Amazon Web Services(AWS)は2026年10月27日、AIエージェント型の開発環境「Kiro」を搭載した「AWS Coding Plugin for SAP ABAP」を、日本語の公式ブログで紹介した。SAPの開発ツール「ABAP Development Tools(ADT)」と併せて、Eclipse上で使えるプラグインである。
このプラグインを使うと、ABAP開発者は普段のABAPエディタの中で、スペック駆動開発(SDD)を取り入れられる。SDDは、コードを書く前にビジネス要件と仕様を固める開発手法だ。Kiroは2025年から、このSDDをエージェント型開発の手法として提供してきた。
仕様を開発者とAIで作り、実装はAIが進める
プラグインは、Eclipse内のチャットを通じて開発者とやり取りする。開発者が必要なことを伝えると、プラグインがヒアリングして「ステアリングドキュメント」を作り、ビジネス要件を一緒に定義していく。続いて、稼働中のSAPバックエンドで見つけた関連するABAPオブジェクトを基に設計を行い、実装計画を提案する。
こうしてできた「スペック」が、開発者とエージェントの協働の成果物になる。スペックがあることで、エージェントは自らテストを行い、結果を改善しながら大規模な開発や変換に取り組める。設計の段階では開発者が関わり、実装はエージェントが自律的に進め、引き渡しや要件の変更の際に再び開発者と連携する流れだ。
チャットには、参照しているABAPコードやオブジェクトへすぐ移動できるリンクが表示される。Kiroの思考の過程や、ツールを使う前の承認の確認も表示される。チケット管理や社内ドキュメント、メッセージングといった組織のMCPサーバーにもつなげられるという。
既存の接続をそのまま使い、セットアップの手間を抑える
インストールの手順は、EclipseにSAP ADTを入れるときと同じだ。プラグインはバックグラウンドでKiro CLIを起動し、MCPの接続を自動で設定する。Eclipseに定義済みのABAPへの接続をそのまま使うため、別の認証や接続経路を追加する必要はない。
ABAP Test Cockpit(ATC)の長い結果や大きなコードオブジェクトを扱っても、効率を保てるよう調整されている。ブログでは使い方の例として、テーブルへの項目追加と検証ロジックの更新、パッケージ内のドキュメント整備、ユニットテストの追加とクリーンコア準拠のためのリファクタリングが挙げられた。
導入企業からは開発時間の短縮を報告
ブログでは、導入企業の声も紹介された。IBM ConsultingのSAP AI Leaderは、カスタムABAP拡張の開発時間を最大30%短縮し、開発後の不具合を最大45%減らしたと述べている。
Mondelēz Internationalの担当者は、自社のTMSコードのカスタマイズをわずか5時間でレビューできたとコメントした。予定している変更との互換性の検証や、深掘り用のレポート作成まで含めた作業だという。
対応システムと利用条件
プラグインは、SAP ECCからS/4HANA、BTP ABAPまで、幅広いABAPベースのシステムに対応する。AWSは、ECCを運用しながらS/4HANAやRISEへの移行を進める企業に向けて、クリーンコアへの移行を後押しできるとしている。
利用には、Eclipse 2026-06以降、SAP ADT 3.60以降、Kiroのサブスクリプションが必要だ。プラグイン自体は無料で、支払いは使ったKiroのクレジット分のみとなる。Kiroのクレジットの具体的な料金や、日本の利用者向けの個別の案内はブログでは示されていない。
企業への示唆
S/4HANAへの移行やクリーンコア対応を控える企業は、アドオン資産の調査や改修にAIを使える選択肢として検討する価値がある。導入企業の数値はあくまで事例であり、自社のアドオンの規模や品質基準で試してから判断したい。
情報システム部門は、AIが稼働中のSAPバックエンドを参照する点を踏まえ、接続先を開発環境に限るかどうかを先に決めておくとよい。組織のMCPサーバーにつなぐ場合は、社内ドキュメントやチケットをどこまでAIに読ませるかの線引きも必要だ。Kiroのクレジットを使った分だけ費用がかかるため、利用量の管理方法も合わせて考えておきたい。
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まとめ
AWSは、Kiroを搭載した「AWS Coding Plugin for SAP ABAP」を紹介した。Eclipse上のABAPエディタで、開発者とAIが仕様を固めてから実装するスペック駆動開発を使える。ECCからS/4HANA、BTP ABAPまで対応し、プラグイン自体は無料で、Kiroのクレジット分を支払う。
SAPの移行やアドオン改修を抱える企業は、自社のコードで効果を確かめつつ、接続範囲と費用の管理方法を整理してから導入を検討したい。

