TPiCS-X導入前の課題
工場移転を機に購買業務を開始
ベテランの技術が活きるモノづくり
㈱技巧舎は、測量機器やアイケア機器の大手メーカー、トプコングループ(本社=東京都板橋区)の協力会社として、土木、建築で使用する電子レベル測量機(高さを測定する水準機)や付属品、精密機器の組立製造・修理を手がける。協力業務以外にも、独自に工場向け電源装置の組立製造なども行っている。特筆に値するのは、そのビジネスモデル。
モノづくりをするのは技術に長けた個人事業主(社内外注)とパートタイマーで、少人数の間接部門のスタッフがそれらの仕事を統率するという珍しい業態である。
同社は1980年、旧ソキア(現ソキア・トプコン)が定年者再雇用の場として、㈱測機舎エンタープライズを設立したことに始まる。その後、2010年にソキアがトプコンに企業買収され、いったんは会社を清算したが、新体制となった取引先から、技術力とそれまでの取扱量が再評価され、2011年に現社長の木村和博氏が新たな受け皿として㈱技巧舎を設立した。
さらなる転機が訪れたのは2013年。それまでは取引先の松田工場(神奈川県足柄上郡)内で操業していたが、その工場が閉鎖されることになり、同社は取引先から離れて、単独で現在地に移転することになった。しかもこの工場移転は、単なる場所の移動だけにはとどまらなかった。
取引先から、移転と併せて「技巧舎さん自ら、購買業務を行いませんか」という内示を受けたのだ。それまでは製品仕様をはじめ、組立に必要なすべての部材は取引先から支給され、同社はモノを品質よく組立てることに注視して、納期に間に合えさえすればよかったのだが、購買から始めるとなると、業務内容は様変わりする。それまでは消耗品を購入することはあっても、部材の購入などまったく行ったことがなかったからだ。
それでも、最初にこの話を聞いたとき「数個の部材の購入なら、うちでもできそうだ」と思ったという。ところが取引先が対象製品として示したのは、1機種当たり100~200個もの部品で構成される複雑構造の電子レベル機の組立製造だった。
「そんな複雑なものの部材購買なんて、うちでは無理です。工程管理だけはきっちり行うので、従来通り部材は支給してくれませんか」と食い下がってみたものの、「もう技巧舎さんも、独り立ちしないといけない」と逆に説得されてしまった。振り返れば、「購買業務という重荷は背負ってもらうが、高付加価値製品の電子レベル機の仕事を発注し、独り立ちを支援してあげよう」という取引先の親心だったのだ。
TPiCS-X選定ポイント
新バージョンのリリースされた直後に導入
村岡陽子氏
慣れない購買業務も負担になったが、仕入れ先については取引先がすべて教えてくれるので何とかなった。問題はそれまで取引先の社内で行われていた購買管理やそれ以降の生産管理をどうするかであった。同社はそれまで購買管理はもちろん、生産計画や生産指示、在庫管理、棚卸しなどの生産管理業務は一切やらずに済んでいたのだ。行っていたのは、取引先から出る注文書をWordとExcelを使って記録し、個人事業主宛に手書きの注文書を渡すことだけだった。工程管理は、20数人の個人事業主の中から「これはAさんの得意分野だし、今は手が空いてそうなので、10日もあればできそうだ」と村岡氏らが頭の中で考えれば用は足りたのである。
ところが、こうしたアナログ手法では部品点数が多く、仕入れ先が多岐に渡る電子レベル機の購買管理はとうてい不可能だ。部品ごとに調達期間、発注ロットが異なるのをExcelで管理するには限界がある。藁をも掴む思いで取引先の情報システム担当に相談すると、SIベンダーを紹介され「この人なら、きっとよいアドバイザーになってくれるはずだ」と。取引先の言葉通り、「1を話せば10を理解するような方で、お会いした瞬間から『この人ならば頼りになる』と思いました」と間接部門を率いる村岡陽子課長は語る。
ちょうどTPiCSの新バージョンである4.0がリリースされた直後のことであり、戸部氏が太鼓判を押すこのシステムでIT化を推進することに決めた。
TPiCS-X導入後の結果
適切な購買管理や棚卸しを実現
セル生産
努力の結果、導入決定から3か月後の2013年6月には本番稼働にこぎつけた。最初に管理が可能になったのは、10機種の電子レベル機。部品点数は300点ほどであった。また、その翌月にはすべての電子レベル機を管理できるようになった。2人の担当者にとって、購買業務やTPiCSの運用は初体験であったにもかかわらず、短期間で当初の目標をクリアできたのは、SIベンダーや取引先の支援が得られたことに加えて、特定機種の購買管理だけに集中できたことが大きかったという。操作するフォームも購買にかかわる資材実績と生産実績の登録をシンプルに行うことをポイントにして、愚直にそれだけを行ったことが奏功したのである。
ただし、苦悩はその後も続いた。購買管理が軌道に乗り始めると、期末(11月)の棚卸しに向けて在庫管理にも取り組んだ。ところが初回の棚卸しは惨憺たる結果に終わった。TPiCSの在庫と実在庫が大きく乖離していたのだ。思い当たる節はいろいろあった。
例えば、TPiCSの在庫が30個なのに部材置き場には10個しかない。それを現場の人に尋ねても、誰もが「知らない」と言うだけで探そうともしない。結局、「実在庫の10に合わせておけばよいのでは」という声に折れてそうすると、何日か経って、誰かの机の下から20個出てくるという具合である。要するに、製造指示とは関係ないタイミングで、現場の人がすきに部材を持ち出していたのである。
また、指示書を発行しモノが出来上がっても指示書が戻って来ないことなどが日常的に起きていた。
村岡氏はこの初回の棚卸し結果に愕然とするのと同時に、従業員の意識改革の必要性を痛感した。製造指示書が戻って来ないとすぐに現場に行き、「きちんとルールにそって仕事をしてください」と雷を落とした。また、言葉だけでなく、部材の種類や数が一目でわかるよう、細かく整理された部材棚を設けたりもした。
すると、生産管理のルールが徐々に社内に浸透し始めた。それまではTPiCSの在庫と実在庫が合わなくても、「知らない」と言うだけだった現場の人たちが、自らモノを探したり、「この棚に、こう置けば間違えは起こらない」など、改善案を出すようにもなった。その結果、2回目の棚卸しは1回目とは比べ物にならないほど精度が高まり、さらに時間も半減した。
TPiCS4.0の導入から7年。製品アイテム1000点、部品点数4500点と管理する部材は当初の10倍以上に増えたが、オペレーションにも習熟し、5人のスタッフによる管理が軌道に乗っている。管理項目は購買管理のほか、生産計画立案、製造指示、工程管理、在庫管理などで、2020年4月には、管理用パソコンの買い替えと合わせて、TPiCS4.1へとバージョンアップした。
当面の課題はTPiCS上で売掛・買掛管理をきっちり行うこと。現状、売掛については請求書を出せるまでになっているが、買掛はいったんデータをExcelに落とし、スタッフが手作業で仕入れ先各社に送るのが残っている。ただし、「TPiCS上でやれないことではないとわかり、近く、その仕組みを構築したいと思っています」(村岡氏)。さらに、将来的には原価管理も行う計画もある。「TPiCSと出合わなかったら、今頃どうなっていたかわかりません。それくらい何をするにも重宝しています」と村岡氏は語っている。
引用元URL: https://www.tpics.co.jp/ユーザー事例/記事ダウンロード/16株式会社-技巧舎/
TPiCS-X
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