、この振れ幅の一端を示していると見られます。売上収益が-8.6%減るなかで営業利益が+29.5%伸びたという結果は、採算の低い売上が落ちて採算の高い売上が残ったと解釈するのが自然です。売上規模の回復と利益率の維持を両立できるかが、次の四半期以降の焦点になりそうです。
5. 業界の注目ポイント
医師の働き方改革が生む人材需要
2024年4月に施行された医師の働き方改革は、同社の説明によれば定着期に入りました。時間外労働の上限管理が求められることで、医療機関は限られた人員をより計画的に配置する必要があります。非常勤医師によるスポット的な補充は、この調整を実務的に支える手段です。
加えて、生産年齢人口の減少により医療従事者の不足は続いています。地方における地域偏在の問題も深刻とされており、需給のミスマッチを埋めるマッチングサービスの役割は今後も残ると考えられます。制度対応を起点とした需要は、景況感に左右されにくい点が特徴です。
医療情報のデジタル化と施設間連携
2025年度から運用が開始された「電子カルテ情報共有サービス」は、施設間で診療情報を受け渡す基盤です。マイナ保険証の利用率に応じた診療報酬上の優遇措置も導入され、デジタル化への動機付けが制度側から与えられました。重複検査の防止や事務作業の省力化が進むことで、経営と診療の両面で効率化が具体化しているとされています。
この流れは、医療機関向けにオンライン診療や健康相談を提供する事業者にとって追い風です。院内の仕組みがデジタル前提に切り替わるほど、外部サービスとの接続も現実的になります。ただし公的なインフラ整備が進むほど、民間サービスは差別化の軸を機能面から運用支援面へ移す必要が出てくると考えられます。
地域医療構想の再構築という中期テーマ
2025年2月に閣議決定された「医療法等の一部を改正する法律案」に基づき、2040年を見据えた「新しい地域医療構想」の策定が進められています。医療提供体制の再編は、施設の統廃合や機能分担の見直しを含む長期の作業です。人員配置の組み替えが各地で発生するため、人材マッチングの需要は断続的に生じると見られます。
医療費が2040年度に約66兆円へ達する見込みという同社の整理を踏まえると、効率化の圧力は今後さらに強まる方向です。業務効率化を支えるサービスは、コスト削減の手段として評価されやすい位置にあります。行政や各種団体との連携実績を持つことは、この局面では実務的な強みになると考えられます。
6. ITトレンド編集部の考察
2026年12月期 中間期は、売上より採算を優先した結果が明確に表れた決算だったと受け止めています。売上収益21億26百万円(前年同期比-8.6%)に対し、営業利益1億71百万円(同+29.5%)という組み合わせがその内容です。営業利益率は5.7%から8.0%へ改善しました。
特に注目したいのは、通期予想の修正の方向性です。売上収益は43億円から39億50百万円へ引き下げられた一方、営業利益は1億70百万円から1億95百万円、当期利益は1億9百万円から1億29百万円へ引き上げられました。売上の未達を利益で上回るという構図は、収益性重視の運営に切り替えた意思の表れと考えられます。
ただし留意点もあります。中間期時点で営業利益の進捗率が87.7%に達している一方、売上収益の進捗率は53.8%です。下半期に利益をほとんど積み増さない前提の計画となっており、保守的な見立てなのか、それとも下期に費用が偏るのかは判断材料が限られます。今回は決算短信の定性情報が開示されていないため、事業別の内訳を確認できない点も慎重に見たい理由です。
医療機関でシステム導入を検討する立場から見ると、人材のマッチングと医療DXの両方を1社で扱う体制は選択肢として捉えやすい構造です。オンライン診療や健康相談の基盤に加えて、非常勤医師の確保まで相談できる先は限られます。人員体制とデジタル基盤の課題を同時に抱える医療機関にとっては、比較検討の対象になりやすい立場にあると見られます。
7. まとめ
MRT株式会社(証券コード:6034)の2026年12月期 中間期(第2四半期)決算のポイントを整理します。
- 売上収益は21億26百万円(前年同期比-8.6%)と減収の一方、営業利益は1億71百万円(同+29.5%)と増益
- 親会社の所有者に帰属する中間利益は1億円(同+33.3%)、1株当たり中間利益は18円37銭
- 営業利益率は8.0%となり、前年同期の5.7%から2.3ポイント改善。前期通期の2.3%からも大きく上昇
- 第1四半期は営業損益が1億18百万円の損失。中間期累計から逆算した第2四半期単独の営業利益は2億89百万円
- 資産合計は63億67百万円、資本合計は47億45百万円。資産に対する資本の比率は概算で74%台
- 通期予想は第1四半期時点の売上収益43億円・営業利益1億70百万円・当期利益1億9百万円から、売上収益39億50百万円・営業利益1億95百万円・当期利益1億29百万円へ変更
- 修正後の通期予想に対する中間期の進捗率は売上収益53.8%、営業利益87.7%、当期利益77.5%。1株当たり配当予想は0円
ITトレンド編集部
IT製品の比較サイト「ITトレンド」の編集部です。ITトレンドはイノベーションが2007年より運営している法人向けIT製品の比較・資料請求サイトで、累計訪問者数2,000万人以上、3,750製品以上を掲載しています。読者がIT製品・サービスを比較検討する際に役立つ情報や、システムを活用した社内の課題解決のヒントになる情報を日々発信しています。

