資料請求リスト
0
決算個社IT・インターネット2026年08月04日

【株式会社野村総合研究所(証券コード:4307)徹底解説】2026年3月期 通期──増収も海外のれん減損で営業利益は56.8%減

【株式会社野村総合研究所(証券コード:4307)徹底解説】2026年3月期 通期──増収も海外のれん減損で営業利益は56.8%減

株式会社野村総合研究所(NRI)は、コンサルティングからITソリューションまでを一貫して提供する総合シンクタンク・システムインテグレーターです。コンサルティング、金融ITソリューション、産業ITソリューション、IT基盤サービスの4つのセグメントを展開し、金融業から産業・公共分野まで幅広い顧客のDXを支えています。

2026年3月期通期の連結業績は、IFRS基準で売上収益8,147億08百万円(前期比+6.5%)となり、増収を確保しました。一方で、豪州・北米事業においてのれん等の減損損失を計上した影響により、営業利益は582億73百万円(同-56.8%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は152億57百万円(同-83.7%)と、増収減益の決算となりました。

詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【株式会社野村総合研究所(4307)徹底解説】金融・産業・公共のDXを支える総合SI大手

2026年3月期を振り返る市場・業界の変化

当連結会計年度の世界経済は、米国の政策動向に加え、金融資本市場の変動や中東情勢の緊迫化により不透明感が続きました。日本経済については、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果を背景に、緩やかな回復基調で推移しています。物価上昇の継続や為替変動、原油価格の高騰など、先行きが不透明な状況も引き続き見られました。

情報システム投資の分野では、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連の投資が活況を呈しました。AI等の新技術活用が進み、業務プロセスの変革からビジネスモデルそのものの変革へと、企業のDXの取り組みは急速に進展しています。こうした環境の中、NRIはコンサルティングからITソリューションまで一貫して提供できる総合力を強みに、事業活動を展開しました。

NRIは長期経営ビジョン「NRI Group Vision 2030」の実現に向け、中期経営計画「中計2025」に基づき、コアビジネス領域の深化・拡大やDX進化、グローバル展開、経営基盤の強化に取り組んでいます。特にグローバル事業については、日本・アジア、豪州に加え、北米市場への展開を通じて世界3極での事業運営体制の整備を進めている点が特徴です。

業績推移

詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
株式会社野村総合研究所 2026年3月期 通期決算短信(PDF)

NRIの四半期業績を振り返ると、2026年3月期第1四半期累計は売上収益1,957億70百万円、第2四半期累計は3,970億65百万円、第3四半期累計は6,023億33百万円と積み上げが進み、通期累計では8,147億08百万円まで拡大しました。前期(2025年3月期)通期の売上収益は7,648億13百万円だったため、通期で見ても着実な増収を確保した形です。

利益面では状況が異なります。前期通期の営業利益1,349億07百万円に対し、今期は582億73百万円と大きく落ち込みました。売上原価は5,145億56百万円(同5.1%増)、売上総利益は3,001億51百万円(同9.0%増)、販売費及び一般管理費は1,456億42百万円(同1.1%増)で、本業の収益性自体は国内システム開発案件の活況や運用サービスの増加により向上しています。

それにもかかわらず営業利益が大きく減少したのは、豪州・北米事業でのれん等の減損損失を計上したためです。営業利益率は7.2%(同10.5ポイント減)まで低下しました。一方、一時的要因を除いた事業利益は1,566億73百万円(同16.3%増)となっており、恒常的な事業の業績は堅調に推移したことがうかがえます。

直近決算の重要ポイント

今回の決算で最も注目すべき点は、豪州のNRI Australia Limited及び北米のCore BTS, Inc.において、のれん等に係る減損損失を計上したことです。この一時的要因により、産業ITソリューションセグメントは74億61百万円の営業損失に転落しました。国内事業の好調ぶりとは対照的に、海外事業の収益性悪化が全社業績の重荷となった構図です。

セグメント別では、金融ITソリューションが売上収益4,051億52百万円(前期比+8.7%)、営業利益742億55百万円(同+20.6%)と大きく伸長し、全社の増収増益をけん引しました。良好な受注環境や運用サービスの増加により、収益性が向上したことが要因です。IT基盤サービスも売上収益2,215億45百万円(同+10.0%)、営業利益385億64百万円(同+27.1%)と好調に推移しています。

親会社の所有者に帰属する当期利益は152億57百万円(同-83.7%)となり、税引前利益も588億51百万円(同-56.1%)まで落ち込みました。ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)は3.5%(同19.0ポイント減)と、収益性を示す指標は軒並み大幅に悪化しています。

通期実績が示す収益モデルの現在地

NRIの収益モデルは、コンサルティング、金融ITソリューション、産業ITソリューション、IT基盤サービスの4セグメントを組み合わせ、コンサルティングからシステム構築・運用までを一貫して提供する「コンソリューション」型の総合力にあります。今期はこの分散型構造の強みが如実に表れ、国内中心の金融ITソリューションとIT基盤サービスが好調を維持する一方、海外事業を含む産業ITソリューションが大きく足を引っ張る結果となりました。

