OpenAIは2026年10月6日、AI契約管理を手がけるIroncladと、AIエージェントによるコンピューター操作(computer use)の研究で協業したと発表した。契約業務の実務に沿ったタスクを共同で設計し、モデルの学習と評価に使った。Ironcladは、この取り組みで最初のパートナーとなる。
評価の結果、GPT-6 Astraは11の研究タスクで平均55.0%のスコアを記録した。前世代のGPT-5.6 Solの41.6%を上回り、1回あたりの推定所要時間は37.0分から19.2分に短縮した。OpenAIは同様の協業に参加するソフトウェア企業も募集している。
専門ソフトの業務ルールを理解するエージェントを目指す
OpenAIは、GPT-6 Astraの発表時に文書作成やWebサイトのテストなど、職業上のPC操作でモデルが進歩したことを示していた。次の目標として、専門的な業務ソフトを使って複雑な業務課題を解くエージェントの能力と効率を高めることを掲げている。
具体的には、企業の業務ルールを理解し、複数手順のワークフローを実行し、成果が当初の要件を満たしているかを検証できるモデルを目指す。そのため、業務を熟知した少数のソフトウェア企業と直接組み、難しく価値の高いタスクを研究課題に落とし込んでいる。
公式ページは、ソフトウェア購買の承認プロセスを構築する例を挙げる。一定額を超える購入には財務部門、特定の申請にはセキュリティ部門、標準外の条項には法務部門の確認が必要になる。担当者はこうした条件を、申請フォーム、文書テンプレート、承認ルール、最終契約の記録へと落とし込まなければならない。
法務・商取引・調達の11タスクを8〜50の基準で評価
Ironcladの社員と、OpenAI社内でIroncladを使う人たちが研究者と協力し、法務、商取引、調達にまたがる11のタスクを選んだ。秘密保持契約の設定、調達承認プロセスの作成、申請者が選んだ管轄地域に応じて再利用可能な契約条項を更新する作業などが含まれる。熟練者でも1タスクあたり平均30〜40分程度かかると見積もっている。
各タスクは、複雑さに応じて8〜50の基準で評価した。これにより、モデルがどの部分をこなし、どこで不足したかを確認できる。Ironcladはモデルが練習するための自社製品のホスト環境も提供し、OpenAIは代表的なワークフローをもとに合成タスクを作って強化学習に用いた。
合成タスクは、米証券取引委員会(SEC)のEDGARデータベースで公開されている契約書から、個人情報を除くフィルターをかけて作成したという。OpenAIの顧客データや社内契約、Ironcladの非公開の顧客データや契約は、学習にも評価にも使っていないと明記している。
GPT-6 AstraとGPT-5.6 Solの比較結果
比較は、それぞれ最も高いスコアが出た設定で行った。GPT-6 Astraは推論レベル「Max」、GPT-5.6 Solは「High」である。結果は次のとおりで、Astraはより多くの要件を満たしながら、1回あたりの推定時間を約半分に縮めた。
指標 | GPT-5.6 Sol(High) | GPT-6 Astra(Max) |
|---|---|---|
平均ルーブリックスコア | 41.6% | 55.0% |
1回あたりの推定平均所要時間 | 37.0分 | 19.2分 |
同じタスクでの比較例では、Astraが推定20分でタスク基準の約94%を満たしたのに対し、GPT-5.6 Solは推定32分で約85%だった。Astraの開発過程で使った社内モデルは、同じタスクで63.7%に達しており、OpenAIはこの改善を将来のモデルに反映させるとしている。
ただし、この結果は11の研究タスクに限ったもので、Ironcladのすべてのワークフローを対象にしたものではない。所要時間も、想定した処理・生成速度にもとづくシミュレーション上の推定値である。顧客の実際の時間削減を測ったものではないと、公式ページは注記している。
企業への示唆
契約管理や購買承認の業務を抱える企業にとって、今回の発表はAIエージェントに任せられる範囲を測る材料になる。ただし平均スコアは55.0%であり、要件の半分近くを満たせないケースが残る水準である。公式ページもIroncladの見解として、エージェントが複雑な契約業務に強くなっても人による監督は引き続き重要だと述べている。
導入を検討する際は、承認ルールや条項の設定変更をエージェントに任せる場合でも、最終確認を人が行う体制を前提にしたい。金額のしきい値をまたぐ申請が正しい承認経路に流れるかといった、業務ルールの検証手順をあらかじめ用意しておくことが重要になる。所要時間の数字はシミュレーション上の推定値であり、自社での効果は実業務で測る必要がある。
また、OpenAIは業務ソフトの開発企業と直接組んでモデルを鍛える方針を示した。自社で使う契約管理や購買システムのベンダーが、こうしたAI企業との協業やエージェント対応をどう進めているかは、今後の製品選定で確認したい観点である。Ironcladの製品にいつ、どの形で反映されるかは示されていない。
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まとめ
OpenAIは2026年10月6日、Ironcladと協業し、契約業務のタスクでAIエージェントのコンピューター操作能力を学習・評価したと発表した。11の研究タスクでGPT-6 Astraの平均スコアは55.0%となり、GPT-5.6 Solの41.6%を上回った。推定所要時間も37.0分から19.2分に短縮した。
評価は限られたタスクとシミュレーション上の推定にもとづくもので、人による監督が前提となる点は変わらない。企業は業務ルールの検証手順と最終確認の体制を整えたうえで、エージェント活用の範囲を見極めたい。

