アサゴエ工業の加工部門(精機第1、第2工場)の生産管理システムがフル稼働している。ベテラン社員による勘コツの生産管理を改め、TPiCSを活用してから6年。工程ごとの仕掛り在庫や作業進捗が「見える化」され、鋳造部門や協力会社への発注が適切に行われるようになった。当初、不安のあった実績の入力精度も向上。「いまや当社のDNAにすっかり溶け込んだ感じがします」と取締役本社企画部長の藤原芳夫氏は話す。
プロジェクトチームが第1目標としたのは、精機部から鋳造部への発注を明確にすることだった。そこで、ハンディターミナル導入により、開始、終了、不良等をバーコード入力する仕組みをつくった。また、精機部の製品加工工程は3~4工程に分けられているが、これまで素材と加工完成品の2つしかマスタ登録されておらず、各工程の仕掛り在庫はベテラン担当者の頭の中にしかなかった。
そこでマスタを再作成し、A1、A2、A3と枝番を設け、品番で何工程の在庫かを把握できるようにした。枝番の管理により在庫を見える化し、加工指示を出しやすくしたのである。しかし大橋氏によると、慣れないうちは対応漏れや勘違いが多く、準備期間中は期待する効果が得られない状況だったという。
2012年7月にTPiCSによる生産管理システムを本稼働。しかし、翌年1月くらいまで現場のハンドリングとシステム処理がうまく機能せず、運用開始から半年かけての修正を行った。こうした苦労の甲斐あり、時の経過とともに実績精度は大きく向上。また、明確な発注を行うには、正確なリードタイムの設定などの管理が重要であること、そして無駄な在庫をつくらず、仕掛り在庫や進捗状況が正確に把握できれば、顧客に対しての納期回答も迅速に行えることなども社員間で共有できるようになった。
TPiCSが軌道に乗ると、鋳造部でも、精機部から毎月何tくらいの注文が入り、それに対して納期遅れがどのくらい発生しているかが把握でき、仕事に取り組む姿勢にも変化が現れたという。それらと併せて、調達加工先(加工外注)に支給する材料の相手先での在庫状況なども明確になった。「以前は調達加工先から催促され、急いで手配することもありましたが、そういうこともなくなりました」(大橋氏)。
次なる目標はIoTを活用して設備の稼働状況を見える化すること。現在の加工工程マスタには加工プログラムは含まれていないが、マスタ追加等、柔軟性のあるTPiCSの機能を生かしつつ、より一層の見える化と現場改善に取り組む方針である。
精機第1工場生産管理担当主任 大橋直治氏