コンサルティングセグメントは売上収益687億24百万円(同+5.1%)、営業利益192億25百万円(同+4.5%)と、国内でのシステムコンサルティング受注増加により堅調に推移しました。産業ITソリューションは売上収益2,800億33百万円(同+1.5%)と増収は確保したものの、海外事業の減収に加え、のれん等の減損損失により営業損失74億61百万円を計上しています。

EPS(希薄化後1株当たり当期利益)は26.62円、自己資本比率は45.2%となりました。配当は年間77.0円(期末42.0円・中間35.0円)で、配当性向は54.5%に達しています。翌期は配当84.0円を予定しており、業績の落ち込みにもかかわらず株主還元姿勢は維持される見通しです。

業界の注目ポイント

国内DX需要の底堅さとAI活用の本格化

国内の情報システム投資は、DX関連を中心に活況が続いています。AI等の新技術活用は、業務プロセスの変革を支援する段階から、顧客のビジネスモデルそのものを変革する段階へと急速に進展していると見られます。金融ITソリューションやIT基盤サービスの好調な業績は、こうした国内需要の強さを裏付ける結果といえるでしょう。

一方で、物価上昇の継続や通商政策の動向、為替変動といった外部環境の不透明感は根強く残っています。今後、企業業績の変調によっては情報システム投資が抑制される可能性もあり、国内需要の持続性は引き続き注視すべきポイントとなりそうです。

海外事業ののれん減損が示すグローバル展開の難しさ

今回、豪州のNRI Australia Limited及び北米のCore BTS, Inc.でのれん等の減損損失が発生した背景には、買収先事業の収益性が当初想定を下回った可能性があると考えられます。NRIは日本・アジアに加え、豪州で培った知見を北米展開にも活用する方針を掲げてきましたが、今回の減損は海外M&A戦略の難しさを改めて浮き彫りにした形です。

NRI以外の国内SI企業でも、海外企業買収によるグローバル展開を進める動きは広がっています。海外事業の収益性をいかに立て直し、グループ間連携を通じた安定成長につなげられるかは、業界全体にとっても参考になる論点になりそうです。

本業の実力を映す「事業利益」指標の広がり

NRIは今回の決算で、営業利益からのれん減損等の一時的要因を除いた「事業利益」を新たに開示し、1,566億73百万円(前期比+16.3%増)と、恒常的な事業の業績は堅調であることを示しました。会計上の減損損失と本業の実力を切り分けて開示する手法は、投資家に事業の実態を正確に伝える工夫の一つと見られます。

今後、大型減損が発生した企業を中心に、同様の調整後利益指標を開示するケースが増える可能性があります。決算を読み解く際には、表面上の営業利益だけでなく、こうした調整後指標にも目を向けることが重要になっていくと考えられます。

ITトレンド編集部の考察

今回の決算から見えるのは、NRIの国内事業が金融ITソリューションやIT基盤サービスを中心に着実な成長を続けている一方、海外事業の収益性という面では大きな課題を抱えているという点です。豪州・北米事業ののれん減損損失により営業利益・純利益が大幅に落ち込みましたが、一時的要因を除いた事業利益は前期比+16.3%と増加しており、本業の実力自体は損なわれていないと見られます。

翌期の業績予想では、売上収益8,500億円(同+4.3%)の増収に加え、営業利益1,750億円、純利益1,190億円という大幅な増益が見込まれています。これは今期に発生した減損損失という一時的要因が翌期には剥落する前提に基づくものと考えられ、実質的な業績のV字回復を意味するものではない点に留意が必要です。

今後は、豪州・北米事業の立て直しと、国内で培ったコンソリューション型ビジネスモデルの海外展開への応用が、NRIの持続的成長を左右する焦点になるでしょう。中期経営計画で掲げるグローバル3極体制の構築が、実際の収益にどこまで結び付くかが注目されます。

まとめ

  • 2026年3月期通期の売上収益は8,147億08百万円(前期比+6.5%)と増収
  • 営業利益は582億73百万円(同-56.8%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は152億57百万円(同-83.7%)と大幅減益
  • 豪州のNRI Australia Limited及び北米のCore BTS, Inc.でのれん等の減損損失を計上したことが減益の主因
  • 産業ITソリューションセグメントは営業損失74億61百万円に転落、金融ITソリューションとIT基盤サービスは増収増益で好調
  • 一時的要因を除いた事業利益は1,566億73百万円(同+16.3%)と、本業の実力は堅調
  • 翌期は売上収益8,500億円(同+4.3%)、営業利益1,750億円、純利益1,190億円を見込み、配当は84.0円を予定

ITトレンド編集部

IT製品の比較サイト「ITトレンド」の編集部です。ITトレンドはイノベーションが2007年より運営している法人向けIT製品の比較・資料請求サイトで、累計訪問者数2,000万人以上、3,750製品以上を掲載しています。読者がIT製品・サービスを比較検討する際に役立つ情報や、システムを活用した社内の課題解決のヒントになる情報を日々発信しています。

統合運用管理ツールの製品をまとめて資料請求