デジタル庁は2026年10月30日、ガバメントAI「源内」で「国会答弁作成支援AIアプリ」のプロトタイプ版の提供を始めると発表した。政府職員が国会答弁案を作る作業を、生成AIで支援するアプリだ。約18万人の政府職員に提供する。
第222回臨時国会で試験的に使い、有効性や操作性、出力の品質を検証する。その結果と利用者の意見を踏まえて改善し、来年1月からの通常国会で本格提供を始める計画だ。AIは作業を補助するもので、内容の精査や最終判断は職員が担うと明記している。
国会答弁の作成は負担の大きい業務
デジタル庁は、国会答弁の作成を職員の負担が特に大きい業務の一つと位置づけている。限られた時間の中で、高い正確性と一貫性が求められるためだ。職員は質問内容の確認から、過去の答弁や根拠資料の検索・分析、答弁案の作成までを短期間でこなす必要がある。
社会課題の複雑化に伴い、検討すべき事項も増えている。政策の背景や経緯の把握、追加質問への対応などだ。その結果、資料の検索や情報の整理、表記や整合性の確認といった定型作業に多くの時間が割かれている。質問の趣旨を捉えて分かりやすい答弁を練り上げる時間を、十分に確保できないことが課題だという。
検索・整理から答弁案の生成、検証支援まで
答弁支援AIは、生成AIによる情報の検索・整理、答弁案の生成、内容の検証支援などを担う。国会答弁の作成業務を効率化し、質を高めることが狙いだ。過去の答弁や根拠資料の検索、答弁案の作成などをAIが補助する。
これにより、職員の情報収集や文書作成の負担を軽くする。そのうえで、質問の趣旨や政策の背景を踏まえた答弁内容の検討に、より多くの時間を充てられるようにするという。どの生成AIモデルを使っているかや、具体的な画面構成は示されていない。
16省庁の職員102人が評価に参加
開発には、16省庁から公募した実務経験の豊富な職員102人が評価者として参加している。実際の業務を踏まえ、画面構成や操作性、必要な機能などについて幅広く意見を集めた。職員との意見交換も重ねている。
寄せられた指摘や改善提案の一部は、すでに機能の改修に反映した。今回のプロトタイプ版の試験提供も、実際の業務で使いながら検証を進める位置づけである。
AIの出力はそのまま採用しない
デジタル庁は、生成AIにはハルシネーションなどのリスクがあると明記している。事実と異なる内容や根拠のない情報を、もっともらしく生成するおそれがあるためだ。AIの出力の正確性や妥当性は保証されないとしている。
そのため、AIが示した情報や答弁案をそのまま採用しないことを原則とする。職員自身が根拠資料と照らし合わせ、事実関係の正確さを確かめる。過去の答弁や政府方針との整合性、表現の適切さも十分に確認する。政策判断や政府見解の整理、答弁内容の確定は引き続き職員が責任を持って行い、答弁は大臣などの答弁者が責任を持って行う。
企業への示唆
過去の文書を検索し、根拠を整理して回答案を作る業務は、民間企業にも多い。株主総会の想定問答や、監督官庁への回答書、顧客からの問い合わせ対応などだ。今回の取り組みは、こうした業務に生成AIを組み込む際の参考になる。
注目したいのは、AIの役割と人の責任の線引きを最初に明文化している点だ。AIの出力をそのまま採用せず、根拠資料との照合や整合性の確認を職員が担う原則を示している。企業でも、AIに任せる範囲と人が確認する範囲を、業務ごとに定めておきたい。
実務経験のある職員を評価者として開発段階から巻き込み、意見を改修に反映している点も参考になる。業務に特化したAIアプリを社内に展開する場合は、現場の利用者を早い段階から評価に加えたい。試験運用で有効性を確かめてから本格展開する進め方も有効だろう。
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まとめ
デジタル庁は、ガバメントAI「源内」で国会答弁作成支援AIアプリのプロトタイプ版を約18万人の政府職員に提供する。第222回臨時国会で検証し、来年1月からの通常国会で本格提供を始める計画だ。AIは検索や答弁案の作成を補助し、精査と最終判断は職員が担う。
文書作成にAIを使う企業も、AIと人の役割分担を明文化し、現場を巻き込んで検証しながら展開を進めたい。

