AI・機械学習
2026年09月17日

Gartnerが2027年以降の戦略的予測トップ10を発表——公開AIを持つ組織の80%が「コスト枯渇攻撃」を経験

Gartnerが2027年以降の戦略的予測トップ10を発表——公開AIを持つ組織の80%が「コスト枯渇攻撃」を経験

Gartnerが2027年以降の戦略的予測トップ10を発表——公開AIを持つ組織の80%が「コスト枯渇攻撃」を経験(写真はイメージ)

調査会社のGartnerは2026年9月15日、2027年以降に向けた戦略的予測のトップ10を発表しました。オーストラリアのゴールドコーストで開催した「Gartner IT Symposium/Xpo」に合わせた発表です。予測は「あらゆる場所のロボット」「コストから価値へ」「未知の未知」の3つのカテゴリーにまたがります。

同社のダリル・プラマー氏は、公共サービスやソフトウェア、エネルギーなどの仕組みが今後10年でAIによって根本的に変わると述べました。そのうえで、イノベーションと責任を両立できる組織が成功すると指摘しています。

10の予測の全体像

発表された10の予測は、次のとおりです。年限は予測ごとに異なり、2028年から2030年までの範囲に分かれています。

年限

予測の内容

2030年末まで

人・企業・政府が作る100億を超える自律型エージェントが公共サービスを滞らせる

2030年まで

国際企業の現場従業員の80%がフィジカルAIの支援を受ける

2030年まで

公開AIを持つ組織の80%が、AIコストを膨らませる「コスト枯渇攻撃」を経験する

2029年まで

新規アプリケーションの80%が、1年未満で使い捨てる前提で作られる

2030年まで

企業が保有するエネルギー資産が10兆ドルに達し、Global 2000企業が電力の供給者になる

2030年まで

規制当局ではなく保険会社がAIガバナンスを主導する

2029年まで

Global 500企業の25%が、部品化したAI製品を継続的に刷新し、追随戦略を無力化する

2029年まで

AIを導入する組織の60%が、AIの総コストを価値や利益に結び付ける専任部門を置く

2028年まで

Global 500企業の60%が、推論の段階にAI FinOpsの制御を組み込む

2030年まで

Global 500企業の80%が、CIOまたはCAIOをAIの説明責任の「証拠管理者」に契約上定める

AIエージェントやフィジカルAI、エネルギーといったテーマに加え、AIのコストとガバナンスに関する予測が目立ちます。なお、各予測がどのカテゴリーに属するかは、プレスリリースの本文には明記されていません。

AIの利用料を膨らませる「コスト枯渇攻撃」

情報システム部門の実務に最も近いのが、コスト枯渇攻撃の予測です。これは、攻撃者が意図的にAIの利用量を増やし、運用コストを押し上げる新しいサイバーリスクを指します。AIが顧客向けのアプリケーションに組み込まれるほど、このリスクは高まるとしています。

Gartnerは、トークンの消費量や利用パターンを、コスト管理とセキュリティの両面で扱うべきだと指摘しました。推奨策として、AIトークンのコストをセキュリティの指標にすることを挙げています。さらに、コストに着目したセキュリティ対策の導入と、すべてのAI技術への監視範囲の拡大を求めています。

AIコストを事業価値に結び付ける管理が広がる

コストに関する予測は、攻撃への備えにとどまりません。エージェント型AIの利用が広がるにつれ、トークン消費が急増し、支出と事業価値の関係が見えにくくなるとしています。Gartnerは、トークンの使用量を事業価値の指標と直接結び付けるよう勧めています。

2028年までの予測では、コスト管理が事後の報告からリアルタイムの最適化へ移るとしています。重視されるのは、タスクあたりのコストやトークン効率の測定です。推奨策には、実行時のコスト制御や、推論経路の計測が含まれています。

使い捨てアプリケーションの予測も、管理の課題に関わります。AIで開発が容易になり、従業員が短期の業務ニーズのために一時的なアプリを作るようになるためです。Gartnerは、リスクに応じた統制や、自動化された登録簿での監視、記録保持ポリシーの更新を推奨しています。

ガバナンスの担い手は保険会社とCIOへ

AIガバナンスについては、方針を定める段階から、AIシステムや業務フローに統制を組み込む段階へ移るとしています。AIの賠償責任保険では引受基準が厳しくなる見通しです。保険料を抑えるために、企業は基準を満たす統制を整える必要が出てきます。

もう1つは、CIOやCAIOの役割が広がるという予測です。AIが重要な業務や意思決定に組み込まれるほど、AIの行動に対する説明責任と透明性が求められます。Gartnerは、デジタル証拠の管理能力を評価し、責任の所在を明確にするよう勧めています。

企業への示唆

顧客向けにAIチャットボットや生成AI機能を公開している企業は、まずトークン消費の監視体制を確認するとよいでしょう。コストの急増をセキュリティ上の異常として検知できるかが問われます。利用回数の上限や、異常時の通知の仕組みも見直しの対象になります。

AIの費用対効果をどの部門が説明するかも、早めに決めておきたい論点です。部門ごとに利用が広がると、支出の全体像をつかみにくくなります。タスク単位のコストを計測できる基盤を整えておくと、投資判断の根拠を示しやすくなります。

社内でAIを使ったアプリ作りが広がっている場合は、台帳管理と記録保持のルールも点検が必要です。機密データに触れるアプリや、意思決定に関わるアプリから優先して把握するのが現実的です。

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まとめ

Gartnerの2027年以降の戦略的予測は、AIの普及を前提に、コストとガバナンスの管理を経営課題として扱う内容でした。中でも、公開AIのコストを狙う攻撃の予測は、セキュリティとコスト管理の境界が薄れていることを示しています。

今回のプレスリリースでは、日本市場に限った数値は示されていません。Gartner IT Symposium/Xpoは、2026年11月4日から6日に横浜でも開催予定です。

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