株式会社クラウドワークスは、フリーランス人材を中心とした人材マッチングサービスと、企業の生産性を高めるDX・AIソリューションを展開する企業です。「個のためのインフラになる」をミッションに掲げ、2026年6月末時点で登録ユーザー数は797.5万人、登録クライアント数は111.8万社に達しています。
今回は2026年9月期第3四半期累計(2025年10月〜2026年6月)の決算です。連結売上高は163億74百万円(前年同期比-3.5%)、営業利益は2億64百万円(同-79.0%)となりました。経常利益は3億17百万円(同-74.3%)、親会社株主に帰属する四半期純利益は50百万円(同-90.4%)で、減収減益の着地です。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【クラウドワークス(証券コード:3900)徹底解説】人材マッチングからDX・AX支援へ広がる業務変革企業──2026年9月期第1四半期決算から読む転換点
1. 通期着地を左右する市場環境
同社の決算短信によると、当第3四半期累計期間の国内経済は、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復基調で推移しました。企業では人手不足を背景に、省力化・業務効率化へのニーズが高まっています。一方で、中東情勢や米国の通商政策を巡る動向など、先行きの不透明感は残っています。
労働市場では、構造的な人手不足と賃上げの進展により、人材獲得競争が激しくなっています。企業ではDXやAX(AIトランスフォーメーション)に加え、外部人材の活用や業務の自動化を組み合わせる動きが広がっています。エンジニア市場では、AIやデータを活用した高度なスキルを持つ人材への需要が拡大していると同社は説明しています。
その一方で、定型業務でもAIの活用が進み、求められるスキルの高度化・専門化が進んでいます。個人の側では多様な働き方へのニーズが高まる一方、企業ではオフィス回帰の動きも見られます。フリーランスマッチングを主軸とする同社にとって、AI時代の人材ニーズの変化にどう対応するかが通期の着地を左右すると考えられます。
2. 業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
株式会社クラウドワークス 2026年9月期 第3四半期決算短信(PDF)
第3四半期累計の売上高は163億74百万円(前年同期比-3.5%)、売上総利益は67億82百万円(同-5.5%)となりました。販売費及び一般管理費は65億18百万円と、前年同期の59億16百万円から増加しています。その結果、営業利益は2億64百万円(同-79.0%)にとどまりました。
経常利益は3億17百万円(同-74.3%)、親会社株主に帰属する四半期純利益は50百万円(同-90.4%)です。同社が重視するEBITDA(Non-GAAP)は6億58百万円(同-63.8%)となりました。四半期ごとの累計推移を見ると、第1四半期の営業利益54百万円、中間期の2億18百万円から、第3四半期累計で2億64百万円へと積み上がっています。
累計値から算出すると、第3四半期単独(2026年4月〜6月)の売上高は52億58百万円、営業利益は46百万円です。財政面では、総資産144億47百万円、純資産68億32百万円、自己資本比率44.6%となりました。前期末からは現金及び預金が減少した一方、長期借入金の返済も進んでいます。
3. 直近決算の重要ポイント
今回の決算で最も大きなポイントは、利益水準が前年同期から大きく低下した点です。売上高の減少幅は3.5%にとどまった一方、営業利益は79.0%減となりました。売上総利益の減少に加え、販管費が前年同期比で約6億円増えたことが利益を圧迫したと見られます。
前回記事で取り上げた第1四半期の段階で、同社はDXコンサルタントやエンジニアの採用加速に伴う人件費・採用教育費の増加を減益要因に挙げていました。第3四半期累計でもこの構造は続いており、成長投資の負担が損益に表れていると考えられます。
通期の業績予想は、2026年7月13日に修正を公表しており、第3四半期決算時点での変更はありません。修正後の予想は売上高200億円(前期比-11.7%)、売上総利益84億円(同-12.2%)です。営業利益は0億円〜3億円、EBITDAは5億10百万円〜8億10百万円のレンジで示されています。第3四半期累計の売上高の進捗率は約81.9%で、営業利益はすでにレンジの下限を上回っています。
4. Q3時点の事業進捗
同社の報告セグメントは「マッチング事業」と「ビジネス向けSaaS事業」の2つです。主力のマッチング事業は、売上高155億29百万円(前年同期比-3.3%)、セグメント利益3億26百万円(同-74.3%)となりました。売上の大半をこの事業が占めており、全社の業績動向を大きく左右しています。
マッチング事業では、コンサルティングを通じて付加価値の高いサービスを提供し、1社あたりの契約単価を高める取り組みを進めています。2025年に発足したクラウドワークス コンサルティングを中心に、中堅・中小企業向けに「DXコンサルの民主化」を掲げています。当第3四半期には、AI実装を支援するAI-BPOサービスにも取り組みました。
さらに、AI技術者・専門家が集まる仕事マッチングサービス「AIクラウドワークス」の準備も進めました。AIワーカーの事前登録者数は募集開始から2カ月半で10,000名を突破し、2026年8月20日のサービス開始を予定していると同社は開示しています。
ビジネス向けSaaS事業は、売上高7億34百万円(前年同期比-12.0%)、セグメント損失52百万円(前年同期はセグメント利益37百万円)となりました。工数可視化SaaS「クラウドログ」を軸に、取得した工数データを生かしたDX支援にも取り組んでいますが、収益面では足踏みが続いています。
5. 業界の注目ポイント
ポイント1:AIが変える外部人材マッチングの需要構造
同社の決算短信では、AIやデータを活用する高度なスキルを持つ人材への需要が拡大していると説明しています。一方で、定型業務ではAIの活用が進み、求められるスキルの専門化が進んでいます。外部人材を仲介するプラットフォームにとって、案件の中身そのものが変わりつつある局面と言えます。
こうした変化は、登録者数の多さだけでは優位性を保ちにくくなることを意味すると考えられます。どの領域の人材をどれだけ深く抱えられるかが、マッチング事業の競争力を左右する時代に入っていると見られます。
ポイント2:「人材を紹介する」から「業務を引き受ける」への広がり
クラウドワークスは、AI-BPOサービスやDXコンサル事業を通じ、人材の仲介にとどまらず業務そのものを支援する方向へ事業を広げています。企業の人手不足が続く中で、外部人材の活用と業務の自動化を組み合わせたニーズは今後も高まると考えられます。
ただし、コンサルティングや業務代行は人材の採用・育成に先行投資が必要なモデルです。第3四半期累計で販管費が増え利益が大きく減ったことは、この転換期特有の負担が表れたものと見られます。投資がどの程度の期間で売上や利益に結びつくかが注目されます。
ポイント3:AI人材に特化したプラットフォームの立ち上げ
「AIクラウドワークス」は、AI技術者や専門家に特化した仕事マッチングサービスです。事前登録者数が募集開始2カ月半で10,000名を超えたことは、AI関連の働き手側の関心の高さを示していると考えられます。企業のAI導入が進むほど、実装を担う人材の確保は重要な課題になります。
既存の大規模な登録基盤とAI人材の専門プラットフォームを組み合わせられるかが、同社の差別化の鍵になると見られます。2026年8月のサービス開始後、クライアント側の案件がどの程度集まるかが、今後の事業成長を占う指標になりそうです。
6. ITトレンド編集部の考察
2026年9月期第3四半期累計は、減収減益ながら、AI関連の新サービス準備を着実に進めた期間と整理できます。営業利益は前年同期比79.0%減と大きく落ち込みましたが、背景には採用を中心とした成長投資があると考えられます。需要が急に失われた結果ではない点は、押さえておきたいポイントです。
通期の営業利益予想は0億円〜3億円のレンジで、第3四半期累計の2億64百万円はすでに下限を上回っています。7月の予想修正で利益レンジが引き上げられたことからも、費用の発生時期を見直しながら収益確保を図る姿勢がうかがえます。第4四半期にどの程度の利益を積み上げられるかが焦点です。
中長期的には、マッチング事業の単価向上とAIクラウドワークスの立ち上がりが、再成長の条件になると見られます。一方、ビジネス向けSaaS事業は減収とセグメント損失が続いており、テコ入れの方向性にも注目が必要です。
7. まとめ
株式会社クラウドワークスを一言で表すと、「減益局面の中で、人材マッチングからAI・DX支援へと軸足を広げている企業」です。
2026年9月期第3四半期累計(2025年10月〜2026年6月)の業績は以下のとおりでした。
- 売上高 163億74百万円(前年同期比-3.5%)
- 営業利益 2億64百万円(前年同期比-79.0%)
- 経常利益 3億17百万円(前年同期比-74.3%)
- 親会社株主に帰属する四半期純利益 50百万円(前年同期比-90.4%)
- マッチング事業 売上高155億29百万円、セグメント利益3億26百万円
- ビジネス向けSaaS事業 売上高7億34百万円、セグメント損失52百万円
通期(2026年9月期)の業績予想は以下のとおりです。
- 売上高 200億円(前期比-11.7%)
- 営業利益 0億円〜3億円(レンジ予想)
- EBITDA 5億10百万円〜8億10百万円(レンジ予想)
AIクラウドワークスの立ち上がりと、成長投資の回収ペースが今後の焦点となりそうです。
ITトレンド編集部
IT製品の比較サイト「ITトレンド」の編集部です。ITトレンドはイノベーションが2007年より運営している法人向けIT製品の比較・資料請求サイトで、累計訪問者数2,000万人以上、3,750製品以上を掲載しています。読者がIT製品・サービスを比較検討する際に役立つ情報や、システムを活用した社内の課題解決のヒントになる情報を日々発信しています。

